世界を渡る私のストーリー
羽根の生えた騎士5
「しかし、私は天使とのハーフだ。そんな者達と同列されては困るな」
悔しさから、一種の対抗心が生まれた。
 そうだ、私は天使と人間のハーフ。
 本来の人間以上の能力である天人の力を振るうことが出来る。
 この地上においてこの女が今の所最強ではあるが、他の世界の自称などとはレベルが違う。
 しかし、星空に視線と顔を向けたまま女はクスリと微笑む。
「それだったら、魔王とか魔神の方が凄いじゃない。天空龍とか魔術王とかそんな大層な存在に私てば難なく勝った事があるわよ」
「…ま、魔王…だと!?」
「その単語で驚くと言うことは…この世界にも魔王はいるのかしら?」
「む、昔天界と戦った魔族の王だ!多くの天使を虐殺したという伝説の化け物……」
「こっちでも凄い存在なのね魔王って…」
 夜空を眺めながら、どこか懐かしそうに目を細める女。
 対して私は改めてこの女の危険度がわかった。
ハッタリではない。
 魔王ですら倒す。その発言に何の嘘偽りもない。
 私を倒したのもただ小指を折る程度のことか、それ以下というくらいのものだ。
その上位存在的な女に翼を貸してくれと言われた。
逆らえば殺されることはないだろうが……。
「…お前はただの人間のはずだ。それなのに、魔王を陥すほどの力をどこで手に入れたんだ?」
「さぁ…もう忘れちゃったかな…数億年も前の出来事だったし、これを教えてくれたあの時の人たちも忘れちゃったし…」
「…次の世界にそいつらを連れて行かなかったのか?」
「私の旅だから、巻き込みたくないと思ってね。それに世界を渡ればその人の中の時も止まっちゃうし」
「不老になるというのか…」
「うん、1度気軽に連れ出した子供が歳をとらなくなって、壊れて…自分で命を絶った。だから私は決めたの…誰も巻き込みたくないって…」
そう言って寂しそうになる横顔に何故かさっきまで感じてた恐怖は無かった。
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