世界を渡る私のストーリー

鬼怒川 ますず

羽根の生えた騎士2

しかし、それはすぐに見つかった。

「あれ、ここから先にある国って亡くなったの?」

真下に広がる森の中。
森の愚者、ゴブリンに話しかける不思議な格好の少女。
その体からは莫大な魔力が溢れていた。

もう、濃厚な程に凝縮された莫大な魔力が。


私はその姿に驚いて翼を動かすのを忘れた。
初めてなんてものではない、それ以上にやばいものだった。

天使と人間のハーフ。
それ以上の存在…天使と同等のナニカだった。
私は落ちそうになるのをこらえ、そのナニカの様子を観察することにした。

「へー、ここらで1番強い騎士さんが滅ぼしたんだ」

「※※※※※※※※」

「うん、分かった。出来ればここでは戦わないようにするよ」

「※※!!」

「ありがとうございます、親切なゴブリンさん」

女がお礼をすると、多くの人間に卑下され愚者とされてきた底辺のゴブリンが照れながらペコペコした。
あのような姿、私は初めてだった。

醜悪で人に危害しか与えない種族にはずなのに、なぜかその人間に対しては何もしない。
おかしい。
私がそう思うのと同じくしてふと女が空を見上げてこちらをみた。

その顔は、何かを悟っているかのように綺麗でスッキリとしたものだった。
私とは違う。
正反対の存在。

その存在がこっちをみていた。
気付かれていた。

上位存在のナニカに見つかったのならやるべきことは一つ。

颯爽と森の中に降り立ち、ゴブリンと女に向けて剣を突き付ける。


「私はミレーナ!貴様のように身に余る力を内包した者!私は貴様と殺し合いを申し込む!私が貴様に勝てば私こそが最強の存在になるであろう!!さぁ武器を取れ!」


私の声にゴブリンは驚き、その姿に恐怖して逃げ出す。

これが普通だ。
誰だって逃げる

しかし、女は逃げずに私に近寄って来た。

「貴女がここいらで暴れている騎士さん?ダメだよそんなことしたら」

まるで子供をあやすように、女より高く身長差もある私に向かって人差し指を突きつけた。

舐められている。

瞬時に理解した私は、全力で剣を振るう。
その一撃は、おそらくこの森を消し飛ばすほどの威力だった。
でも女が。

「だからいけないって、ここのゴブリンさんが住む場所がなくなっちゃうでしょ」

その剣を振るう前に、素手で剣を掴んで止めた。
私はここまでの存在なのか、と驚きはしたものの冷静だった。
剣を放して距離をとり、今度は超範囲魔術を放とうとする。

それは天使の怒りの象徴の魔術。

使えば辺り一帯が消え去るはずだった。

しかし、私の魔術が発動する前に女が間近に迫る。
腹部に激痛が走ったのはこの時。
生きてきた中で初めての激痛だった。

「いい加減にしなさい!」

その言葉を耳にし、私は激痛に飲まれて気を失った。

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