俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について
第14話:招待
マリー「お父様…どうして…」
冷酷な顔をした黒服姿の男の正体は麻里さんの父レノワード卿だった。それを知った市民たちは動揺しつつも跪いたり距離をとるなど市民との立場の違いが見てわかった。
裁判長「レノワード卿…なぜ貴方様がここに?」
レノワード卿「吾輩の娘がこの世界に戻ったとの通告があったのでな馬車を使い今戻った」
レノワード卿はとても冷たい目つきで麻里さんを見つめ企むような笑みを見せていた。それに対し麻里さんは肩を小刻みに震わせ目が絶望の海に飲まれているような光がない瞳になっていた。
レノワード卿「久しいなマリー。数年ぶりか…なんともまぁ変わりおってこれも下等民族である人間の影響か。貴様は我が貴族家の誇りを忘れたわけではあるまいな?」
言葉からして圧力がかかった目は麻里さんをすぐにひれ伏した。彼はそう簡単に攻略できるような男ではないと麻里さんの姿を見てすぐに悟った。
レノワード卿「マリーのことはともかく、そこにいる薄汚いのは…人間か?名はなんだ?申してみよ」
氷のように低い声をしたレノワード卿の言葉に逆らえずまるで操られているかのように自分の名を名乗ろうとする。
修一「俺は神谷修一です」繭「私は北村繭です」
そう告げるとレノワード卿はフンっと鼻を鳴らし麻里さんのほうに振り向いた。
レノワード卿「マリー帰るぞ。この人間どもも屋敷へ連れてこい。吾輩が直々に善悪を決めてやる」
レノワード卿は広場の外に置いていた大きめの場所に錠を付けた俺と繭を乗せ向かい側には麻里さんとレノワード卿が乗った。全員乗ると馬車は広場の外へと走り出し広場にいた人間も小さく見え始めた。
レノワード卿「…」
移動中の馬車の中はとても静まっていて1分が何時間にも思えてしまう。それでも馬車は少しずつ屋敷へと向かって行った。
マリー「お父さ…」
レノワード卿「少し黙っていなさいマリー」
麻里さんがこの場の雰囲気を少しでも変えようと父親であるレノワード卿に話しかけようとするがレノワード卿がそれを阻止する。
馬車内の空気は悪く居間にでも外に飛び出したくなるほどだが俺と繭にはまだ錠がかけられているから無理だ。
1時間ほど馬車を揺らすと先程の噴水の広場とはまた違った都市に到着した。都市といっても店や人が賑わうような場所ではなく大きな大木の周りに協会や巨大な家々が立ち並ぶ所だった。
レノワード卿「さぁ着いた。降りろ」
馬車が止まり降ろされた場所には広い庭のついた大きな豪邸が建っていた。ここが麻里さんの家なのか豪邸からメイドや執事が数人現れ全員口をあわせてお帰りなさいませと言った。
執事「レノワード卿此度のお勤めご苦労様でした。お嬢様もお戻りでしたらどうぞ早くお入りください」
レノワード卿と麻里さんは数人のメイドと執事に連れられ豪邸の中へ入って行った。
繭「えっと…私たちはどうしたらいいのかな?」
この環境下に残されたのは俺と繭と白髪のキリッとした眼を持った一人のメイドさんだった。どうしたらいいか分からない俺たちはメイドさんをチラッと見た。
ラプァン「申し遅れました。私ここのメイド長のラプァンと申します。ここでのお二人の行動は私が管理させて頂きますのでご承知ください」
淡々と自己紹介をされ俺たちは気の抜けた声でよろしくお願いしますとだけ返事をした。だが彼女はそんなことには気にもとめずこの後のことを教えてくれた。
ラプァン「お二人はまずご入浴なさってくださいませ。そのようなお姿でお嬢様のご友人にはふさわしくありません」
修一「わ、分かりました。それじゃあ案内をお願いします」
ラプァンさんに連れられ俺たちは豪邸の中へ案内された。外から見たら当然大きいが中に入ると目の前に家一軒が余裕で入るような広いホールが現れた。
ホールの天井には眩い光を放つ巨大なシャンデリアが吊るされ明るさを一層増していた。
繭「広ーい。本当に高貴なお嬢様なんだね」
確かにこのシャンデリアの見た目や豪邸の大きさ使用人の数から察するに麻里さんが高貴な家柄なのは明白で疑う余地がない。
ラプァン「おほん、お二人とも右手の方にバスルームがございます。バスルームの左側扉には脱衣所がございますのでお急ぎください」
シャンデリアに見とれていると後ろからラプァンさんに早く行くように言われた。ラプァンさんに言われた通りに脱衣所へ行き鍵を閉め昨日から着ていた服を脱いだ。
アスカ「修一、わしもそろそろ元の姿に戻ってもいいかのう?」
修一「あ、うん。もう元の姿に戻ってもいいよ」
捕まってから今まで本の姿にさせたままいたアスカは少しだけ疲労感が見えるだるそうな顔をしていた。その姿に少し謝罪しつつ今までの経緯を説明した。
アスカ「そうか…。今は麻里殿の実家にいるのか。で、これからどうするつもりじゃ?」
修一「わからない。レノワード卿が何を考えてるのかわからないからどうしようもできない。だから今は流れに身を任せてる状態なんだけど」
こんな情けない意見にもアスカは腕を組んで頷いてくれた。アスカには申し訳ないがもう少し本の姿のままでいてもらうことにした。
アスカ「ではわしは修一たちの身の危険の時か修一の合図がくるまでは本の姿でおろう」
修一「ごめんね…できるだけ相手を刺激しないようにしたいから」
今までの緊張感あふれる環境にいたせいか俺はドッと疲れたかのようにしゃがみこむ。アスカの為にここまで頑張ったのに全く違うことで頭を悩ましている自分に嫌気をさした。
アスカ「よいよい。お主はよう頑張った。その頑張りは必ず報われるはずじゃ。もう暫くの辛抱じゃ」
俺が弱気になっているせいかアスカは俺の頭を撫でてくれた。アスカの小さい手が俺の体全体を包み込むような優しい心地がする。
修一「ありがとうアスカ…。もう少し頑張るから待ってて」
俺が立ち直るとアスカはうむと微笑んで本の姿に戻った。そしてアスカが見つからないよう着替えの間に入れ俺は風呂に入ることにした。
修一(さて、ここからどうするかな。相手は麻里さんの父親といえど油断ができない相手。助けてもらう為にはこちらに敵意がないことを証明しないといけない)
考えれば考えるほど自分の置かれた状況を理解して助かる方法が分からなくなる。早く繭と合流する為に体を急いで洗い風呂から出た。
ラパァン「あら、お早いご入浴ですね?繭様はまだお上がりになっておりませんが?」
着替え終わり脱衣所の扉を開けると目の前にはラパァンさんが立っていた。
修一「そうですか。えっとそしたらここで待たせてもらいます」
ラパァンさんはそうですかとだけ言いここで待つことを了承してくれた。
「・・・・・・・・・・・・」
お互いに無言の状態が続いてしまうと時はすごく長く感じてしまう。繭はいつまで風呂に入っているのか知らないが早く上がってきてもらいたい。
落ち着いてよく見るとラパァンさんはかなり綺麗だ。銀色のボブショートが室内の明かりで星のようにきめ細かに輝いて見える。
ラパァン「修一様、レノワード卿にはお気をつけくださいね」
修一「えっ?気をつける?」
俺はラパァンさんの行っていることの意味がわからず思わずへっ?と変な声を出してしまった。
ラパァン「レノワード卿はあなた方を処刑しようと考えています。何故かはわかりませんがあなた方の今の状況は最悪だとだけ伝えておきます」
言われたのは忠告だった。周りの使用人にバレないようわざと目線をそらし腹話術のようにできるだけ口を動かさないで話している。
修一「そんな大事なことを異世界人である俺に話していいんですか?」
随分野暮な質問をしてしまった。助言をしてもらっておいてこれはあまりにも無粋だろう。でも何故今日初めて会った俺たちを助けてくれ要しているのかどうしても気になった。
ラパァン「あなただけは特別ですから…」
一瞬だけ振り向きこの言葉を放ったラパァンの顔は桃のように赤く染まりそれを聞いた俺も少しだけ時間が止まったような感覚に陥った。
修一「え、その言葉って…」
繭「おまたせー修一、ラパァンさんも一緒にいるんだね」
ラパァンさんの言葉の意味を聞こうと話しかけた時に最悪なタイミングで繭が風呂から上がってきた。
繭「えーと、タイミング悪かった?」
ラパァン「いえ、そんなことはございません。では、参りましょう」
先ほどまでの赤面していた顔も繭が来た瞬間に平常時に戻り業務をこなそうとしていた。
修一「行くって次はどこに行くんですか?」
ラパァン「ご主人様に会うためにはそれなりの服装をして頂きます。この家には突然の来客用に正装を何着か用意してあるのできっとお二人にピッタリのサイズがありますよ」
次に連れていかれたのは更衣室だった。着替えが終わったらとうとうレノワード卿のところに行くらしいが実に面倒くさい。確かに貴族家の人に会うのだから清掃に着替えなくてはいけないのは分かるが国家転覆罪となっている人を客人みたいに扱う必要があるのか疑問に思ってしまう。
ラパァン「繭様はこの部屋で修一様はそのお隣の部屋でお願いします。念のために各部屋に一人ずつ監視がついていますので何卒ご了承ください」
部屋には一着ずつの服とズボンが置いてあった。しかし、その部屋には監視はおらず部屋の中には俺とラパァンさんだけだった。
ラパァン「修一様の監視は私が行いますのでお早くお着換えなさってください」
修一「えっ…さすがに恥ずかしいんですけど」
別次元の人間だとしても異性に着替えるところを見られるのは恥ずかしい。俺の身体を凝視するラパァンさんにはお気になさらずとだけ言われ俺はできるだけ身体をみられないように素早く着替えた。
修一「あ、そうだ。さっきラパァンさんが言っていた言葉の意味って何ですか?」
問いかけると同時にラパァンさんは瞬時に目を合わせなくなりお先に出ますとだけ言い部屋を出た。やっぱり異世界人だから嫌われているのかと深く考えてしまう。
繭「あ、修一遅いよ!女の子よりも着替えるのが遅かっただなんてあんたラパァンさんと何かしてたのぉ~?」
部屋を出ると繭は完全に着替え終わっており俺待ちのようだった。
繭「見てみてこの服可愛いでしょ?私の監視だったメイドさんが選んでくれたのよ。似合う?」
全身黒色の正装だが1つ1つの装飾がとても綺麗で思わず息を飲んだ。繭はその反応に満足したのか誇らしげな顔をして俺の手を引っ張り歩き出した。
繭「着替えたことだし行くわよ。麻里さんのお父さんの元へガツンと言うんでしょ?」
そうだ。ここまで長かったが今度こそ麻里さんの父親であるレノワード卿との会談だ。麻里さんの人生を台無しにしていることアスカのことそして俺たちを解放することをしなくてはならない。
そう決意し俺はこの豪邸の中で一番大きいと思われる扉を力一杯押して開けた。そうすると目の前には玉座のような椅子に座ったレノワード卿とその近くにひっそりと座る麻里さんがいた。
レノワード卿「ご機嫌麗しゅう異世界人諸君こちらの準備は揃った。では会談を始めようではないか」
ご愛読ありがとうございます。
少し前に梅雨入りし段々夏に近づいてきましたね。私個人としては6月末に期末考査が控えているので少しずつ勉強に力をいけないようになりました。
さて、このシリーズもあと片手で数えられるほどのエピソードで終了します。最終回まで手を抜くことなく頑張りますので応援よろしくお願いします。
冷酷な顔をした黒服姿の男の正体は麻里さんの父レノワード卿だった。それを知った市民たちは動揺しつつも跪いたり距離をとるなど市民との立場の違いが見てわかった。
裁判長「レノワード卿…なぜ貴方様がここに?」
レノワード卿「吾輩の娘がこの世界に戻ったとの通告があったのでな馬車を使い今戻った」
レノワード卿はとても冷たい目つきで麻里さんを見つめ企むような笑みを見せていた。それに対し麻里さんは肩を小刻みに震わせ目が絶望の海に飲まれているような光がない瞳になっていた。
レノワード卿「久しいなマリー。数年ぶりか…なんともまぁ変わりおってこれも下等民族である人間の影響か。貴様は我が貴族家の誇りを忘れたわけではあるまいな?」
言葉からして圧力がかかった目は麻里さんをすぐにひれ伏した。彼はそう簡単に攻略できるような男ではないと麻里さんの姿を見てすぐに悟った。
レノワード卿「マリーのことはともかく、そこにいる薄汚いのは…人間か?名はなんだ?申してみよ」
氷のように低い声をしたレノワード卿の言葉に逆らえずまるで操られているかのように自分の名を名乗ろうとする。
修一「俺は神谷修一です」繭「私は北村繭です」
そう告げるとレノワード卿はフンっと鼻を鳴らし麻里さんのほうに振り向いた。
レノワード卿「マリー帰るぞ。この人間どもも屋敷へ連れてこい。吾輩が直々に善悪を決めてやる」
レノワード卿は広場の外に置いていた大きめの場所に錠を付けた俺と繭を乗せ向かい側には麻里さんとレノワード卿が乗った。全員乗ると馬車は広場の外へと走り出し広場にいた人間も小さく見え始めた。
レノワード卿「…」
移動中の馬車の中はとても静まっていて1分が何時間にも思えてしまう。それでも馬車は少しずつ屋敷へと向かって行った。
マリー「お父さ…」
レノワード卿「少し黙っていなさいマリー」
麻里さんがこの場の雰囲気を少しでも変えようと父親であるレノワード卿に話しかけようとするがレノワード卿がそれを阻止する。
馬車内の空気は悪く居間にでも外に飛び出したくなるほどだが俺と繭にはまだ錠がかけられているから無理だ。
1時間ほど馬車を揺らすと先程の噴水の広場とはまた違った都市に到着した。都市といっても店や人が賑わうような場所ではなく大きな大木の周りに協会や巨大な家々が立ち並ぶ所だった。
レノワード卿「さぁ着いた。降りろ」
馬車が止まり降ろされた場所には広い庭のついた大きな豪邸が建っていた。ここが麻里さんの家なのか豪邸からメイドや執事が数人現れ全員口をあわせてお帰りなさいませと言った。
執事「レノワード卿此度のお勤めご苦労様でした。お嬢様もお戻りでしたらどうぞ早くお入りください」
レノワード卿と麻里さんは数人のメイドと執事に連れられ豪邸の中へ入って行った。
繭「えっと…私たちはどうしたらいいのかな?」
この環境下に残されたのは俺と繭と白髪のキリッとした眼を持った一人のメイドさんだった。どうしたらいいか分からない俺たちはメイドさんをチラッと見た。
ラプァン「申し遅れました。私ここのメイド長のラプァンと申します。ここでのお二人の行動は私が管理させて頂きますのでご承知ください」
淡々と自己紹介をされ俺たちは気の抜けた声でよろしくお願いしますとだけ返事をした。だが彼女はそんなことには気にもとめずこの後のことを教えてくれた。
ラプァン「お二人はまずご入浴なさってくださいませ。そのようなお姿でお嬢様のご友人にはふさわしくありません」
修一「わ、分かりました。それじゃあ案内をお願いします」
ラプァンさんに連れられ俺たちは豪邸の中へ案内された。外から見たら当然大きいが中に入ると目の前に家一軒が余裕で入るような広いホールが現れた。
ホールの天井には眩い光を放つ巨大なシャンデリアが吊るされ明るさを一層増していた。
繭「広ーい。本当に高貴なお嬢様なんだね」
確かにこのシャンデリアの見た目や豪邸の大きさ使用人の数から察するに麻里さんが高貴な家柄なのは明白で疑う余地がない。
ラプァン「おほん、お二人とも右手の方にバスルームがございます。バスルームの左側扉には脱衣所がございますのでお急ぎください」
シャンデリアに見とれていると後ろからラプァンさんに早く行くように言われた。ラプァンさんに言われた通りに脱衣所へ行き鍵を閉め昨日から着ていた服を脱いだ。
アスカ「修一、わしもそろそろ元の姿に戻ってもいいかのう?」
修一「あ、うん。もう元の姿に戻ってもいいよ」
捕まってから今まで本の姿にさせたままいたアスカは少しだけ疲労感が見えるだるそうな顔をしていた。その姿に少し謝罪しつつ今までの経緯を説明した。
アスカ「そうか…。今は麻里殿の実家にいるのか。で、これからどうするつもりじゃ?」
修一「わからない。レノワード卿が何を考えてるのかわからないからどうしようもできない。だから今は流れに身を任せてる状態なんだけど」
こんな情けない意見にもアスカは腕を組んで頷いてくれた。アスカには申し訳ないがもう少し本の姿のままでいてもらうことにした。
アスカ「ではわしは修一たちの身の危険の時か修一の合図がくるまでは本の姿でおろう」
修一「ごめんね…できるだけ相手を刺激しないようにしたいから」
今までの緊張感あふれる環境にいたせいか俺はドッと疲れたかのようにしゃがみこむ。アスカの為にここまで頑張ったのに全く違うことで頭を悩ましている自分に嫌気をさした。
アスカ「よいよい。お主はよう頑張った。その頑張りは必ず報われるはずじゃ。もう暫くの辛抱じゃ」
俺が弱気になっているせいかアスカは俺の頭を撫でてくれた。アスカの小さい手が俺の体全体を包み込むような優しい心地がする。
修一「ありがとうアスカ…。もう少し頑張るから待ってて」
俺が立ち直るとアスカはうむと微笑んで本の姿に戻った。そしてアスカが見つからないよう着替えの間に入れ俺は風呂に入ることにした。
修一(さて、ここからどうするかな。相手は麻里さんの父親といえど油断ができない相手。助けてもらう為にはこちらに敵意がないことを証明しないといけない)
考えれば考えるほど自分の置かれた状況を理解して助かる方法が分からなくなる。早く繭と合流する為に体を急いで洗い風呂から出た。
ラパァン「あら、お早いご入浴ですね?繭様はまだお上がりになっておりませんが?」
着替え終わり脱衣所の扉を開けると目の前にはラパァンさんが立っていた。
修一「そうですか。えっとそしたらここで待たせてもらいます」
ラパァンさんはそうですかとだけ言いここで待つことを了承してくれた。
「・・・・・・・・・・・・」
お互いに無言の状態が続いてしまうと時はすごく長く感じてしまう。繭はいつまで風呂に入っているのか知らないが早く上がってきてもらいたい。
落ち着いてよく見るとラパァンさんはかなり綺麗だ。銀色のボブショートが室内の明かりで星のようにきめ細かに輝いて見える。
ラパァン「修一様、レノワード卿にはお気をつけくださいね」
修一「えっ?気をつける?」
俺はラパァンさんの行っていることの意味がわからず思わずへっ?と変な声を出してしまった。
ラパァン「レノワード卿はあなた方を処刑しようと考えています。何故かはわかりませんがあなた方の今の状況は最悪だとだけ伝えておきます」
言われたのは忠告だった。周りの使用人にバレないようわざと目線をそらし腹話術のようにできるだけ口を動かさないで話している。
修一「そんな大事なことを異世界人である俺に話していいんですか?」
随分野暮な質問をしてしまった。助言をしてもらっておいてこれはあまりにも無粋だろう。でも何故今日初めて会った俺たちを助けてくれ要しているのかどうしても気になった。
ラパァン「あなただけは特別ですから…」
一瞬だけ振り向きこの言葉を放ったラパァンの顔は桃のように赤く染まりそれを聞いた俺も少しだけ時間が止まったような感覚に陥った。
修一「え、その言葉って…」
繭「おまたせー修一、ラパァンさんも一緒にいるんだね」
ラパァンさんの言葉の意味を聞こうと話しかけた時に最悪なタイミングで繭が風呂から上がってきた。
繭「えーと、タイミング悪かった?」
ラパァン「いえ、そんなことはございません。では、参りましょう」
先ほどまでの赤面していた顔も繭が来た瞬間に平常時に戻り業務をこなそうとしていた。
修一「行くって次はどこに行くんですか?」
ラパァン「ご主人様に会うためにはそれなりの服装をして頂きます。この家には突然の来客用に正装を何着か用意してあるのできっとお二人にピッタリのサイズがありますよ」
次に連れていかれたのは更衣室だった。着替えが終わったらとうとうレノワード卿のところに行くらしいが実に面倒くさい。確かに貴族家の人に会うのだから清掃に着替えなくてはいけないのは分かるが国家転覆罪となっている人を客人みたいに扱う必要があるのか疑問に思ってしまう。
ラパァン「繭様はこの部屋で修一様はそのお隣の部屋でお願いします。念のために各部屋に一人ずつ監視がついていますので何卒ご了承ください」
部屋には一着ずつの服とズボンが置いてあった。しかし、その部屋には監視はおらず部屋の中には俺とラパァンさんだけだった。
ラパァン「修一様の監視は私が行いますのでお早くお着換えなさってください」
修一「えっ…さすがに恥ずかしいんですけど」
別次元の人間だとしても異性に着替えるところを見られるのは恥ずかしい。俺の身体を凝視するラパァンさんにはお気になさらずとだけ言われ俺はできるだけ身体をみられないように素早く着替えた。
修一「あ、そうだ。さっきラパァンさんが言っていた言葉の意味って何ですか?」
問いかけると同時にラパァンさんは瞬時に目を合わせなくなりお先に出ますとだけ言い部屋を出た。やっぱり異世界人だから嫌われているのかと深く考えてしまう。
繭「あ、修一遅いよ!女の子よりも着替えるのが遅かっただなんてあんたラパァンさんと何かしてたのぉ~?」
部屋を出ると繭は完全に着替え終わっており俺待ちのようだった。
繭「見てみてこの服可愛いでしょ?私の監視だったメイドさんが選んでくれたのよ。似合う?」
全身黒色の正装だが1つ1つの装飾がとても綺麗で思わず息を飲んだ。繭はその反応に満足したのか誇らしげな顔をして俺の手を引っ張り歩き出した。
繭「着替えたことだし行くわよ。麻里さんのお父さんの元へガツンと言うんでしょ?」
そうだ。ここまで長かったが今度こそ麻里さんの父親であるレノワード卿との会談だ。麻里さんの人生を台無しにしていることアスカのことそして俺たちを解放することをしなくてはならない。
そう決意し俺はこの豪邸の中で一番大きいと思われる扉を力一杯押して開けた。そうすると目の前には玉座のような椅子に座ったレノワード卿とその近くにひっそりと座る麻里さんがいた。
レノワード卿「ご機嫌麗しゅう異世界人諸君こちらの準備は揃った。では会談を始めようではないか」
ご愛読ありがとうございます。
少し前に梅雨入りし段々夏に近づいてきましたね。私個人としては6月末に期末考査が控えているので少しずつ勉強に力をいけないようになりました。
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