俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について

破錠 斬々

第13話:急展開

しまった。タイミング悪く麻里さんが戻ってきてしまったせいで兵士にばれてしまった。

兵士「異世界侵入者にんげんを現時刻より国家転覆罪で現行犯逮捕する!!」

きつい鎖を手首につけられ俺と繭はどこかわからない牢獄につれられた。そこはとても冷たく湿気がすごい場所だった。

繭「あーもう、私たちが一体何をしたっていうのよ!ここから出せー!」

叫んでも無駄だ。湿気の多さからするとここは多分地下牢だろう。かなり寒いため今の服装だと寒すぎて風邪をひきそうだ。

修一「これから俺たちはどうなるんだろうな。国家転覆罪だからこの感じだと死刑になってしまうのかな」

何も果たせないままここで朽ちるのは嫌だ。何とかしてでもここを出なくてはいけない。でも気になるのはここへ来る前に俺たちと麻里さんの行き先が違ったことだな。

兵士『さっさと歩け人間ども!』

修一『いちいち言われなくても歩きますよ』

兵士『マリー様ご無事で何よりです。ささ、ドレース卿がお待ちです。早く宮殿へ参りましょう』

麻里『…えぇ』

あの様子からするともう一人の兵士が言っていた「ドレース卿」ってのは麻里さんのお父さんなのか?麻里さんの表情はかなり絶望で染まったような感じだった。麻里さんにとって自分の父親はそれほど嫌な存在なのだろうか?

繭「麻里さん、悲しそうだったね。こんなことになるなら麻里さんだけでも逃げてもらいたかったな」

あの状況で逃げれるのは容易いことだ。でも麻里さんが逃げなかった理由は俺たちの身を案じてだと思う。もし麻里さんが逃げていたら今頃俺たちは打ち首なっていた。

修一「麻里さんに感謝しなくちゃな…」

地下牢の階段から見える月明かりを眺めながら麻里さんのことを考える。無事でいるのかとても心配になってくる。

カッ…カッ…カッ…

誰かが階段を下りてくる。月明かりが見える階段から人影が一歩ずつこちらに近づいてくる。いったい誰だろう。

麻里「お二人とも大丈夫ですか!?何もされていませんか!?」

麻里さんだった。服装がかなり上品なフリフリのドレスのような姿をしていた。

修一「俺たちは無事ですけど麻里さんこそ大丈夫なんですか?その服装もどうしたんですか?」

麻里「これは…家の者に無理やり着せられただけで私自身は何もされていません」

それはよかった。とりあえず無事を確認できただけでも安心できる。でも麻里さんはなぜここに来たのだろうか?

麻里「私がここに来たのはお二人に伝えておきたいことがあるからです。お二人は明日国家転覆罪での処罰を決める裁判を行います。私はお二人に加担しますが負けてしまったらおそらく死刑宣告されると思うので裁判で負けないように努力してください」

今麻里さんが話してることが全く分からない。明日裁判があることは分かったが負けると俺たちは殺されてしまうのか…?

修一「えっと…麻里さんの言ってることがよくわからないんですけど…」

麻里「あまり時間がありませんのでいくらか省略して話します。明日お二人の処罰を決める裁判があります。それに負けてしまったらおそらく死刑になります。もちろん私はお二人に加担しますがお二人にも自分ができそうなことをできるだけ行ってください」

修一「えっと…その話は今ので理解しましたけど麻里さんのお父さんはどうしたんですか?」

明日の予定は理解した。どうなるかはわからないがとりあえず自分にできることを行うしかない。それよりも今は麻里さんの現状を知りたい。

麻里「父は…明日の裁判の途中で参加すると思います。もし父が裁く側に加担した場合負ける可能性は100%でしょう…。そうなってしまったらもうどうすることもできません」

流石は貴族なだけはあるな。こういった異世界の風景では王族に近い存在が大きい権力を持つのは当たり前ということか。運が悪ければ裁判で戦う間もなく死刑宣告をされるわけか。

繭「わかりました。明日私たちにできることは十分やります。麻里さんも明日頑張ってください」

繭も真剣な表情をしている。それほど明日の裁判はとても重大ということがわかる。明日で俺たちの異世界での運命が決まってしまう。

麻里「では、私は馬車を待たせてますのでもう行きます。お二人のご武運を祈ります」

修一「俺からも明日の麻里さんの成功を祈ってます」

明日の健闘を称え麻里さんはにこりと微笑み牢屋を後にした。今は慌てていても仕方がない。こんな牢屋では明日について考えることもできないから寝るしかない。少しでも頭が働くように今日は体力を温存しておく。



兵士「起きろ人間!今日は貴様らの処罰を決めるための裁判を大広場で行うことになった!さっさと牢屋から出ろ!」

朝ー 兵士の怒鳴り声でたたき起こされ一日が始まった。どうやら今日の裁判は俺たちが捕まった噴水の広場でするらしい。麻里さんが今頃現場に到着しているかはわからないがとりあえず今は俺たちにできることは十分やるしかないということだ。

修一「繭、裁判の時は俺ができるだけ話す。お前は俺の話に合わせてくれたらいいから」

繭「わかった。でも私にもできそうなことがあったら遠慮なく話すから」

移動中二人で裁判中どうするかを決め俺たちは昨日捕まった噴水のある広場へ到着した。広場には多くの住人が集まっており俺たち異世界人にんげんを蔑むような眼で見ていた。

住人A「おい、あれが人間だぞ…気味が悪いな」

住人B「あいつらなら昨日広場にいるのを見たぜ。今思うと同じ場所にいるって考えただけで怖いよ」

本当にいろんな言葉が聞こえてくる。気味悪がる者や怖がる者に怒る者がいた。この世界では人間に対してどういったことを考えているのだろうか?

兵士「貴様らはここに立っていてもらう。なお裁判中は裁判長の許可なしに話したりすると真っ先に極刑を言い渡される。まぁ1秒でも長く生きれるように精々足搔くことだな」

兵士の一言一言に腹が立って仕方がない。それよりも今は自分の状況に集中しよう。周りを見渡すが麻里さんの姿は見当たらない。かなり遅く来るのだろうか?

兵士「これより異世界人にんげんを裁く国家裁判を行う!傍聴する国民は皆静かにするように!では今裁判の最高責任者の登場!」

兵士が叫び終わるとドラムの叩かれる音が小刻みに流れた。最高責任者…裁判長のことか。舞台裏の階段から一歩ずつ上へ登る音が段々大きくなり上り終わるころにはとても大きいおじいさんが現れゆっくりと椅子に腰を掛けた。

裁判長「これより異世界人にんげんによる国家転覆罪の裁判を行う。被告人は嘘偽りなく真実だけを供述するように。誓えますか?」

修一「はい、嘘偽りなく真実のみを話すことを誓います裁判長」

裁判長の一言により裁判が始まってしまった。どう考えても無理ゲーだ。負けたら死刑、勝手に喋ったら死刑、麻里さんのお父さんが現れて裁く側を支援したら死刑、これをどうやって生き抜けというのか無理な相談だ。

裁判長「ん?おい君、この子たちの弁護はどこだ?これでは裁判ができん。早くつれてきたまえ」

裁判長の一言に司会を務める兵士はしまったという様な顔をして他の兵士に相談を始めた。

兵士「おほん!失礼しました…異世界人にんげんの弁護をとられる貴族家マリー様の登場!」

何?マリー様が弁護をとられるのか?っと疑問の声が聞こえる中一人の高貴な服を着た女性が現れた。その場違いでもあろう女性はよく見なくてもわかる人だった。

マリー「被告人の弁護を務めさせていただく貴族家マリーでございます」

裁判長「ほほう…まさかあなたが出てくるとは思いもしませんでしたぞ。ですがこの場では私はあなたよりも権力がある。ですから遠慮なく裁かせてもらいますからな」

麻里さんはそこまでの権力者なのか。一瞬自分の知り合いがどれほどの権力を持っていたのかを思い知ったところで裁判が再開した。

裁判長「被告二人、君らは何の目的があってこの世界へ訪れたのだ?」

この世界の裁判は少しルールが違う。基本検察側と弁護側の討論になるがここでは被告人と弁護の共同作業で裁判長に刑を軽くしてもらうルールらしい。

修一「俺たちは…『待ってください』

意見を供述しようとしたところ麻里さんが小さな声で止めてきた。顔を耳元に近寄らせ私が説明しますとだけ言われ裁判長の視界に入る台の上へ立ち上がった。どうやらそこで話をするようだ。

マリー「それは私が説明させていただきます。彼らは人間の世界で学生という職業をしており日々勉学に勤しんでおりました。そしてあの日彼らは私がこの世界へ行こうとしたときに運悪く魔方陣に入ってしまっただけで何の罪もございません」

昨夜考えたのだろうか事実とは全く違うことを説明し始めた。これなら確かに俺たちに罪がないことにはなるが麻里さんは大丈夫なのか心配になる。

裁判長「被告人、彼女が述べていることは真実かな?」

修一「はい。全てが真実です」

俺は麻里さんの話に合わせ偽りの証言をした。それからもここでは何をしたか、どこで一夜を明かしたのか、何を食べたのかとまるで浮気相手と何をしたのか問いただされている気分だった。

そしていくつもの質問を繰り返しようやく最後の質問をされた。

裁判長「それでは被告人に最後の質問をします。被告人神谷修一それに北村繭、君たち二人はこの世界での出来事及びこの世界の存在を他者に情報を漏らさないことを誓いますか?」

最後の質問はかなり簡単なものだった。もちろんこの質問に対し俺と繭はイエスと答えた。そう告げると裁判長は机の引き出しから一枚の紙のようなものを取り出しそれにサインをした。

裁判長「判決を言い渡します。被告人には30年の日常生活に影響を及ばさないない程度の監視をつけることを条件に無罪を言い渡す」

繭「ほ、本当ですか?厳罰とかは全くなしで私たち帰れるんですか?」

思わず繭の口が動いてしまった。それも仕方ないだろう。人間の世界では口では他言しないと誓っても結局はどこかで約束を破るものでそれを信用してはいけない。いくら監視をつけるとしても厳罰なしで元の世界に返すのは不安にならないのだろうか。

裁判長「おや、君たちは厳罰が欲しいのかい?弁護の言う通り君たちが不慮の事故で来てしまったのなら監視をつけるということで許してあげようと思っていたのだが…」

修一「いやいや、監視付きだけで結構です。すいません変なことを言って」

俺たちの慌てる謝罪に裁判長はクスリと笑い席を立ちあがった。

裁判長「さぁ、裁判はこれにて終わりにしましょう。君、おわ…」

???「少し待ちたまえ諸君」

裁判が終わろうとした最中一人の男性の声が広場の空気を一転させた。その声はまるで氷のように冷たく岩のように重たかった。

???「この裁判にはいくつか細工が施されているようだ。特にこの者らの弁護を務めたやつが一番怪しいと見える」

声の持ち主の男は全身黒いコートを着ておりおしゃれのためか杖を持っていた。男はいきなり会場の中に入り杖を麻里さんに突きつけ話をする。

兵士「貴様!まだ裁判の途中だ!早く降り…」

???「やれやれ、これだから新米の兵士は困る。私のことも知らんとは…」

一体この男が何者なのかは少なくとも俺と繭にはわからない。だが完全に広場内の空気がおかしい。

兵士「あ、あなた様はレノワード卿…!」

マリー「お父様…」

-!!この男が麻里さんの父親だった。まさかのタイミングで現れてしまうとは俺たちは想像もしなかっただろう。一番悪い結果になってしまうと悟ってしまった。

レノワード「久しいなマリー。ずいぶん恥をかかせおって」



ご愛読ありがとうございます。

GWも開け社会人の方はもう働きに出ている頃だと思われます。私も学校が始まり少しだるさの残った生活を送っていますが中間テストも近いため気を引き締めて頑張っています。

さて、この物語もそろそろ終わりを迎えようとしています。終わりといってもまだ続く予定ではありますが私作者本人としてはこの物語が終わった頃に新しいものを投稿できるように次回作品の内容を少しずつ考えています。

もし、機会がございましたらこちらの物語と同様読んでみてください!

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