俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について

破錠 斬々

第7話:家出

麻里「実はその理由は私が家出して人間界に逃げて来たことに関係があります」

修一「麻里さんの家出と俺たち三人に何の関係が?」

俺がそう尋ねると麻里さんはレジの引き出したから白黒の古い写真を取り出した。

その写真には二人の男女と女性の膝の上にちょこんと乗った子どもが写っていた。この写真の子麻里さんに…

麻里「三人の察している通りその子供は私です。そして、私を抱きかかえてるのが母でその隣が父です」

アスカ「おぉ!麻里殿のご両親はとてもべっぴんじゃな!」

麻里「今から三人には私の昔話を聞いてもらいます」


私は異世界でとある高貴な家の家系で生まれました。

私たち自身は本ですので父と母との関係は人間界で言うところの兄弟にあたりますが異世界では両親になりますね。

私たち家族は貴族でありながらも平民の人たちと一緒に働き汗を掻くという異世界の貴族としては珍しい家系でした。

そんなある日、私の母がとても大きい病にかかってしまい病にかかった翌年には亡くなってしまいました。

それをきっかけに私の父は私に対して厳しくなってしまったのです。

私も最初は母が亡くなっても私がくじけないようにあえて厳しくしてくれているのだと心で思いながら日々の稽古や技の鍛錬を行なっていました。

ですが私が16歳の誕生日を迎えてから父は今まで厳しく鍛錬を続けさせていたのに対していきなり表裏を返したかのように性格が変わりました。

16歳ということはもう結婚できる歳なので父からはお見合いばかりさせられ退屈に思うようになりました。

私に会いたいと思う男性は誰もが貴族であり、私が欲しいのではなく私の家柄が欲しいと見ただけでわかるような上っ面の人たちばかりでした。

そんな日々に飽きた時には私は家を出ていました。そして、色々さまよっているうちに人間界に来たという事です



修一「麻里さんにそんなことが…」

麻里さんには今まで何故家出したのか聞いてみもしなかったがまさかここまで嫌な過去があったとは思いもしなかった。

家出なんて言うから本の世界の親子喧嘩的なものを想像していたが全く別物だった。

麻里「あなたたちに何もしないでと言ったのはお父様に勘づかれないようにです」

修一「麻里さんのお父さんにですか?別に大丈夫な気がしますが…」

麻里さんは険しい顔をしてこちらを見て申し訳なさそうにしている。よほど俺達には動かないほうがいいみたいだ。

麻里「異世界に行ってきたときに聞いた話ですがお父様は現在異世界の兵士を使って私を全力で捜索しているみたいなんです」

修一「どれくらい探しているんでしょうかね」

麻里「私が16歳の誕生日を迎えて数か月後ですからもう…危ない。もう少しで私の年齢をバラしてしまうところでした」

繭「えーーあと少しで麻里さんの年齢を聞けたのになー」

繭の言う通り麻里さんの年齢を知りたい気はするがそれを知ったら俺たちは亡き者になってしまいそうな気がする。

麻里「私を探すだけならいいのでがお父様は私にかくまっている人は拷問を受けさせる予定だそうです。今のところ私はあなた方三人にしか私の情報を教えていないので他の人は大丈夫なのですが…」

今聞いてはいけなかったことを聞いてしまった気がする。つまり麻里さんに深く関与している人はもれなく麻里さんのお父さんに…

麻里「あなたたちのことがバレてしまうと確実に三人とも拷問の刑に処されるでしょうね」

繭「えぇ…私まだ死にたくないよ…」

麻里「なので私が動くなといった期間は絶対に動かないでください。お父さまに勘づかれては終わりですので」

三人「了解しました。(のじゃ。)」

拷問か…本の世界の拷問ってどんなのだろう。本ということは情報の宝庫だから拷問の種類も色んな世界色んな時代の拷問をするんだろうな。

アスカ「どうしたんじゃ修一?ボーッとして。何か考え事か?」

いかんいかん。変なことを考えてしまっていた。これじゃまるで俺がドMみたいじゃないか。気をしっかり持とう。

繭「どうせ異世界のことについて考えていたんでしょう?修は一旦何かに興味持つと中々離れないのよね」

修一「うるせぇーな」

完全に繭には俺の頭の中を理解されていた。何か恥ずかしい。話を逸らさなくては…

あ、そういえば…!

修一「そういえば麻里さんってどういう本なんですか?異世界の人間ってこと以外何も知りませんよね?」

麻里「まぁ教えない理由はないので言いますか…私は『時の少女』という名前の本です。出版国はイギリスですね」

繭「なら麻里さんは帰国子女ってこと!?私昔から外国人の友達がほしかったのー!」

目をキラキラさせながら力説を放っておいて話を続ける。麻里さんの本読んでみたいな。どんな話なんだろう。とても気になるな。

修一「ちなみに内容は?」

麻里「主人公の少女が過去や未来を行き来して自分の人生を豊かにする身勝手な本です」

あれ?なんか麻里さん素っ気ないな。

修一「麻里さん自分の内容にあまりいい気がしませんか?」

麻里「えぇ。私は私の内容が嫌いです。大体主人公の少女はかなり身勝手すぎます」

この後麻里さんの自分の話に対しての愚痴を一時間ほど聞かされることになるとは思ってもみなかった。

麻里「…っとまぁこんなとこですかね。今度私の本をお貸ししますね」

修一「…んぁあ、ありがとうございます。でも俺英語あまり得意じゃないんですが…」

麻里「はぁ…お貸しする前に翻訳する必要があるようですね」

今思った。麻里さんは口は悪いが面倒見はかなりいいほうだ。

そういえば麻里さんが本であるならば一つ気になることがある。麻里さんにはいったいどんな能力があるんだろう。凄く気になる。

これは聞いてみなくては損だろう。

修一「麻里さんの『時の少女」っていう話からはどんな能力ができるんですか!?」

俺の突然の問いかけに麻里さんは驚きつつもすぐに微笑ましそうな表情になった。自分の能力を聞かれたことが嬉しいのだろうか。

麻里「私の能力ですか。そんなに見たいですか?」

修一「もちろん。もしかしたら記憶の捜索に役立つかもしれないんですから」

麻里「まぁあなたがそこまで見たいというのなら今回だけ特別に披露してあげましょう」

麻里さんは得意げな顔で能力を見ようとした矢先に

繭「あのー」

修一「どうした繭?何かあったのか?

繭「あなたたちがさっきから言っている能力って何?私何も知らないんだけど…」

そうか。まだこいつには話していなかったんだな。えっとどこから話したもんか。まぁとりあえず麻里さんの能力を見る前にアスカの能力を見てもらってから教えるか。

アスカ「ふぬぬぬっ…」

繭「おぉっ!!アスカちゃん凄いよ!私ごと店のカーペットを浮かせてる!」

アスカが力いっぱいに繭ごとカーペットを浮かせている。多分そろそろ限界だろう。

アスカ「繭殿わしはそろそろ限界じゃ…!」

力切れのアスカが繭をゆっくりと下していく。何か俺の時より早くないか?

アスカ「ふうっ。繭殿は修一よりも少し重かった気がするの。すぐに力がなくなったぞ」

あぁアスカまた余計なことを言いやがった。こんなことを言った後は必ず

繭「…………」ゴゴゴゴゴゴゴッ…!

何故か俺を睨んでくる。俺がなにしたっていうんだ。

繭「アスカちゃんの技凄かったな。記憶をなくした状態でここまで凄いなら麻里さんはどんな能力を使うのかな?」

繭の言葉に少し圧があるが気にしないでおこう。気にしていては寿命が縮まりそうだ。

俺たちがアスカの能力を見ているときに紅茶を飲んで寛いでいた麻里さんが呼ばれたことに気付いたのか紅茶を置きこちらに歩いてきた。

麻里「では、私の能力を見せるとしますかね」

やっとアスカ以外の異世界の能力を見ることができる。自分の記憶をなくした状態のアスカでもかなり凄い能力だったから麻里さんは確実にその上をいくだろう。いったいどんな能力なのが見れるのか楽しみだ。

麻里「ふぅぅっーーー」

忍術を唱えるようなポーズをして麻里さんが力を込めた途端に麻里さんの立っている周りに何か文字が刻み込まれ始めた。何の文字かはわからないが文字から強い何かを感じる。

麻里「ふんっ!」

さっきよりも麻里さんが力を強く込め直した瞬間に次は俺たちがいる空間自体に変化が現れた。まるで宇宙のど真ん中に飛ばされたかのような空間だ。

麻里「はい。終わりました」

修一「え、ここはどこですか?」

今俺たちの周りは宇宙のようなだだっ広いところにいる。麻里さんの能力はこれをどんなことなのだろうか。

麻里「私の能力は時を飛ばすことができます。なのでここは地球ができる前の本屋の位置です」

修一「え、つまり何十億年後にはここがあの本屋になるんですか?」

麻里「はい。私は時間を移動することができても場所は変われないので便利のようであまり便利ではありません」

繭「いやー麻里さん謙遜しすぎですよ。時間移動なんて便利じゃないですか」

麻里「そうでしょうか///」

麻里さんは自分の話について不満を漏らしてはしていても少しは自信があるんだろう。ちょっとでも褒めると嬉しそうに赤面する。

麻里「じゃあ戻しますね。ふんっ!」

麻里さんが力を込めなおした瞬間周りは俺たちの知ってる本屋の風景に戻った。本当に時間を移動したんだろうな。周りの空気が変わった気がする。

麻里「どうでしたか?私個人としてはあまり役に立たないので滅多に使わないのですが…」

アスカ「麻里殿そんなに謙遜する必要はないぞ!お主の時間を移動できる能力は必ず役に立つときがくるぞ!」

麻里「そうでしょうか///」

確かにこれはとても大きい力だ。空間は移動できなくても時間だけは変えることができる。俺が科学者だったらきっと喉から手が出るほどの代物だろうな。

修一「麻里さんがそんなにすごい能力があるなんて思いもしませんでした…」

麻里「修一さん、私の能力は役に立つでしょうか?」

修一「えぇ!必ず役に立つはずです!今のところアスカの能力も麻里さんの能力も使うことはありませんがどこかで応用できるでしょう」

麻里「皆さんの役に立つならそれでいいです///」

時間を移動できるか…俺たちが異世界に行くときに使うはずだ。ん…?

この能力でアスカの記憶を回復させられないだろうか?

修一「麻里さん、この能力をアスカ自身に使えないでしょうか?」

もしかしたら使えるのだろうか。麻里さんがとても悩んでいる。使えればいいんだが…

麻里「いいえ使えませんね。この能力は空間の時間を変えるだけなので人の脳内を戻すことはできないでしょう」

修一「そうですか…やっぱり旨いようにはいきませんよね」

繭「もぉーう全員ドンヨリし過ぎ!異世界に行く前からこんな感じだったらアスカちゃんが困るでしょう?」

突然繭がもっともらしいことを言った。確かにさっきアスカに元気を出せと言ったばかりなのに俺がこうなってしまっては元も子もないな。

繭「さ、今日のところは解散するんでしょう?明後日麻里さんの出発なら明後日に向けて家に帰ってからゆっくりしましょう」

麻里「それもそうですね。ではまた」

繭「じゃあね麻里さん!」

ーーー

アスカ「明後日には麻里殿が異世界に行くのか」

繭「だから暫くは行動ができなくなるわね」

帰ってる途中はアスカと繭の会話が続いていた。さっきの会話通り明後日からの暫くは俺たち三人は行動ができなくなる。

修一「まぁやっと解放されるって思ったらまた動けなくなるのか…」

アスカ「また暇になるのう」

繭「今度は早いって言ってたから大丈夫なんじゃない?」

確俺たちは麻里さんに任せている立場だから麻里さんの条件を飲むのは当たり前か。しかも麻里さんの父親にバレたら俺たちはどうなるかわからないからな。

繭「修一・アスカちゃんまたね」

アスカ「繭殿またな!」

修一「じゃぁまた〜」

修一「明日は日曜日か。月曜日からは学校だから明日くらいはゆっくりするかな」

アスカ「修一も普段の勉学で忙しいじゃろう。たまには休息をするのも人生で大切なことじゃ」

修一「何爺さんみたいなこと言ったんだよ」

アスカ「そ、そうかの?」

この俺たちの他愛のない話は明日の俺の予定を狂わせることになるとは俺とアスカにはまだわからなかった。



今回はここまでです。
突然ですが新作を連載することにしました。
その名前は「メイドの鈴木さんは僕に恋をした」という作品です。
内容は主人に仕えるメイドが主人に恋をするラブコメ系の話です。ご興味がある方はぜひ読んでみてください。





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