俺が道端で拾った本はただの本じゃなかった件について

破錠 斬々

第5話:記憶の位置

麻里「私、実は異世界の住人なんです」

修一「はぁ!?」

麻里「うるさいです。少し静かにしてください」

修一「あ、ごめんなさい…」

しかし驚きだ。突然言い出されたのが自分も異世界の人間だという大きな情報こんなの驚いて当たり前だ。

修一「でも、何でアスカを一目で異世界の人間だとわかったんですか?」

これは一番最初に疑問に思った。本の姿を見たわけでもないのに一目で判断できるほど何か特徴があるのだろうか。

麻里「あなたはそんなことも知らないのですか?私たち異世界人には私たち特有の目を持っています」

修一「目ですか?でもアスカにはそれといった特徴は見当たりませんけど…

麻里「はぁ、これだからガキは嫌いです。いいですか?私の瞳をよぉーーーく見てください」

俺は麻里さんの瞳をじっと見た。パッと見た感じいたって普通の目だがよーく目を凝らしてみると少しだけ人間とは何かが違う目をしている。

これが異世界人特有の目なのだろうか…俺にはさっぱりわからん。

麻里「わかりますか?私の瞳の中にうっすらと赤い色が混ざっているでしょう?これが異世界人特有の目です。私はこの子の赤い瞳を見て異世界人だとわかったんです」

確かに言われてみれば少しだけ赤く見れる。だがこれだけではわかりにくい。違いが微妙すぎるため多分繭もわかっていなかっただろう。

繭「あーだからアスカちゃんの瞳だけ普通の人と違ったのね!」

繭が麻里さんの言葉に便乗して話しかけてくる。というかこいつはわかってたのかよ。

修一「お前理解していたのかよ…すげーな…」

繭「このくらいわからなくてどうするのよ…あんたそれでもアスカちゃんの保護者なの?」

うっ…何もいえない。繭は俺をどうしようもない目で見てくるから恥ずかしくなってくる。

麻里「で、あなたたちはこの店に何か用でしょうか?」

しまった。麻里さんが異世界の住人というギャップがすごすぎて本題を忘れていた。

修一「あ、すいません。まだ言っていませんでしたね。アスカは麻里さんの言うとおり異世界の住人なんです。でも、自分の情報だけをすべて忘れてしまっていて元の世界に帰れなくなっているんです。」

麻里「そうですか。別に珍しい話ではないですね」

修一「そうなんですか!?じゃあ記憶の取り戻し方を知っているんですか!?」

麻里さんは一瞬驚いた顔をしたがまた俺に対してあきれたような顔をしてきた。何故だろう何かが不安な気持ちにさせてくる。

麻里「あなた、私は珍しい話ではないといっただけで記憶の回復の仕方があるとは言っていませんよ?」

繭「そんな…じゃあアスカちゃんはもう記憶を戻せないの?」

確かにそうなる。今の麻里さんの発言ではアスカの記憶の回復させる手段がなくなるということだ。

麻里「はぁ…さすがガキですね。発想が極端すぎます」

修一「でも今麻里さんがアスカの記憶の回復の方法がないって…」

麻里「確かに私は本の記憶の回復のさせ方は知りません。ですが回復のさせ方を探す方法を教えることができます」

繭「本当ですか!?」

麻里「はい。ですが条件があります。修一さん…」

修一「はい?」

今まで俺のことをガキにしか思っていない目で見ていた麻里さんが真剣な眼差しでこっちを見つめて突然言い始めた。

麻里「私を人間の世界に馴染ませてください」

修一「え?馴染ませるって言うと?」

麻里「私実は家出をして人間の世界に来てしまいました。突然きたのでこの世界のことがまったくわからずこの店でしか行動していませんでした。
なので修一さんにはたまに私をこの世界に馴染めるようにお出かけをさせてください。そうすればアスカさんの記憶を取り戻せる手助けをしましょう」

おでかけ…つまりどこかに連れて行けばいいのだろうか。まぁこの条件でアスカの記憶を取り戻す手掛かりになれば安いもんか。

修一「わかりました。その条件を受けます」

仏頂面の麻里さんが始めて目を輝かせた。とても嬉しいのだろうとわかるほどにこやかな表情になった。

麻里「物分りが良くて結構です。では、まず最初にアスカさんが記憶をなくした原因を教えますね」

修一「よろしくお願いします…」

アスカの記憶をなくした原因…いったい何なのだろうか。昨日散々考えたが到底わかりもしない。これは異世界の話であって人間の世界しか知らなかった俺には全くわからないだろう。

麻里「アスカさんが自分の記憶をなくした原因はきっと作者に忘れられたのでしょう」

修一「え…作者に忘れられた?それだけで記憶はなくなるものなんですか?」

麻里「はぁ…いいですか馬鹿な人間さん。私たち本は誰かの記憶にあってこそ本なんです。
誰かに忘れられてしまったら私たちは存在できなくなってしまいます。あなたたち人間が自分のことを誰も知らない地域に家出するのとは次元が違うのです」

修一「そう…なんですか…」

麻里「つまりあなたにでもわかりやすいように話すとアスカさんの話を知っている人物がこの世にはどこにも存在しないのです。アスカさんの記憶がなくなった原因はそれが影響しています」

修一「アスカの存在を知る人がいなくなったから自動的にアスカの記憶がなくなったんですか?」

麻里「はい。今のところそうなりますね。ですが、アスカさんの記憶の消え方は特徴的ですね。普通は記憶と一緒に身体もなくなるのですが記憶だけというと不思議です」

修一「ということはアスカの記憶の消え方が珍しいんですか?」

麻里「私の知る限りアスカさんのような記憶の消え方を見たのは初めてですね」

異世界では記憶を消すとは身体もろとも消えてしまうことなのか。ならアスカは不幸中の幸いにも記憶が消えるだけですんだのか。よかった。

修一「じゃぁ何で記憶だけで治まったんですか?もしかしてまだ誰かしらアスカの存在を覚えているということなんですか?」

麻里「今どうこう聞かれても私には答えれませんよ。本当に何も知らないんですから」

修一「…」

麻里「ただあなたたちに協力できるはずです。少なくとも二人よりは役に立つはずでしょう。私たちでゆっくりアスカさんの記憶を探していきましょう」

修一「はい…そうですね…」

繭「修…今日は帰ろうよ?今日一日だけでも収穫はあったじゃない。明日からはゆっくり情報を集めてさ」

繭の言う通りかなり収穫はあっただろう。明日からは麻里さんの情報を頼りに探していけばいつかはアスカの記憶を取り戻せるだろう。

アスカ「修一、今日のことはとても感謝しているぞ。だからそんなに思いつめるな」

アスカが帰り際にこんなことを話しかけてきた。でも自分の記憶を取り戻せる可能性が遠くなったのだから本人が一番苦しいはずなのに。

修一「アスカ、その、今日はごめんな。嫌なことを聞かせてしまって。次もこんな感じで嫌なことがあるかもしれないから明日からは俺一人でs…

アスカ「わしは…修一にとても感謝しておるぞ?今日はわしの記憶の取り戻し方がわからなくなってしまった。確かに聞いたときは目の前が真っ暗になるほどじゃったな」

やっぱりそうだ。これから記憶を探すときはできるだけアスカを連れて行かないほうがいいのかもしれない。

アスカ「じゃが今回で分かったこともあるぞ」

修一「?」

アスカ「わしの記憶を取り戻す方法がわからないということがわかった。これだけでも十分な収穫じゃろう」

修一「アスカ無理していってないか?流石に辛いだろう自分の記憶の取り戻し方がわからないんだから」

繭「アスカちゃん修の言う通りだよ。私たちに無理していってるんじゃないの?」

アスカははて?という顔で俺たちを見つめる。まるで俺たちの言っていることとアスカの伝えたい気持ちが全く別物のように。

アスカ「二人とも何か勘違いしておらんか?確かに記憶が戻らんのは辛いが完全に目的を見失ったわけでもないし特に結果を急いでいるわけでもないからな今回だけで悔やむことはなかろう」

修一「アスカはそれでいいのか?結果が遠くなったんだぞ?」

アスカ「?だからさっき言ったろう?別に今は結果を急いでいるわけじゃない。麻里殿の言った通りゆっくりわしの記憶を探してくれんか?」

アスカのふとした言葉が俺の気持ちを少し軽くしてくれた。さっきまで自分たちの無力さで暗くなっていたのにアスカのおかげで前向きになれそうな気がする。

繭「まぁアスカちゃん本人がここまで言ってくれているのならいいんじゃない?」

修一「そうだな。気を取り直して明日からまた頑張るか」

繭「本当に修一は昔から一度でも失敗したらすごく落ち込むわよね」

修一「そう?気のせいじゃない?」

繭はそんな昔話をしながら俺を笑う。だけど俺はそんなに物事に落ち込むタイプではないんだけどな。

繭「そうよ。あんたは昔からすごく落ち込みやすいのよ。覚えてる?あんたがおじさんの仕事道具を持ち出して無くした時の話」

修一「は?そんなことあったか?」

繭「あったわよ。無くしたことに気づいたときの表情はまさに地獄を見ている風景だったわね」

アスカ「修一そういえば修一の父上は何をしていた人なんじゃ?」

アスカが突然に不思議なことを聞く。俺の父さんか。何をしていたんだっけ?あれ、思い出せない…どうしてだ?

繭「どうしたの修一?険しい顔をして何かあったの?」

修一「俺の父さんは何の仕事をしていたんだっけ?」

繭「あんたのお父さんは新聞の編集長でしょう?今更何を聞いてんのよ」

修一「あぁそうだった。忘れてた忘れてた」

繭「もう、しっかりしてよね」

何故父さんのことを忘れていたんだろう。大事な実父なのに。気を付けないといけないな。

アスカ「ほーう。修一の父上は編集者じゃったか。もしかすると父上の仕事場に行ったら手掛かりを探せるかもしれんぞ?」

修一「絶対に無理だね」

アスカ「何故じゃ?編集長なのじゃろう?何かしらあるとは思うが」

修一「父さんの仕事は肩書はすごそうに聞こえるけど新聞ていっても地域新聞だからね。わかる範囲は小さいしアスカとのジャンルは違うと思うし」

アスカ「そうか。それは残念じゃったな」

繭「そんなことより今日は本当に収穫が大きかったよね。まさかあの変な店の店主の麻里さんが異世界の住人だとはね思いもしなかったな」

繭の言う通りアスカ以外に異世界の住人が存在しているとは思わなかったな。もしかすると俺たちが思っている以上に異世界人はこっちに移住しているのかもしれないな。

アスカ「明日からは麻里殿と共に探していけるな。とても力強いな」

今日の反省・収穫・意外な出来事のいろんなことを話しているうちに家に着いた。話していると早いな。

繭「修・アスカちゃんまた明日ね」

アスカ「おぉ!明日もよろしく頼むぞ!」

修一「うん。また」

明日からは今日とは全く違うように忙しくなる。アスカの記憶を取り戻すにはまた難しくなってしまう。また頑張らなくては。

修一「ただいまー」




今回はここまでとして頂きます。今回の話は自分が思っているように書けなかったので時間がかかってしまいました。
申し訳ありません。
しばらくノベルバを開いていなかったらフォロワーが4人になっていたのでとても驚きました。読者の皆様にはとても感謝しております。
次回話もどうかよろしくお願いします。

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