Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

SecondMagic3

次の日、いつもと何ら変わらない授業を午前中は行い午後からは実習となった。と言ってもとても簡単で分かりやすいことだ。それは「科学」に属すると言われるグランナイトの分解だ。

 かつて行われていたとされる実験方法は今や古く簡単に熱分解を行うことで出来る物が増えた現在では専門的な知識は新たなものとされ昔の人々の想像では認知出来ない物もあるほどだ。

 このグランナイトもとても加工がしやすく簡単に分解が出来る代物だけあって今の世界ではごく一般的に流通されているがそれでも専門的なことを交えることによっては兵器として確立してしまうのも事実だ。

 とある国では物資が乏しく他国との戦争に勝利するためその物質の構造を利用して新たな兵器へと変換させ自国に勝利をもたらしたとされている。それ程までに危険な代物としても変わる物なので万が一にも注意を怠ってはならないのだ。

 「にしても今時型を作るなんてな」
 「まあ、それくらいしか今は出来ないかな?下手をしたらいけないし」
 「でもな…」

 連太郎がこう言うのには訳がある。型を作るのは物質を一度液状化しそれを好きな形へと変えると言う言わば工作の延長線上に位置する創作である。創作意欲を掻き立て、未来を見据える思考力を養うのにはいいのかもしれないが、流石にこの歳になってこんなに自由にやるのはちょっとどうかとも思った。

 「第一、指示がアバウトなんだよなぁ」
 「確かに、フワッとしてるよね。そこはもう少し何かの目的を定めて欲しいよ」
 「だろ!」

 連太郎の最もだと思う一言に同意の意を示しながらも、手はテキパキとやる事を済ませていく。

 グランナイトを一度試験管程度の大きさの容器に移し、適度な熱を加え放置し溶けるのを待つ。そして、溶けきり液状化した所でそれを平たい容器へと流し込む。流し込む前に金属を折り曲げて形を作った適当な型を置いておかなければ形が変わってしまうので、その点は気をつけながら行って行く。

 「こんなものかな?」
 「おっ黒江、出来たのか」
 「うん、これだよ」

 僕が作ったのは砂時計と言われる昔の一定の時間のみを刻むことの許された時計で、その砂が入っていない状態の外枠のみをグランナイトを使い再現してみたが、我ながらうまく出来たと思う。しかしそれを見た連太郎はウワッとした顔をした。

 「時計かよ」
 「時計を悪く言うと怒るよ」
 「うわっ、怖っ」

 僕は目を細めニコッとしながら首を傾げる。それをみた連太郎は少し引きっつて後ろへと下がった。

 「じゃあ連太郎は何を作ったの?」
 「うんっ、俺は…」

 連太郎は隠すようにしてみせようとしてこなかった。なので僕は少しフェイントをかけるようにして近づき後ろを見るとそれは兎を模したオブジェクトだった。

 「何と言うか、意外」
 「うるせぇよ、いいだろ別に!」
 「別に悪いとは言っていないけど?」

 怒ってくる連太郎に僕は関係がないようにそっと呟いた。

 「二人共如何ですか?」
 「あっ、鞍馬さん!」

 丁度良い所で鞍馬さんが話しかけてきた。彼女の手に持っているのはおそらくこの実習の間に作った作品だろう。その作品はとても高度でまた光沢のある美しい物だった。

 「これですか?見ての通りです」
 「歯車、だよね?」
 「はい。私には適していると思いますが」
 
 彼女は自分を作られたものだと認識しているため、かつての「機械」で現在もその多くが使われている「歯車」を模したオブジェクトだった。

 「いいと思うよ」
 「そうですか、良かったです」

 如何やら僕らの反応に期待をしていたらしく、自分の思っていた反応を取ったため、鞍馬さんにしては珍しく喜んでいるようだった。

 「でも次はもう少し違う実習がしたいかな」
 「それもそうですね」

 意見は食い違うことなく一致し心の中ではホッとしていた僕だった。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品