Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

SecondMagic2

教室へと戻った僕らは、新しい担任となった講師である狼上霧を待った。実際こんなにも本当に早く会えるとは思わなかったのて、驚きを隠せないでいた。すると、前の席に座る連太郎が首を少し傾げながら声をかける。

 「黒江如何したんだ?なんかあったのかよ」
 「いや、別に何かあったわけでもないんだけど狼上先生って何と言うか凄いなーと思って」
 「あぁ、それは分かるわ。だってあの人あの黒い奴の攻撃を受け切ったんだからな。しかも生身で」
 「それもあるけど…」

 言葉に詰まる。連太郎はあの時寝てたから知らないだろうがあの人は、あぁ見えてこの学校に通う生徒の大半が目指すであろう「一級魔工師」なのだから。そんな人を目の前にした時には一体どんな反応をするのだろうかと思うと笑ってしまう。

 「まっとにかく新しい担任は楽しみだな!」
 「確かに面白いよね」
 「あんな、チャラチャラした間の抜けた講師がよくこの学校に担任のポストを収めたのかって言うのが凄げーだよな」
 「それは思うね」

 この学校を含むこの「日本」に三つ存在する、国立付属高校はその圧倒的な難易度ながら教員にも最新の注意と実力を委ねているのだ。そのためこの学校に臨時ながらも講師が入ってくる事自体が異常なのに対し担任まで務めるのにはそれなりの実力あってのものだと言える。それはたとえ「一級魔工師」であっても例外ではない。それだけ優秀だと言えるのだ。

 「しっかし遅いなー、もう今日はやっぱし来ねーんじゃ…」

 その時ガラガラっと扉が開く音がした。この学校にあるほとんどの扉は引き戸なのでこのような音がするところもあるがしないところの方がほとんどだがしかしこの教室はその運良くハズレの位置に属していた。

 「はい、静かにして。それと、えっと陣馬君聞こえてるよ。もう少し周りに意識を向けないと後でえらい目にあうよ」
 「はっ、はいすみませんでした」
 「まあ、分かればいいんだけどね」

 狼上先生は教室へと入ってくるなり連太郎に注意を施した。その対処の速さからしておそらくずっと教室の扉の前で待機し僕らの反応を伺っていたのだろう。

 「それでは、改めて自己紹介と行こうか。僕は狼上霧。今日から君達の担任を務める臨時の講師だよ。講師だからってあんまりなめないでおいてね。君たちの担任の西野君とはこの学校「アルタイル」で共に学んだ同期でね、それもあって僕が代わりを務める事になったんだ」

 あっさりと終わってしまった自己紹介にはオチがなく「あれ終わり」と言うような締め方だった。しかしそれがまた意外に高評価へと繋がったのか生徒の大半は顔に若干の笑みを浮かべていた。

 「それじゃあ、君たちには悪いけど授業に行くよ。遅れを取り戻さないと単位が取れなくなっちゃうからね」
 「えー」

 皆んなが一斉に不満の声を漏らすもその声に耳を傾けない狼上霧は即座に来ていたスーツのポケットから何か小さな石を取り出した。その石は透明で光の当たり具合で所々で色が変わる、結晶だった。

 「これ分かるかな?じゃあえっと君、えぇ…浅野君」
 「えっ、はっはいそれは「クリスタル・ノーツ」だと思います」

 当てられたクラスの男子の浅野君は少し緊張の面持ちか噛んだ言い方で答える。そして「クリスタル・ノーツ」と言う結晶も見るのは初めてだった。





 クリスタル・ノーツ 別名氷結晶

 寒い地域でのみ発見する事の出来る石。長い年月をかけて水が冷やされ凝固し出来たその石は普通の氷と違い溶けないと言われている。




 この結晶は基本的な構造はただの水であり普通の氷ではあるが、その力は普通の氷とは桁違いな耐久精度があり暑い地域では貴重として高値で取引されているそうだ。この一帯はもともと「日本」と言う国の位置が「北極」と呼ばれる氷の大地に近い位置にあるため四季があるにもかかわらず所々で寒さに震えてしまう。そんな地域ですら見つけられない結晶は「ロシア」などでしか採取できないと言われている。

 「この結晶は僕の個人的な持ち物です。この結晶はただ冷たいだけだけど、本当に凄い結晶、魔法石はその名の通り魔力を有しているため使い方を誤ると危険に成り代わってしまうものですね。この学校にも保管されているそうですが君達は決して関わらぬよう気を付けてくださいね」
 「はーい」
 「それでは今日はここまで、また皆んな明日ね、それじゃあ」

 キンコーンカンコーンと昔ながらの終礼を告げるチャイムが鳴り響き狼上霧は教室を後にして行くのだった。その姿は何処か考え事をしている表情であった事はこの場にいる極数名しか知る由がなかった。
 


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