Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

FirstMagic15

目が覚めるそこに広がっていたのは天井だった。そして僕はベットの上で横たわっていた。どうなったのかまるで分からない状況に対し、情報を求め起き上がると横には連太郎が眠っていた。

 「連太郎!よかった無事で。それよりここはどこなんだろう?」
 「ここは学校の医務室です」
 「鞍馬さん!」

 そこにいたのは椅子に座りじっとしている鞍馬さんであった。その動きには微動だにせず、誰も近づけないと言った孤高感が立ち込めていた。また表情からもそれが読み取れるほどだ。

 「あの後、どうなったんですか!」
 「大丈夫ですよ。幸い被害にあられたのは貴方方二人と西野先生だけです。貴方方は「魔法」により自動的に回復されていくようですが、西野先生は普通な上に受けた傷の影響かあの後この学校の付属の大学病院へと運ばれましたよ」
 「それって、僕らは守れたのかな」
 「当然ですよ。貴方方は一歩間違えばそのか弱い命を失っていました。ですが貴方方は生き残り、被害も最小限に留めました。これを勝利、藤井さんの言う守るに相当します」

 僕らは本当に守れたのか不安になる。そしてまた一つ「魔法」の力に触れたのだった。この「魔法」と言う力の本質はまだ僕らは触れてはいないのだろうか。そんな風に考えてしまった。

 「今は、何も考えなくていいですよ。無理に考えても意味などないですよ」
 「そんなものなのかな?」
 「そう言うものですよ。心配しなくても大丈夫です」

 鞍馬さんに励まされながらこの場をやり過ごしたのだった。その風貌からは到底掴めないが、鞍馬さんは僕らの事をしっかりと見ているのだと分ったので本当に凄いのだと改めて分かった。

 「それにしても、なんで他に先生はいないんだろう?静かすぎて君が悪いよ」
 「今学校に残っているのは私達だけです。他の皆さんはあの存在を確認した生徒さんが学校に連絡し、即座に家路に着きました。私達は特別に残っているだけにすぎません。先生方はこの事を国と相談しあっていますよ」
 「そんな事になっていたんですか」
 
 突然話している最中にガラガラっと扉をスライドされる音が医務室内に響き渡るので、誰かと思い話しかけてみる。そして、そこにいたのはあの時先生を守った人だった。

 「失礼するよ。よかった大丈夫そうで何よりだよ。具合の方はどうだい?」
 「あっ、はい大丈夫です。あの、貴方は?」
 「おっと申し訳ないね。自己紹介がまだだったよ。僕は狼上霧、西野くんとは学生時代の同期でね。彼は教師になったが、僕は今は一応「国家武装犯罪対策部」と言うのを主に受け持っている、「一級魔工師」さ。よろしくね」
 
 一瞬固まってしまう。「国家武装犯罪対策部」は国を守るために組織された防衛団体であり、また「一級魔工師」はこの国でも数えるほどしかいない、「魔工」のスペシャリストだ。「魔工師」とは、ウィザードと呼ばれるほどに卓越した者のこと…そんな人がどうしてあんな所にいたのだろうか?

 「何であんな場所にいたのかと言いたげな顔をしているね、えっと…」
 「藤井です。藤井黒江と申します」
 「そうかい。藤井…何処かで聞いた気がまあいいかな。実は僕は一応対策部には籍を置いているけど、基本自由に行動していて、あれは遺跡の調査の最中だったんだよ。そこでたまたま君らがあの存在に襲われていたのを見たから飛び出しただけだよ」
 「遺跡ですか。それよりあの存在について何か知っているんですか?」
 「詳しい事はいくら当事者でも教えられないよ。でも僕ら国の人達はあの存在が最近ニュースで取り上げられている未確認の生物であると断定している」
 「そうなんですか」

 思っても見ないところで情報を得られた。あの黒い存在が世界中で目撃されている事実は脅威である以外の何者でもなかった。

 「それじゃあ僕はこの辺で失礼するよ。また話を聞く機会が必ずあると思うから。その時はお願いするね」
 「はい。分かりました」

 あの後は少し話した。僕らを危険な目に合わせたとの事で深く謝罪の意を示して頭を下げていた。その姿を見て僕は本当に弱い人間なのだと立場が狭くなった。

 「あの、あれは一体何なんでしょうか?」

 帰り際に聞いてみる。すると、狼上さんはこちらを振り向き、

 「僕らは、「黒の怪物グリット」と呼んでいる。それ以外は分からない。あっそれとまた近いうちに会うからね」

 夕日に照らされながら斜め後ろを見るようにして答える姿はとてもカッコよく、またとても絵に描いたような滑稽な姿であった。そして最後に意味深な言葉を告げて去ってよくのだった。扉を開けて。





 「僕です。はい。やはりそうですか。はい。僕がヘルプに入ります。「アルタイル」の方には連絡をお願いします。分かっていますよ、「終焉」は私たちの手で止めるのですから」

 そう言って通信端末の通話を切り、再び僕は歩いて行くのだった。

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