Endless・Magic〜終焉に近づく魔法はやがて永遠に終わらない悲劇の幕開けなのかもしれない

水定ユウ

FirstMagic3

その後は普通通りだった。普通というのはどこと変わることのない一般的な学校説明の延長戦。一学年生が一つの部屋に集められ話を聞く、そして現在はくたびれ机に突っ伏せてしまった昼休みである。

 「よーお前大変そうだな」
 「そうかな」

 話しかけて来たのは目の前の席に座っている男子だった。そいつはいかにも優等生というような真面目な雰囲気を醸し出しながら、どこかやんちゃな子供といった雰囲気も残る青少年だった。

 「一日でそうはならないだろ」
 「確かにそうだね」

 如何やら心配して話しかけて来てくれたらしい。

 「俺、陣馬、陣馬連太郎って言うんだ。連太郎って言ってくれ。自慢じゃないが親は陣馬コーポレーションの社長なんだ」
 「それは凄いな」

 陣馬コーポレーションとは世界的にも有名な「機工」技術を誇ると言われる一大企業であり、その評判はとても良く、信頼も厚いと言われている。

 「僕は、言わなくてもいいかな。藤井黒江、黒江って呼んで欲しいな」
 「OK黒江。にしても一体なんで昨日は来れなかったんだ?」
 「えっと、父さんが仕事でちょっと国の研究機関に呼ばれちゃって、僕だけ先に行く気だったんだけどあいにく行けなかったんだ」
 「国って、どんだけ凄いんだよ」
 「さあ、分からないよ」

 本当に知らない。ただ一部の人達の間では知らない者はいないとの事だ。

 「もう一ついいか。黒江って「京都」出身なんだよな」
 「そうだよ」
 「だったら「大阪」の「ベガ」の方が近いんじゃないのか?」

 「ベガ」とは「大阪」にある日本三大魔工機科学高校の名門の一つであり、ここ「アルタイル」と争うほどの超名門校だ。

 「確かにそうだけど、僕はこっちの方があってたし、それに父さん達の移動もあってね」
 「へー大変なんだな」

 そんなこんなで話は弾んで行くと一つ僕の目線に違和感らしき者が写った。

 「連太郎、あの子如何したんだろう?」
 「あーあいつか、そういやまだ孤立してんな」
 
 僕と連太郎の目線の先には一人の少女がいる。白く透き通るような髪に大人びた美しい顔立ちをしている。背丈もさすがに男子には敵わないが平均的で高い。そんな目立つ子がただ一人孤立していたら違和感にもなる。

 「あいつは、鞍馬理央って言って、昨日からずっと一人なんだ。なんか近づきにくいって言うのか」
 「そうなんだ」
 「おっと、冷たいな」
 「まあ、まだ二日目なんだしそんなもんだと思うよ」
 「確かにな、おっと飯でも食いに行こうぜ。そろそろ人も減ってんだろ」

 連太郎は如何やら学校説明にあった食堂に向かうらしい。僕もお昼はまだなので一緒に行く。結論を言うと、美味しかった。


 この日の午後は早速授業だった。しかし簡単な事ばかり。1000年前に起きた「魔法」によって一度ゼロに戻されてしまった世界はわずか1000年を足らずで元に戻りつつある。しかし勝手の教えは今では地形や物質と変わってしまい、おまけに知識を持つものも数少なく現在手探りの状況だ。つまり、過去の教えは今ではあまり役に立たないとの事だ。

 「えっと、物質には様々な者があるが中でも有名なのは鉱石だ。これわかる奴」
 「はい。グランナイトだと思います」
 「その通りだ」

 うちのクラスの担任西野先生は手に持った黄色に功績について説明している。

 


グランナイト 別名地質石

 今の世界最も多く出回っている鉱石であり、加工しやすく、熱を通しやすいため重宝される代表的な物。大きさはまちまちだが、そのどれもが今の「機工」には必要不可欠とも言われるほどの物である。




 資料に載っていたのは簡単に言ってしまえばこうだ。つまり、とても便利な石とでもわかっていれば良い。僕も何度か父さんが持っていたのを見せてもらっていたので、よく分かっているとは言わないがそれなりに走っているつもりだ。

 この学校は一年生のうちは総合的なものを習うが二年次からは専門的分野を学ぶことができる。僕もまだ決めかねてはいるが、焦らず考えて行く。決まっているのは「魔法」をもっと知りたい事ぐらいだから。

 こうしてこの日の授業は終わる。下校時少し鞍馬の事が気にはなったが、すでに教室にはいなかったので、保留にする。この日は初登校だったために父さん達にも話す事はたくさんあったので、とても楽しかった。

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