リア充インビジブル
見えない彼女と俺だけの世界
皆さんは幽霊を見たことはあるだろうか?
昨今では夏の風物詩となり、TV番組で特集なども組まれるコンテンツであるが、その多くがデタラメとされている。
 しかし、それは幽霊が存在しないということではない。幽霊は確かに存在する。ソースは俺。目の前に明らかに幽霊がいるからである。
この現象は三日前から始まった。
初めてみたのは俺の家の中だった。見間違いかなにかだと思っていたのだが、明らかに俺の周りに頻繁に出没するわ、ふわふわしてるわで、これが幽霊ってやつか…と確信に至ったのだが特に害もないので放置している。
しかし、やはり気になる…
そろそろアクションを起こすべきかと迷いに迷い、ついに俺は声をかけた
「お、おい。その、あんた、」
ま、まずいぞ〜…話しかけてみたものの何を話せばいいかわからない。あ、こっち向いた!どうしようか・・・
「ふふ、ふふふふふ」
あ、だめだ。これ呪われたりするパターンでは!?逃げるか?窓から逃げ出すか!? 
「やっと気付いてくれたね。優くん。」
「は、はあ?」
目の前にいる幽霊はおそらく、いや確実に2ヶ月前に事故で死んだ俺の幼馴染の美咲だった。
美咲の幽霊には色々聞きたいことがあったが初めに出てきたのが
「お前、この世に未練とか、あるのか?」
やはり、幽霊として出てくるということはそういうことなのだろうか。
しかし、未練があるというなら成仏させてやりたいという気持ちはある。
すると美咲は
「うーん。ある、にはあるかな。」
と、俺が知ってる笑顔で曖昧に答えた。
俺が質問するといつも困ったような笑い方をしていたなあ。なんて思いながらも
「教えてくれないか?お前の未練。」
 
「恥ずかしいなあ。」
なんて美咲はうつむきながらも答えた。
「優くん、私と付き合ってください!」
「え、ええ!?」
状況がいまいち掴めない俺に美咲は困ったようにはにかみながら
「だめかな?」
「だ、だめなわけあるか!俺だってお前のこと好きだよ!でもいいのか?その、お前」
「死んでる?」
「まあ、そうだ。」
「そんなこと気にしなくていいよ」
美咲は笑うが俺が気にする。だって美咲が死んだのは俺が理由でもあるのだから。
突然だが美咲が死んだときの話をしよう。
俺は二十歳になり車の免許を取った。そしてすぐに、レンタカーで美咲を連れ出したのだ。俺はそのとき告白しようと考えていた。中学から温めてきた恋心。
しかし、叶わなければ彼女は平常で今後も接してくれるだろうが、やはり何かしらの違和感が残るだろう。
俺はそれが怖かった。
そして、告白する前に事故にあった。トラックの運転手が心臓発作で倒れていたのだ。そして車は衝突。
運が良いのか悪いのか俺はほぼ無傷。
しかし美咲は亡くなってしまった。
一ヶ月俺は放心状態が続き生きる気力をなくしていた。そして、その後も惰性で生きていたのだ。
そして今に至るわけだ。
俺は正直に言うと成仏させてやりたいのは美咲が俺を恨んでいるのではという恐怖があった。
でも、嬉しかった。俺はたとえ美咲が幽霊だとしても付き合ってもいいのではと感情が揺れ始めとうとう
「付き合おうか。」
「感情ぶれぶれだねえ。」
と美咲は笑うが仕方がない。 
こうして俺には誰にも見えない彼女ができた。それからというもの俺は毎日が楽しかった。
二人でデートにも行った。見えない何かと話している姿を見られる、というのは周りから変な目で見られるのではと思っていたが、そうでもなかった。
そして、一月ほど経ったある日俺は朝まどろみの中で謎の声が聞こえた。
何を言っているのかはっきりと聞き取れないが耳元でぼやぼやと囁くような優しい声が聞こえる。
「・・・美咲か?」
「おはよう、優くん。今日は早いね。」
「ん?美咲が起こしてくれたんじゃないのか?」
「違うよ?」
俺は不思議に思いながらも度々そんなことが起こるようになっていた。
しかし、この声を聞くと不思議と落ち着くのだ。
そして、俺は楽しい毎日と現実離れした時間の中で忘れていた。
「美咲、お前の墓参りに行こうと思うんだけど、嫌か?」
「嫌じゃないよ。お花ちゃんと持ってきてね。」
そうだ、美咲は花が好きだった。将来は花屋さんになると言っていたがいつまでの夢だったのだろう。
花屋になる勉強と言って花言葉を俺に教えてくれたこともあったな。なんて関係のないことを考えていると
「優くん!お花買いに行くんでしょ!ちゃんとしたやつ買ってよね。」
「ああ、分かってるよ。」
美咲の墓参りに来る前に一応墓参りの作法を調べておいたので一通り済ませた後、手を合わせ考える。
美咲はもう死んでいる。今過ごしている時間はとても幸せだと感じている、がいつまでこの時間が続くのか。このままでいいのか。もしかすると美咲は俺の妄想の産物かもしれないのでは、とよくない方へ思考が偏りかけていると
「そろそろ行こうか、優くん。」
と、美咲が促すのに少し違和感があったが
「あ、ああ。そうだな。」
最後に、美咲の先祖様、もう少し美咲を預からせていただきます。と心の中で唱えておいた。
その後はすぐに家へ帰りだらだらと二人でいつものように過ごした。
ある日俺はふと思った。美咲はなぜ成仏しないのか?と。
別に美咲に成仏して欲しいわけではない。が、やはりこのままでいいわけがない。抵抗はあるが、聞いてみないことには始まらない。
「美咲、突然なんだけど。いいか?」
「どうしたの?優くん」
「なんでお前はまだ成仏していないんだ?」
「そうだねえ。私は未練というよりも用事があって来たって残ってる感じと言えばいいかな。」
「用事ってなんだ?はっきり言ってくれないとわからないよ。」
「今はまだ時期尚早ってやつだね。もう少ししたら分かるよ。」
そうだねえ。私は未練というよりも用事があって来たって残ってる感じと言えばいいかな。」
「用事ってなんだ?はっきり言ってくれないとわからないよ。」
「今はまだ時期尚早ってやつだね。もう少ししたら分かるよ。」
「そうか。」
もう少ししたら、美咲はいなくなってしまうということなのか?俺が思っているより、美咲がいる時間は少ないかもしれない。
しかし、用事というのも気になるがあまり詮索するのは無粋というものだろう。
今は、この時間が続く限り彼女を幸せにしよう。そう思うだけに留めた。
それにしても最近あの幻聴らしきものが大きくなって来ている気がする。稀に少しだけ聞き取れる時がある。幽霊と長い時間を過ごすことで起こっているのだろうか?そうとしか、考えられない。が二人の時間に比べれば些末時と割り切り日々を重ねて行く。
俺は夢を見た。体は動かない。ただ、天井をずっと見ている。誰かの声がする。聞き覚えのある、聞いていると落ち着く声。俺は耳を傾けようとして目が覚めた。
なんの夢だったんだろう。何か、大事なことが詰まっているような、そんな夢だった。
「おはよう、美咲。」
「お、最近は朝が早いみたいだねえ優くん。」
「ああ、不思議な夢を見るんだ。その日は目が冴えて起きてしまう。」
「そっか。うん。」
 美咲は少し寂しそうにそして、優しい笑顔で言った
「そろそろ起きなきゃだね。」
 
「うん?俺はもう起きてるぞ?大丈夫か?」
「もう薄々気付いてるかと思ってたけど、ほんとに鈍感さんだなあ。優くんは。」
美咲はいつものように困った顔で笑う。
「はっきり説明してくれよ。どういうことなんだ?」
「そうだね。じゃあ目を閉じて。ゆっくり、ゆっくり暗闇の中から光を一筋。見つけ出して。それからその光を振り返らず一直線に追いかけて。」
「どうしたんだよ急に。わけがわからないよ。」
「いいから早く。彼女の言うことを彼氏は聞くものだよ。」
美咲は今にも泣き出しそうな顔で無理矢理笑顔を作っている。そんな顔をしていた。
「わかった。やるよ。だからそんな顔しないでくれよ。なんだか一生の別れみたいじゃないか。」
そう言いながらも俺は目を瞑り美咲の言ったように暗闇の中から光を探すイメージ。そして、光へ意識がどんどん吸い込ませて行く。そして、意識が消えそうな寸前。
「さよなら。優くん。ありがとう。」
唇に柔らかい感触と美咲の震える声が鼓膜を震えさせる。
「ーー美咲!」
俺は手を一気に伸ばしたが空を掴んだだけだった。
「高野さんが目を覚ましました!」
あれ、ここはどこだ?天井に見覚えがあるような、ないような。
ナースが走り回っている。
何か言っているがよく聞こえない。
何か、長い、長い、夢を見ていたようなそんな感覚がする。思い出せそうなのに靄がかかっていて記憶の端を掴むことができない。
ぼやけた目の片隅で困ったように笑う薄い影を見たような気がした。
その後、俺は今まで自分が昏睡状態にあったことを知った。
そして、そのとき幼馴染の美咲が亡くなったということも。前までの俺ならショックで生きる気力を失っていただろう。
こんな世界で生きていけない、と。
でも、なぜか一度経験したような気もする。支えてくれる誰かがいる気がする。
今なら失敗したリアルが充実するからもしれない。
見えない何かに支えられて。
昨今では夏の風物詩となり、TV番組で特集なども組まれるコンテンツであるが、その多くがデタラメとされている。
 しかし、それは幽霊が存在しないということではない。幽霊は確かに存在する。ソースは俺。目の前に明らかに幽霊がいるからである。
この現象は三日前から始まった。
初めてみたのは俺の家の中だった。見間違いかなにかだと思っていたのだが、明らかに俺の周りに頻繁に出没するわ、ふわふわしてるわで、これが幽霊ってやつか…と確信に至ったのだが特に害もないので放置している。
しかし、やはり気になる…
そろそろアクションを起こすべきかと迷いに迷い、ついに俺は声をかけた
「お、おい。その、あんた、」
ま、まずいぞ〜…話しかけてみたものの何を話せばいいかわからない。あ、こっち向いた!どうしようか・・・
「ふふ、ふふふふふ」
あ、だめだ。これ呪われたりするパターンでは!?逃げるか?窓から逃げ出すか!? 
「やっと気付いてくれたね。優くん。」
「は、はあ?」
目の前にいる幽霊はおそらく、いや確実に2ヶ月前に事故で死んだ俺の幼馴染の美咲だった。
美咲の幽霊には色々聞きたいことがあったが初めに出てきたのが
「お前、この世に未練とか、あるのか?」
やはり、幽霊として出てくるということはそういうことなのだろうか。
しかし、未練があるというなら成仏させてやりたいという気持ちはある。
すると美咲は
「うーん。ある、にはあるかな。」
と、俺が知ってる笑顔で曖昧に答えた。
俺が質問するといつも困ったような笑い方をしていたなあ。なんて思いながらも
「教えてくれないか?お前の未練。」
 
「恥ずかしいなあ。」
なんて美咲はうつむきながらも答えた。
「優くん、私と付き合ってください!」
「え、ええ!?」
状況がいまいち掴めない俺に美咲は困ったようにはにかみながら
「だめかな?」
「だ、だめなわけあるか!俺だってお前のこと好きだよ!でもいいのか?その、お前」
「死んでる?」
「まあ、そうだ。」
「そんなこと気にしなくていいよ」
美咲は笑うが俺が気にする。だって美咲が死んだのは俺が理由でもあるのだから。
突然だが美咲が死んだときの話をしよう。
俺は二十歳になり車の免許を取った。そしてすぐに、レンタカーで美咲を連れ出したのだ。俺はそのとき告白しようと考えていた。中学から温めてきた恋心。
しかし、叶わなければ彼女は平常で今後も接してくれるだろうが、やはり何かしらの違和感が残るだろう。
俺はそれが怖かった。
そして、告白する前に事故にあった。トラックの運転手が心臓発作で倒れていたのだ。そして車は衝突。
運が良いのか悪いのか俺はほぼ無傷。
しかし美咲は亡くなってしまった。
一ヶ月俺は放心状態が続き生きる気力をなくしていた。そして、その後も惰性で生きていたのだ。
そして今に至るわけだ。
俺は正直に言うと成仏させてやりたいのは美咲が俺を恨んでいるのではという恐怖があった。
でも、嬉しかった。俺はたとえ美咲が幽霊だとしても付き合ってもいいのではと感情が揺れ始めとうとう
「付き合おうか。」
「感情ぶれぶれだねえ。」
と美咲は笑うが仕方がない。 
こうして俺には誰にも見えない彼女ができた。それからというもの俺は毎日が楽しかった。
二人でデートにも行った。見えない何かと話している姿を見られる、というのは周りから変な目で見られるのではと思っていたが、そうでもなかった。
そして、一月ほど経ったある日俺は朝まどろみの中で謎の声が聞こえた。
何を言っているのかはっきりと聞き取れないが耳元でぼやぼやと囁くような優しい声が聞こえる。
「・・・美咲か?」
「おはよう、優くん。今日は早いね。」
「ん?美咲が起こしてくれたんじゃないのか?」
「違うよ?」
俺は不思議に思いながらも度々そんなことが起こるようになっていた。
しかし、この声を聞くと不思議と落ち着くのだ。
そして、俺は楽しい毎日と現実離れした時間の中で忘れていた。
「美咲、お前の墓参りに行こうと思うんだけど、嫌か?」
「嫌じゃないよ。お花ちゃんと持ってきてね。」
そうだ、美咲は花が好きだった。将来は花屋さんになると言っていたがいつまでの夢だったのだろう。
花屋になる勉強と言って花言葉を俺に教えてくれたこともあったな。なんて関係のないことを考えていると
「優くん!お花買いに行くんでしょ!ちゃんとしたやつ買ってよね。」
「ああ、分かってるよ。」
美咲の墓参りに来る前に一応墓参りの作法を調べておいたので一通り済ませた後、手を合わせ考える。
美咲はもう死んでいる。今過ごしている時間はとても幸せだと感じている、がいつまでこの時間が続くのか。このままでいいのか。もしかすると美咲は俺の妄想の産物かもしれないのでは、とよくない方へ思考が偏りかけていると
「そろそろ行こうか、優くん。」
と、美咲が促すのに少し違和感があったが
「あ、ああ。そうだな。」
最後に、美咲の先祖様、もう少し美咲を預からせていただきます。と心の中で唱えておいた。
その後はすぐに家へ帰りだらだらと二人でいつものように過ごした。
ある日俺はふと思った。美咲はなぜ成仏しないのか?と。
別に美咲に成仏して欲しいわけではない。が、やはりこのままでいいわけがない。抵抗はあるが、聞いてみないことには始まらない。
「美咲、突然なんだけど。いいか?」
「どうしたの?優くん」
「なんでお前はまだ成仏していないんだ?」
「そうだねえ。私は未練というよりも用事があって来たって残ってる感じと言えばいいかな。」
「用事ってなんだ?はっきり言ってくれないとわからないよ。」
「今はまだ時期尚早ってやつだね。もう少ししたら分かるよ。」
そうだねえ。私は未練というよりも用事があって来たって残ってる感じと言えばいいかな。」
「用事ってなんだ?はっきり言ってくれないとわからないよ。」
「今はまだ時期尚早ってやつだね。もう少ししたら分かるよ。」
「そうか。」
もう少ししたら、美咲はいなくなってしまうということなのか?俺が思っているより、美咲がいる時間は少ないかもしれない。
しかし、用事というのも気になるがあまり詮索するのは無粋というものだろう。
今は、この時間が続く限り彼女を幸せにしよう。そう思うだけに留めた。
それにしても最近あの幻聴らしきものが大きくなって来ている気がする。稀に少しだけ聞き取れる時がある。幽霊と長い時間を過ごすことで起こっているのだろうか?そうとしか、考えられない。が二人の時間に比べれば些末時と割り切り日々を重ねて行く。
俺は夢を見た。体は動かない。ただ、天井をずっと見ている。誰かの声がする。聞き覚えのある、聞いていると落ち着く声。俺は耳を傾けようとして目が覚めた。
なんの夢だったんだろう。何か、大事なことが詰まっているような、そんな夢だった。
「おはよう、美咲。」
「お、最近は朝が早いみたいだねえ優くん。」
「ああ、不思議な夢を見るんだ。その日は目が冴えて起きてしまう。」
「そっか。うん。」
 美咲は少し寂しそうにそして、優しい笑顔で言った
「そろそろ起きなきゃだね。」
 
「うん?俺はもう起きてるぞ?大丈夫か?」
「もう薄々気付いてるかと思ってたけど、ほんとに鈍感さんだなあ。優くんは。」
美咲はいつものように困った顔で笑う。
「はっきり説明してくれよ。どういうことなんだ?」
「そうだね。じゃあ目を閉じて。ゆっくり、ゆっくり暗闇の中から光を一筋。見つけ出して。それからその光を振り返らず一直線に追いかけて。」
「どうしたんだよ急に。わけがわからないよ。」
「いいから早く。彼女の言うことを彼氏は聞くものだよ。」
美咲は今にも泣き出しそうな顔で無理矢理笑顔を作っている。そんな顔をしていた。
「わかった。やるよ。だからそんな顔しないでくれよ。なんだか一生の別れみたいじゃないか。」
そう言いながらも俺は目を瞑り美咲の言ったように暗闇の中から光を探すイメージ。そして、光へ意識がどんどん吸い込ませて行く。そして、意識が消えそうな寸前。
「さよなら。優くん。ありがとう。」
唇に柔らかい感触と美咲の震える声が鼓膜を震えさせる。
「ーー美咲!」
俺は手を一気に伸ばしたが空を掴んだだけだった。
「高野さんが目を覚ましました!」
あれ、ここはどこだ?天井に見覚えがあるような、ないような。
ナースが走り回っている。
何か言っているがよく聞こえない。
何か、長い、長い、夢を見ていたようなそんな感覚がする。思い出せそうなのに靄がかかっていて記憶の端を掴むことができない。
ぼやけた目の片隅で困ったように笑う薄い影を見たような気がした。
その後、俺は今まで自分が昏睡状態にあったことを知った。
そして、そのとき幼馴染の美咲が亡くなったということも。前までの俺ならショックで生きる気力を失っていただろう。
こんな世界で生きていけない、と。
でも、なぜか一度経験したような気もする。支えてくれる誰かがいる気がする。
今なら失敗したリアルが充実するからもしれない。
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