クロス・アート・ファンタジア
21.無情と書いてリアル
月が照す夜。
男が一人夜道に立っていた。
「うーん、歯応えがありませんねぇ……」
足元には数人のファイターたちが倒れている。
「きさ……ま……」
「お、意識あったんですねぇ。じゃ、さようなら」
「つーー」
唯一意識のあったファイターが壁に叩きつけられた。そして意識を失う。
月明かりが男の持っていた刀を照した。
「手掛かりは未だなし……か」
刀から青い炎が吹き出す。
炎が禍々しく辺りを青に染めた。
「まぁ……地道にやっていくしか無さそうですねぇ」
夜風が男の赤髪を靡かせる。
男は青い炎の刀を片手に夜道を歩いていった。
-これはちょっとした余興。パーティーの前夜祭-
理想と現実の大きなギャップに悩まされた者は溢れるほどいるはずだ。そして朔也もその一人であった。
ーーどうして!?どうして!?俺はこんな所にいるんだ!?
「うぉぉぉぉ!」
「うるせぇ!」
「すいませんっ!」
朔也はギルドの倉庫の中で咆哮していた。
ーー待って!ギルドに入った途端、倉庫の掃除させられるって何よ!?
ギルドに自分の名前を登録したあと、早速討伐依頼を受けようとした朔也に課せられた依頼。それがギルドの倉庫の掃除だった。
他にも数人が掃除にあたっていたが倉庫が広すぎて徹夜しても終わりそうになかった。
「なんでファイターになったのに掃除してだよぉぉ!」
「うるせぇ。新人が文句言うな」
「うわぁ、ブラック・オブ・ブラック」
「黙らっしゃい」
ーーくそぉ……
「というか新人。お前一人で依頼を受けられると思ってたのか?」
倉庫内で掃除をしていた一人が放った唐突な発言にビクッとする朔也。
「え?違うの?」
大きなため息が聞こえた。
「そんなわけないだろ……。入ってきたばっかの新人一人に仕事を任せるバカが何処にいるってんだよ」
「えぇ、でも緑山の島のアカデミーは全国トップの実力なのに?」
「お前らは明らかに実践経験が足らん。若さを持つうちはずっと突きつけられる課題だ、経験不足は」
「まぁ、そんなの勢いでどうにか……」
「そんなんだと死ぬぞ。根性論で解決出来んのはアニメやマンガの主人公くらいだ」
「………………(俺だって主人公なのに)」
「ま、例えお前が優秀だったとしても少しの間は前線には出ないことだな」
「どうして?」
「そんなもん、面子とかプライドとかあるだろ?新人にそういうの潰された日には堪らんもんよ」
「ふーん」
「まぁ、出る杭は打たれるってことだ」
数日後。
朔也はギルドからの召集を受けた。
ギルドホールへ行くと他のギルドメンバーも集まっている。百人くらいだろうか。
ーー集会か?
「えー、我がギルドメンバーの諸君」
掠れた低い声がマイクを通してホールに響く。
「ギルドマスターの川上だ」
ーー意外と普通の名前だな
「最近辻斬りの犯行が横行している!」
川上の言葉にざわつく一同。
ーー……あの辻斬り?
「そこでギルド律賀之衆から緑山の島の各ギルドに担当地区のパトロールの依頼が入った。分担表を後で配って貰う。それを確認してパトロールにあたるように」
ーーあの辻斬りが……
「一同心してかかれ!もし、辻斬りと遭遇した時は、自分と相手の力量の差を判断して行動するように!必ずSリストを捕らえるのだ!」
そして夜になりパトロール班が出掛けた。
朔也はもしもの時の待機班としてギルドに残っていた。
「寮に帰りてぇ」
朔也がそう呟く。
「今日はみんな徹夜だ。文句言うな」
倉庫内で話していた男が朔也にそう言った。
「そういや名前が分からねぇや。俺は関口朔也。あんたは?」
「黒金 修だ」
「なぁ、黒金ーー」
「さんをつけろ。俺のほうが先輩だ」
「……黒金さん」
「なんだ?」
「俺、辻斬りと戦ったことがあるんだ」
「なんだ、自慢話か?」
「いや、違うって。あの時あいつ鬼みたいに強くて」
「それで?」
「いくらこのギルドに強い人がいたとしても勝てる見込みが……」
「俺だって勝てるだなんて微塵にも思ってない」
「え?」
「相手は最高警戒水準Sリストだ。本来なら中央からファイターが来るのが普通。しかし俺たちにパトロールを任せているのは、もしも遭遇したときは周辺住民の逃げる時間を稼いでくれと言われているようにしか思えないな」
「……なるほどなぁ」
「少なくとも、中央から人を寄越せない何かが起こっているに違いない」
夜が明けた。
「よし、黒金たちご苦労だった。今日はゆっくり休んでくれ」
ギルドマスター川上からそう言われ、待機班は各々の所へ帰る。
朔也はギルドの寮に帰ってきた。
「あぁ、づがれだ!」
そう言って布団に倒れこんだ。
中央エルタニア地方。
国の中枢“総議会”に名を連ねるギルドの長が集まっていた。
円卓の前に座る九人の猛者。
その中の一人、工藤智久が司会をしていた。
「えー今回皆さんに集まってもらったのはーー」
「“ヤツ”のことですね?」
「えぇ、そうなんです」
円卓の中央にある機械から映像が映し出される。
「北のベルセント地方に突如現れ移動し続けている怪物。人の姿をし、スペルを喰らう。コードネームは
“イーザス”」
映像には狂喜の笑みを浮かべながら跳躍をする少年の姿があった。
男が一人夜道に立っていた。
「うーん、歯応えがありませんねぇ……」
足元には数人のファイターたちが倒れている。
「きさ……ま……」
「お、意識あったんですねぇ。じゃ、さようなら」
「つーー」
唯一意識のあったファイターが壁に叩きつけられた。そして意識を失う。
月明かりが男の持っていた刀を照した。
「手掛かりは未だなし……か」
刀から青い炎が吹き出す。
炎が禍々しく辺りを青に染めた。
「まぁ……地道にやっていくしか無さそうですねぇ」
夜風が男の赤髪を靡かせる。
男は青い炎の刀を片手に夜道を歩いていった。
-これはちょっとした余興。パーティーの前夜祭-
理想と現実の大きなギャップに悩まされた者は溢れるほどいるはずだ。そして朔也もその一人であった。
ーーどうして!?どうして!?俺はこんな所にいるんだ!?
「うぉぉぉぉ!」
「うるせぇ!」
「すいませんっ!」
朔也はギルドの倉庫の中で咆哮していた。
ーー待って!ギルドに入った途端、倉庫の掃除させられるって何よ!?
ギルドに自分の名前を登録したあと、早速討伐依頼を受けようとした朔也に課せられた依頼。それがギルドの倉庫の掃除だった。
他にも数人が掃除にあたっていたが倉庫が広すぎて徹夜しても終わりそうになかった。
「なんでファイターになったのに掃除してだよぉぉ!」
「うるせぇ。新人が文句言うな」
「うわぁ、ブラック・オブ・ブラック」
「黙らっしゃい」
ーーくそぉ……
「というか新人。お前一人で依頼を受けられると思ってたのか?」
倉庫内で掃除をしていた一人が放った唐突な発言にビクッとする朔也。
「え?違うの?」
大きなため息が聞こえた。
「そんなわけないだろ……。入ってきたばっかの新人一人に仕事を任せるバカが何処にいるってんだよ」
「えぇ、でも緑山の島のアカデミーは全国トップの実力なのに?」
「お前らは明らかに実践経験が足らん。若さを持つうちはずっと突きつけられる課題だ、経験不足は」
「まぁ、そんなの勢いでどうにか……」
「そんなんだと死ぬぞ。根性論で解決出来んのはアニメやマンガの主人公くらいだ」
「………………(俺だって主人公なのに)」
「ま、例えお前が優秀だったとしても少しの間は前線には出ないことだな」
「どうして?」
「そんなもん、面子とかプライドとかあるだろ?新人にそういうの潰された日には堪らんもんよ」
「ふーん」
「まぁ、出る杭は打たれるってことだ」
数日後。
朔也はギルドからの召集を受けた。
ギルドホールへ行くと他のギルドメンバーも集まっている。百人くらいだろうか。
ーー集会か?
「えー、我がギルドメンバーの諸君」
掠れた低い声がマイクを通してホールに響く。
「ギルドマスターの川上だ」
ーー意外と普通の名前だな
「最近辻斬りの犯行が横行している!」
川上の言葉にざわつく一同。
ーー……あの辻斬り?
「そこでギルド律賀之衆から緑山の島の各ギルドに担当地区のパトロールの依頼が入った。分担表を後で配って貰う。それを確認してパトロールにあたるように」
ーーあの辻斬りが……
「一同心してかかれ!もし、辻斬りと遭遇した時は、自分と相手の力量の差を判断して行動するように!必ずSリストを捕らえるのだ!」
そして夜になりパトロール班が出掛けた。
朔也はもしもの時の待機班としてギルドに残っていた。
「寮に帰りてぇ」
朔也がそう呟く。
「今日はみんな徹夜だ。文句言うな」
倉庫内で話していた男が朔也にそう言った。
「そういや名前が分からねぇや。俺は関口朔也。あんたは?」
「黒金 修だ」
「なぁ、黒金ーー」
「さんをつけろ。俺のほうが先輩だ」
「……黒金さん」
「なんだ?」
「俺、辻斬りと戦ったことがあるんだ」
「なんだ、自慢話か?」
「いや、違うって。あの時あいつ鬼みたいに強くて」
「それで?」
「いくらこのギルドに強い人がいたとしても勝てる見込みが……」
「俺だって勝てるだなんて微塵にも思ってない」
「え?」
「相手は最高警戒水準Sリストだ。本来なら中央からファイターが来るのが普通。しかし俺たちにパトロールを任せているのは、もしも遭遇したときは周辺住民の逃げる時間を稼いでくれと言われているようにしか思えないな」
「……なるほどなぁ」
「少なくとも、中央から人を寄越せない何かが起こっているに違いない」
夜が明けた。
「よし、黒金たちご苦労だった。今日はゆっくり休んでくれ」
ギルドマスター川上からそう言われ、待機班は各々の所へ帰る。
朔也はギルドの寮に帰ってきた。
「あぁ、づがれだ!」
そう言って布団に倒れこんだ。
中央エルタニア地方。
国の中枢“総議会”に名を連ねるギルドの長が集まっていた。
円卓の前に座る九人の猛者。
その中の一人、工藤智久が司会をしていた。
「えー今回皆さんに集まってもらったのはーー」
「“ヤツ”のことですね?」
「えぇ、そうなんです」
円卓の中央にある機械から映像が映し出される。
「北のベルセント地方に突如現れ移動し続けている怪物。人の姿をし、スペルを喰らう。コードネームは
“イーザス”」
映像には狂喜の笑みを浮かべながら跳躍をする少年の姿があった。
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