クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

14.お前すらいないんだ

 観戦室にて。

「工藤智久に神崎斗志希としきだと!!!」

 観戦室にいた生徒たちは二人の突然の登場に大騒ぎしていた。
 瞳への激励を終え観戦室に戻ってきた朔也はその騒ぎに唖然としていた。 

「な、なぁ長門。何があったの?」
「あぁ、モニター見ろ」
「モニター?」

 そこには智久と瞳を支えている斗志希がいる。 

「あ、智久さん!……と誰?」
「お前、神崎さんを知らないとか言わないよな」
「言います」

 長門が大きくため息をついた。

「いいか、工藤智久・神崎斗志希・眞上功清まがみ こうせい。この三人はこの国で三本の指に入るファイター。通称三英傑だ」
「え?智久さん、そんなすごい人だったの?」
「全くこれだから授業聞いてない奴は……」



 瞳たちは保健室へと運ばれた。
 監視カメラの方へ向く斗志希。

「よし、アカデミーのちびっこ共!俺らが見といてやるから派手にトーナメント暴れて来いや!」



 観戦室で沸き上がる歓声。

「みんなお祭りになってるなぁ」 

 観戦室から出ていく光の姿が朔也の目に映った。

「お前たち。今から昼休みをとる。昼食は各自済ませるように」

 担任の佐藤の指示が入る。

「なぁ、昼飯どうする?」
「やっぱりカレーじゃね?」
「焼き肉やろうぜ!」
「ばっ、それはねぇだろ笑笑」

 と、いった雑談が聞こえてくる。

ーー光、どうしたんだろ?

 朔也にふとそんな考えが頭をよぎった。



 朔也は校庭に駆けていった。
 校庭の真ん中には光がたっている。

「光!」

 振り返った光。

「飯、食わねぇのかよ?」
「お前は……呑気でいいな……」
「どういう意味だよ!?」
「この試戦は今までの試戦とはわけが違う。大手ギルドのマスターたちが直接か或いは録画されたものを通じて新卒のファイターたちの素質を計ろうとしている。俺たちの将来はこの試戦に大きくのし掛かっている……」
「だからなんだってんだよ。将来がかかってるからなんだってんだよ!?」
「お前らみたいな友達ごっこはうんざりなんだよ!」
「ごっこじゃねぇ!!!」

 朔也が光の胸ぐらを掴む。物凄い剣幕で光を睨み付けた。

「今まで一緒に闘ってきた仲間だろ!」
「だからぁ、それがごっこだって言ってんだろ」
「なんだと……!」

 朔也が光を殴ろうとした。しかし、その拳は光に止められる。

「やめとけ、やめとけ」

 朔也の手を振りほどいてその場を去ろうとする光。

「待て!」

 光は何も言わず立ち止まった。

「光、お前は……お前には負けねぇ!」
「……………………」
「絶対トーナメントでお前をぶっ飛ばす!」

 その言葉が言い終わるや否や光は校舎へ戻っていった。
 光の顔には憎悪や怒りがにじんでいる。

ーー黙れ、ぶっ殺すぞ……。寝言は寝て言え、木偶の坊でくのぼう……!



      -お前すらいないんだ-



 保健室。

「はっ!」

 気絶していた瞳は急に起きた。

「はっ!ここは!」
「なんで“はっ!”を二回言うんだよ」
「大事なことなので……」

 ベットのカーテン一枚を挟んで大地の声がした。

「ここは保健室だ。あんまり大声で叫ぶんじゃねぇ」
「あっ、ごめん」

 気まずい沈黙が流れる。

「なぁ」
「ひゃい!」
「挙動不審か……」
「いゃぁ、なんかこういうシチュエーション初めてなもんで……」
「何を期待してるんだ。お前トーナメント控えてるだろ?飯食ってきたらどうだ?」
「はっ!そうだね!ありがと!」

 瞳は保健室を出ていった。

「……ふぅ、これでゆっくり寝れるや」 


 
 昼休みが終わり、午後の部決勝トーナメントが始まる。
「みんな揃っているな。それではトーナメントを発表する」

     優 勝
  ┏━━━┻━━━┓
 ┏┻━┓   ┏━┻━┓
 ┃ ┏┻┓ ┏┻┓ ┏┻┓
 長 瞳 宮 明 朔 光 浅
 門   川 日 也   間
       美    

ーー明日美に勝てば光と当たる!
ーー朔也、二回戦で消してやるよ……
ーーどどどうしよう!宮川が相手だなんて!
ーー初戦は朔也さんですか……
ーー凪白に来て欲しいところだな。あのつむじ風を攻略してぇ
 
 一人一人が様々な思いを抱え相対する。
 運命の最終戦、決勝トーナメント開幕。

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