クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

11.最終試戦開幕

 アカデミー地下施設。
 ダンジョンのような迷路が二つ。

「最終試戦の予選会場だ」

 担任の佐藤が説明を始める。 

「クラス31人中、柊長門を抜いた三十人を六組に分けた。一組五人で迷路の中に入ってもらう」
「それで予選の内容はなんですか?」

 生徒から質問が入る。

「迷路の中で生き残りをかけたサバイバル戦だ。迷路の中で戦ってもらい、五人から最後の一人になるまで続ける。制限時間は30分。制限時間を越えたとき二人以上残っていれば全員失格とする。そして六組から一人ずつ抽出し、シードの長門を含めたトーナメント戦を行う」

 生徒たちは観戦室に入れられた。

「ここで他のものたちの戦いを観戦出来る。それではさっそく一組と四組は迷路の中に入れ」



   -最終試戦予選、第一組・四組開始-



 第一組は五分も経たずに終了する。
 光の圧倒的なスピードに対応出来ず後の四人は呆気なく倒されてしまった。
 観戦室で見ていた朔也たちは驚愕の表情を浮かべている。

「マジ……かよ……」
「光、今日はなんか……恐い……」
 


 第四組は時間ギリギリまで戦いが続き最終的に浅間という男の勝利に終わった。
 


       -第二組・五組開始-



 第二組。

「よし、行くか!」

 朔也が威勢のいい声をあげる。

ーーと言ってもこんな広い迷路のなかでどうすりゃいいのやら……
「あぴゃあ!」

 急に朔也に蹴りが迫った。 
 朔也は間一髪でかわす。

「あぶねぇ!」

 男が地面に着地する。

「朔也、倒させてもらうぜぇ」
粉島こじま!」

 海パンだけ履いている男がそこにいた。

「朔也ぁ、スペルをようやく手にしたらしいなぁ……。だが……そんなの関係ねぇ!」

 粉島がさらに蹴りをいれてくる。
 朔也は腕でその攻撃を受け止めた。

「燃やしてやらぁ!」

 スペルを使おうとするが。

ーーあれ?スペルが反応しない?
「言ったはずだぁ、朔也」 

 全てを見透かしているような笑みを浮かべる粉島。
「そんなの関係ねぇ!」

 粉島の拳が朔也に刺さる。

「ぐっ!」
ーーまさか粉島のスペルは……他人のスペルの使用を封じるのか!?

 粉島の腕が白い光に染まる。

ーーしまっ!
「エネルギーパンチ!」

 粉島の攻撃をもろに受けた朔也。
 数メートル飛ばされ地面に打ち付けられる。

「っ……はぁっ……」
ーー魔力操術は……

 朔也の腕に白い血管状の模様が浮かび上がる。

ーー使えるな……
「さぁ、朔也ぁ!互いの拳で語ろうじゃないかぁ!」
 刹那、朔也の拳が粉島に刺さった。

ーー!?、?
「勝手なこと言ってんじゃねぇ!」
「ぐばぁっ!」

 数メートル飛ばされた小島は壁に打ち付けられた。

「はぁっ、はぁっ」

 肩で息をしている朔也。
 倒れた粉島はピクリとも動かない。

ーーなんだ、一発KOかよ……



 第二組。
 朔也とは違うところでも戦闘が勃発していた。

「藍染……」
「これほどとは……」

 俊の前に二人の男が倒れていった。

「残念だったな。……あとは朔也と小島か」

 時計を確認する。
 残り時間は八分ほどだった。 

「急ぐか……」



 第五組。
 勝ち抜いたのは宮川という男だった。

「さあ、早く決勝トーナメントに来い、俊!」

 宮川はそう叫んだ。

 

 第二組。
 残り時間五分。
 ついに朔也と俊は対峙することとなった。

「よぉ、俊」
「朔也、残り五分だ。早々に決着をつけさせてもらう」
「いやいや、楽しもうぜ」

 朔也の右腕から炎が噴き出す。
 お札を構える俊。

「「いざ!」」

 勢いよく放たれた炎。
 俊の結界がそれを防ぐ。
 朔也が跳んだ。
 結界を飛び越え炎を放つ。
 しかしそれも結界が受け止めた。
 朔也の左腕に白い血管状の模様が浮かび上がる。

「スマッシュ!」

 拳が結界を砕いた。

「なっ!」

 驚愕の表情を浮かべる俊。
 間髪入れず朔也は俊に拳を放った。
 咄嗟に出された結界をも砕き俊に直撃する。

「おらぁ!」

 数メートル飛ばされ床に打ち付けられる俊。

「どうだ……てめぇの結界なんざすぐに砕けるんだよ」

 得意気な顔をする朔也。

「へぇ……」

 俊は不適な笑みを浮かべた。
  


 観戦室にて。

「長門、この戦いどう見る?」

 宮川が長門に訊ねた。

「まぁ……朔也次第だな。あいつの魔力、この戦いが終わるまでに切れるか、切れないか」
「俊に打つ手はないというのか?」
「いや、あるだろ。あいつは頭いいからな。だが……あいつには勝てねぇよ。なぜならーー」
 


 バキィ。
 結界を砕く音が響く。
 結界は壊されては張られるのを繰り返していた。

ーーキリがねぇ!
ーーお前の体力が切れたとき、それがお前の負けだ!

 俊は朔也と一定の距離を保ちつつ結界を張って朔也の攻撃を防いでいる。  

ーーこのままだと俺の負けだ……。俊の結界は低魔力で作れる。くそっ時間もねぇ!

 その時、俊は自分の愚策に気づく。

ーーしかし、朔也の体力が切れる前に時間切れもダメだ。まだ勝ってはいなかった。何を浮かれているんだ、俺は!

 残り時間三分。
 結界一枚を隔てて二人は対峙している。

ーーどうする……?俺が俊に勝つ方法。あの結界を砕いてから攻撃するには時間がない……
ーー炎に俺の攻撃が阻まれるのは確実……どうしたらいい?

 沈黙の格闘。そこに言葉も動きもなくとも二人はその意識のなかで互いの拳を交えていた。そんな時、脳内を駆ける閃き。

ーーこれしか……ないな……

 俊の両腕が白い光に染まった。
 朔也は左腕から炎を噴き出させている。

ーー時間はもうない。これしかないんだ!

 俊が朔也に向かって駆ける。
 放たれる炎。
 結界がそれを防いだ。

ーーこれで!

 炎が晴れる。
 結界を消す俊。
 しかしそこに朔也の姿はなかった。

ーー!!!?
「上だ、俊!」
ーー上だと……

 俊が上を向こうとしたその時、横から強い衝撃を受けた。
 その衝撃で壁に打ち付けられる俊。

ーー何が……あっ……た…… 

 俊は力なく地に伏した。
ーーあっぶねぇー。一か八かの賭け成功……
 第二組、残り十二秒で関口朔也、勝利。

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