クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

07.乱入

 修行の塔、五階。
 光と俊を迎え撃つギガントゴーレム。

「俊は後方支援を……。俺が近接戦に持ち込もう」
「了解」

 俊はお札のような物を取り出す。
スペル:結界
 光は脚に電気を纏った。
スペル:電気
 ギガントゴーレムが腕を上げた。 

――強度だけ確認しておこうか

 降り下ろされる腕。
 俊が結界を張り受け止めた。

――耐えられるようだな

 光は閃光の如き速さで走っていく。
 ゴーレムの懐に入り込み――。
 空気を切り裂くような跳躍。
 腕が仄かに白く染まる。

――エネルギーパンチ!

 ゴーレムにアッパーをかました。
 しかし、ゴーレムにほとんどダメージはない。

――ちっ!

 落下していく光を結界が受け止めた。
 そこに腕を降り下ろすゴーレム。
 光は素早く避けた。
 行く先々に張られた結界を蹴り空中を飛び回る。
 ゴーレムはその姿を全く追えていない。

――しかし、まぁ……
――決定打に欠けているな……

 隙を見てゴーレムに攻撃をするが全く効いていない。

――どうしたら正解だ?
――決定打を……

 脚に纏っていた電気をなくす光。

「俊、防御しとけよ!」

 結界を蹴りゴーレムの正面に跳んだ。
 量腕を振り上げる。
 そして電気を纏った。

「無差別放電!」

 量腕を降り下ろすと同時に雷撃が辺りを襲った。
 ゴーレムにも直撃している。

――どうだ?

 落ちていく光を受け止める結界。

「光!大丈夫か!?」
「あぁ!」

 ゴーレムは多少表面に焦げたような痕があるくらいでダメージは大きく無さそうだった。

「これでも効かないのか」
「打つ手がないな……」

 そんなことを言っている最中――。
 ゴーレムの拳が光を狙う。

――くそっ!
「坊ーや、よい子だ、寝んねしな♪」
――えっ?

 いつの間にかゴーレムは細切れになっていた。
 光と俊の体中に戦慄が走る。
 光たちの頭上に藍色の浴衣を着た赤髪の男がいた。右手には薄紫の刀が握られている。

「そんなに怯えた目をしないでください、少年たち」
「何者だ?」

 俊が戦闘体制をとる。
 男は不気味な笑みを浮かべていた。

 四階に到達した朔也と大地は右半身が氷付けになった長門を発見した。

「なっ、長門!」
「……んぁ?関口と木島か……」

 朔也たちはすぐに長門に駆け寄る。

「とりあえず解かすぞ」

 朔也が炎で氷を解かす。 

「何があったんだ?」
「俺がそこの泥人形バラバラにしただけだ」

 長門が指差した先にはバラバラになったギガントゴーレムが散らばっている。

「その反動か……」
「そういうことだ。朔也、礼を言うぜ」

 小さな石が朔也の肩に落ちた。

「ん?」
「どうした?朔也」
「なんか上から肩に石が落ちて……」
「上から?」

 長門と大地は天井を見上げる。
 天井にはある点から亀裂が放射状に走っていた。

「過去の誰かが派手にやったんだろ」

 亀裂が大きくなった。

――ギガントゴーレムでも暴れてるのか?

 何かが地面に打ち付けられた。

――!!

 光と俊だった。
 天井には人が落ちるには十分な穴が空いていた。

「いやー、ここの床は脆いですねぇ」

 三人に戦慄が走る。
 天井の穴から一人飛び降りてきた。

「おや、こんな所にも人がいましたか……」
「てめぇ……何者だ……」
「辻斬り……と言えばお分かりになるでしょうか?」

 男は不気味に微笑む。 

「朔也、大地……」
「なんだ?」
「死ぬ気で……殺れ……!」

 長門が巨大な氷山を辻斬りに向けて出す。
 しかし、氷は一瞬にして細切れに。

――!!!
「氷結のスペルですか……」

 辻斬りの刀が長門を襲う。
 刀が止まった。

――土石系のスペルでしょうか……

 長門の前に岩の壁が現れたのだ。

「サンキュー、パパ」
「ったく、世話のやけるやつらだ」

 辻斬りを炎が襲う。
 跳躍でかわす辻斬り。

――今度は火炎系……

 辻斬りは三人と少し距離をとった。

「朔也、木島。俺はあまり魔力が残ってねぇ」
「大丈夫。朔也と俺でやっとく」
「行くぜ!」

 朔也が構えた。右手から右腕全体に炎を回す。

――こいつ!一ヶ月でそこまで!
「最大火力!!」

 右腕を勢いよく前に出す。
 辻斬りに大火炎が迫る。
 辻斬りは跳躍でかわした。

「上だ!」

 長門が叫ぶと同時に木島は岩の塊を作る。

「おらぁ!」

 投げられる岩。 

 しかし、一刀両断される。

「無駄なことはやめ――」
「エネルギーパンチ!!」

 朔也の拳が迫っていた。

――いつの間に!?

 拳は胸に直撃し、辻斬りは壁に打ち付けられる。

「よし!」

 うまく着地する朔也。

「火のスペルの君……。それエネルギーパンチかい?」
「どういう意味だ?」
「その威力、腕に現れる血管の模様。それはエネルギーパンチじゃない……」
「そんなわけないだろ!確かに人となんか違うけど魔力操術だ!」
「魔力の消費大きいだろ?」

 朔也は息を飲んだ。 

「なんで分かるんだよ……?」
「やはりか……」
――やべっ!
「少年、それは君の思うエネルギーパンチではない」
「じゃあ、なんだってんだ?」
「それは――」

 背後からの殺気を感じる辻斬り。

――!!!

 拳が迫っていた。
 間一髪でかわす。 

「あなたは……」
「やあ」

 そこには智久がいた。

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