クロス・アート・ファンタジア

佐々木 空

02.魔力操術

 「僕の名前は工藤智久ともひさ。よろしく、朔也くん」

 二人は握手を交わした。
 智久と朔也は修行のために砂浜へと向かう。
 朔也は魔力操術の基本技。“エネルギーパンチ”の修得から開始することとなった。



「とりあえず魔力はどこを通ってるか知ってるかい?」
「魔力は神経を通ってるんでしょ?アカデミーで習ったよ」
「そう、だから魔力操術はちゃんと神経を意識しないといけない」
「と、言われてもねぇ」
「まぁ、とりあえずやってみて」

 朔也は腕に力を込める。

「あぁ、ダメダメ」
「え?」
「だから意識は神経に向けるって言ったでしょ?だから魔力はこうやって流すんだよ」
 智久は全く体を動かすことなく腕に魔力を流した。
「へぇ……」
 


 一時間、朔也はやっとの思いでエネルギーパンチの修行に入ることができた。

「え!?」
「え?」
「智久さん!?まだ、俺エネルギーパンチの修行してないの?」
「今までのは全部魔力操術の超基礎のところだよ」
「なっ……!」
「だって君が神経を意識出来てないからそこから直さないといけなかったんだ」
――なんてこった……。次の試戦までに間に合うのか?
「大丈夫、君はすぐにエネルギーパンチを使えるようになる」
「はぁ、お願いします」
「まぁ、エネルギーパンチは魔力操術の基本技だしこれが出来ないとなると厳しい」
「そんなことはわかってますよ」
「じゃあさっさと身につけてしまおうか。腕に魔力を流して」

 朔也が右腕に魔力を流す。腕が仄かに白い光に包まれてた。 

「そこから拳の先に魔力を集めるイメージ」

 言われた通りのイメージで魔力を流す朔也。

「そしてそれが拳の先から肘を目指すようにせりあがってくるイメージ」
――せりあがってくるイメージ、せりあがってくるイメージ

 白い濃い光が朔也の拳の先からせりあがってくる。

――イメージ、イメージ、イメージ、イメ――

 その時右腕に電流を流されたような痛みが走った。

「痛った!」

 思わずその場に座り込む。

「あぁ、魔力の調整を間違えたんだね」
「間違えた?」
「そう、魔力の流し方を間違えると痛い思いをする。気を取り直してもう一回やろう」

 もう一度魔力を流し込む。

「お、いい感じ。その感覚忘れないでね」

 朔也の右腕を包む光は先程よりも濃くなっていた。

「今、動かせる?」

 軽く頷く朔也。

「じゃあ僕を殴ってごらん?その魔力を維持したままだよ」

 一歩足を前に踏み出す朔也。

「お願いしますっ!」

 朔也の拳が智久を狙う。が、朔也の腕の光が消えてしまった。智久はその拳を受け止めるつもりである。

――あぁ、失敗かな?

 と、思っていた矢先。
 朔也の腕に白い血管のような模様が浮かび上がった。

――えっ!?
――勢いで押し込む!

 朔也の拳が掴まれた。

――このまま!
――まさかっ!?

 腕を押しきった朔也。その力で智久が宙に浮いた。

――あっ!
――朔也くん、ついに……

 砂浜に落ちる智久。飛ばれた距離は一メートル程度であったが確信に満ちた笑みを浮かべている。

「朔也くん!おめでとう!君のエネルギーパンチ初の成功だ!」
「えっ、おっ……しゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
「さあ、もう一度」

 両手を広げる智久。拳を握りしめる朔也。
 二人の表情は喜びを顔にみなぎらせたものだった。



 智久との修行の成果もあって見事エネルギーパンチを習得した朔也は試戦でも合格点を貰い意気揚々としていた。

「朔也ー!朔也ー!」
「ん、なぁにぃ?」

 瞳に呼ばれて朔也は振り返る。

「ちょっと!そのしまりのない顔をこっちに向けないで!」
「失礼過ぎやしない?」
「そんなことより朔也!討伐訓練行くわよ」
「えっ、もうそんな時間!」

 朔也が時計に目をやる。もうすぐ昼休みが終わりそうな時間だった。 

「やべぇ、やべぇ!」



 「えー今日も討伐訓練を行うがこれを訓練だと思わずに本番のつもりで行い――」

 担任の佐藤の事前説明を聞きながらうとうとしている朔也。その朔也の頭を瞳が叩いた。

「痛っ!」
「ちゃんと話聞いておきなさい!」
「へいへい……」

 くじ引きで朔也、瞳、光でチームを組むこととなり今回のゴブリンの群れ討伐任務にあたることとなった。

「不安でしかないのだけど」

 そう思う瞳であった。

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