魔王の息子と勇者になろう【凍結中】

決事

第一話 悪魔は空から降ってくる


「…つまり?」
「うむ、つまりだな、我は先程の精霊を追いかけていたのだが…木の精霊だったらしく
この森に向かって急降下したのだ。まあ、見ての通り我はそれを追い森に下り、今に至る」
「ほお、自分が何をしたのか把握していないようだな。森に下りた、というところまでは
正解だ。だがおれが切り倒そうとしていた木をお前が折ってしまったことが抜けているぞ、悪魔」

おれの目の前には今、悪魔が正座している。

「訂正、感謝する」

こいつの性格がつかめない。

「…おれはさっき木を伐っていたんだ」
「ほう、そうだったのか?」
「そうだったのか、じゃない!今日は街に売りに行こうと思っていたんだ!
折れちゃったぞ!どうしてくれるんだ!」
「それはすまなかった」
「いや、謝罪はいいから金をくれ。…というか、そんな胸を張って言われてもな!」

なんだか調子が狂う奴だな。

「金貨が欲しいのか?」
「うん?金貨でも何だっていいさ。本が買える金額があれば。
見れば分かると思うが此処には娯楽、楽しみ、なんてものが無いんだ。
だから本を読むのがおれの唯1の楽しみなんだ」
「本?」
「月に何回か行く街で買うんだ。この森の中に書店があると思うか?」
「いや、そうではなくて。
本、それはあの、情報をカミというものにまとめてある薄いものか?」
「…お前、箱入り息子なのか」
「ん?箱入り…何だ?身分が上の者かと問うているのか?それならば2番目だな。
何せ序列1位である魔王の息子だ」
「いやそうか、逆に悪魔が人の文化にくわしかっ…は?」

何か変な言葉が聞こえた気がした。
たっぷり20秒は沈黙してしまう。
魔王に息子がいるなんて人の世界にとって悪夢でしかない。

「どうした?人も魔王の息子に驚くのか?まあそれもそうだな。父に妻がいるとは誰も
思わんからな」
 

 
空から降ってきたのは悪魔で、さらにその悪魔は魔王の息子だった。

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