華のJK1なんだが受験に失敗したので高校に行くのが極めて憂鬱である

霧雨 蘭

小学生

従業員用の小さいお風呂も一応あることにはある。が、お客さんの食事時間の間は誰もいないので掃除前であれば使えると行った具合だ。

「そろそろ行っても大丈夫かなぁ」

私の場合は他の客に紛れて一緒に入っていても問題はないのだがやはり誰もいない大浴場を独り占めするというのも中々気分が高揚するものだ。

玄関から大浴場へ伸びる長い廊下に出る。

??「あら、蘭ちゃん。お風呂かしらー?」

霧雨「あ、凛さん」

仲居の宮森 凛和(ミヤモリ リンナ)さんだ。
この宿で一番のベテラン仲居さんである。
theベテラン仲居さん.....というわけでもなくすらっと背が高くてスレンダーだ。
私のベテラン仲居さんのイメージについては触れないでおく。

いつもその長い足をみて羨ましく思う。客観的にみても結構可愛い、というより美しいだろうか。細く整った顔立ちで目尻にほんのりと見えるしわが優しく親しみやすい雰囲気を醸し出している。

ここだけの話、結構男性客の評判が良いらしく凛さん目当てに通う客もいる、らしい。

ばあの古い友人で私が生まれる前からここで働いている。

がとてもそんな歳には見えないから凄い。

私の一番古い記憶にも存在しているし親しみもある。

それに.....

凛さん「間違っても男子風呂に入るんやないで〜」

霧雨「何年ここ通っとるおもてんねやー。まず間違えんしそんな趣味あらへんわ」

凛さん「あっははー!まだ時間あるからゆっくりしてきいー。」

霧雨「はいはい」

こうやっていつもくだらない冗談を言って私の心を晴らしてくれる。
凛さんとは不思議と距離感というものがない。
気が置けない、というやつだろうか。凛さんと話す度に友達とはこんなものかとよく妄想してしまう。

とはいえ凛さんは住み込みの仲居さんで朝から晩まで忙しい。
こうして客が行き交う旅館の中でばったり出会った時くらいしか話す機会はない。

「あんまり長い間一緒にいたらそれはそれで気を使うようになっちゃうんかな」

今私が一番自然に話せている相手は恐らく凛さんくらいか?
けれど今のちょうど良い間柄が崩れることを恐れて中々もっと話したいとも思えない。

長い廊下を歩き終えて大浴場にたどり着く。

一応女子風呂なことを確認して浴場に入る。

脱衣所の棚の前に立って、着ているだけで息苦しくて首の絞まる制服を脱ぐ。

つかれた...

ふと脱衣所にある大きな鏡が目に入る。

......この大きな鏡、必要あるのかなぁ.....

姿見をそのまま大きく引き伸ばしたような壁鏡の奥に私の身体が見える。

凛さんのモデル体型を思い出して気分が沈む。

そっと胸を撫でる

「うぅ、む」

高校生になってもぺったんこなこの胸はのびしろもなさそうだ。

寸胴....というわけでもないが、幼児体型と言うと分かりやすいのだろうか。

長い脚も残念だが生えていないし背も伸びそうにない。

凛さんによく「いつ迄経っても蘭ちゃんは小学生で羨ましいわぁ」なんて言われる。

正直嬉しくはない。

なんて自己分析をしてさらに自分を傷つける。

まぁ余計な肉がついていなくて細身なことが取り柄だろうか。

うーむ。もう身体の話はやめよう。

スマホのバイブが棚と共振して唸りを上げる。

画面を除くと『机のセッティングバッチリ完了したで』とLIMEの通知が入っている。

気づくと大きなあくびをしている自分。

「さっき寝たはずなんだけどなー」

今日のお風呂はささっと済ませて早く寝ようか。

凛さんにゆっくりしろって言われたのになぁ

自分の鍵付きのロッカーから風呂道具と少しの罪悪感を取り出して風呂場に入る。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品