華のJK1なんだが受験に失敗したので高校に行くのが極めて憂鬱である

霧雨 蘭

憂鬱

少し到着が早すぎた。
高台のベンチから見下ろす港には自衛隊の護衛艦と米軍の空母。今の私とはこれっぽっちも比較にならないほど勇ましく漂っている。

あそこの中で言うなれば、私は海に半身を沈めた潜水艦だろうか。
いやしかし、そんな立派な存在でもないであろう私は海に浮かぶビニール袋同然だろう。
港の綺麗な海面は朝日を反射し、陰った私の心を鬱陶しいくらいに明るく照らす。
「ビニール袋なんて浮いてもいなさそうだな」
たったひとつの軍港、艦数隻を見ただけで世界の縮図を見たような気になる。
桜の花びらを伴った春の生暖かい風が私の緩く編んだ銀髪を揺らす。
あぁ、憂鬱だ。

この春から高校で新生活を迎える、15歳の女子高生、所謂JKが、憂鬱なのである。

単刀直入に言えば理由は明確かつ主に受験に失敗したこと。

私立の第一志望とおさえの公立高校。

行きたくもない私立校に高いお金を払ってまで通うことが嫌という貧乏人の根性で所謂滑り止めに公立の学校を受けた。が、結果はどちらも失敗。

二度受験に失敗した私に明るい新生活など待っているはずもないのだ。
しかし、例えば成功しても新生活は明るいものかといえば、なんとも怪しいものでもあった。

きっと憂鬱なのはなにも受験の失敗だけに限ったことではないのであろう。ただ自分が憂鬱な事を隠し切れずにいてもなお、見て見ぬフリをし続けている、そんな私を憂鬱にさせる何かが確実に私の心の中に根を張っている。

そんな気がする。

なんて考え事をして立ち止まっていても時間は決して共に立ち止まってはくれない。

入学式当日に遅刻して悪目立ちなんてしたら最悪だ。

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