君を失った世界
NEWWORLD
なんだろう。長い夢を見ていた。ふと気がつくと目に数粒の涙が浮かんでいた。
まただ。また、あの夢を見たのだ。繰り返したくもない夢。
本当だったら忘れてしまいたい。けれど忘れてしまえば両親のことも忘れてしまうのだろうか……。
涙を拭い、スリッパを履いて廊下に出る。夜の病院は少し怖い。けれどきっとそれはテレビで見たからなのだ。見なければ分からないものなのだ。
そして、それに打ち勝つ美しさがある。この病院はとても大きく、一方は賑やかな街、もう一方は静かな住宅街が窓から見える。夜になると営みの電気が付き、人口の星が見える。
素晴らしい眺めだ。そしてもう一方の窓に近づき空を見る。下に明かりが少ないのでよく星が見える。母から教えてもらったことがある。
人は死ぬと空の星になり、虹へと変わり地面につき、生まれ変わるのだと。
その後、おばからも同じ話を聞き、母も聞いたのだな、と思った。私も死ねば星になれるのだろうか。でも虹にはなりたくない。もう苦しいことは嫌だ。
ぼーっとしていると後ろからスリッパが擦れる音がする。誰かな、と思い後ろを振り向く。しかし誰もいなかった。流石に私でも怖かったのですぐに病室に戻ろうとする。すると、
「こんばんわ。ハンカチの人。」
「んにゃぁぁぁ!!!」
突然かけられた声に思わず叫ぶ。なにか、聞いたことのある声だ。
「……あ!あのハンカチを拾ってくれた……。」
「はい。そうです。」
そこにいたのは今日の昼、ハンカチを拾ってくれた人だった。
「あの……お名前……聞いても良いですか……?」
「ああ。僕は森尾翔です。あの……あなたは?」
「あ、私は天乃日香栞です。宜しくお願いします。」
知らない人に、偶然1度会っただけの人になぜ名前を……と思ったが、なにかこの人は特別な感じがした。
「なに、見てたんですか?」
彼の顔にとてもあっている笑顔で訪ねられた。
「星を見ていたんです。綺麗なんですよ。人工も、自然も。」
「へえ……あ、本当だ。良く見えるんですね。」
横顔だけでも見とれてしまうほどに美しい顔立ちに素敵な笑顔が浮かぶ。
「でしょう。私、ここと、あっちの星が好きなんです。よく寝れないときに来てて。」
「へえ!そうなんだ……僕も見に来よう。」
なんだか古い友達のような気がしてならなかった。けどこの人のことは知らない。
不思議だなぁと思いつつ私も空を見上げる。
「きれいだなぁ……」
彼が呟いた。
「あの!実はここよりもきれいに見える場所があって。実は屋上なんですけど……。」
「嘘!ほんと?!うわぁ、ここよりもきれいに見えるのかぁ……」
私だけの秘密を教えてもいいかなとおもい、ふふ、と笑顔を漏らす。
「あ、笑った。」
「へ?!」
思わず頬を赤らめ、口を抑える。
「はは、笑顔の方が似合いますよ。」
殺し文句か…と思いつつも顔を背ける。赤い顔はあまり見られたくない。
「じゃあ、そろそろ、僕、行きますね。もう少しここにいたいけど……眠たいし。」
へへ、と笑いながら言った彼に、行って欲しくないな、なんて欲を出したが心の中だけで抑えた。
「そうですね。私もそろそろ眠いので……。」
「そうですね。じゃあ……また今度!」
また今度、会えるのかと喜びつつも彼に手を振り、私も自分の部屋に戻った。
なんだか、不思議な人だった。こんなにも安心出来る人なのだと思わなかった。
「楽しくなるかな……」
と、思い、目をつぶる。
星はどんな色をしていただろうか。記憶の奥底を探る。ただたんに、今見えるような色しか分からない。
彼の髪は茶色だろうか?黒だろうか?服は水色か?不思議と色々な疑問が湧いてくる。
けれどその中で私の見えるものは決まっていた。空の中で光る星の輝きと、彼の姿だった。
いつの間にか私は疲れていたのか、深い眠りについていた。
……To be continued
まただ。また、あの夢を見たのだ。繰り返したくもない夢。
本当だったら忘れてしまいたい。けれど忘れてしまえば両親のことも忘れてしまうのだろうか……。
涙を拭い、スリッパを履いて廊下に出る。夜の病院は少し怖い。けれどきっとそれはテレビで見たからなのだ。見なければ分からないものなのだ。
そして、それに打ち勝つ美しさがある。この病院はとても大きく、一方は賑やかな街、もう一方は静かな住宅街が窓から見える。夜になると営みの電気が付き、人口の星が見える。
素晴らしい眺めだ。そしてもう一方の窓に近づき空を見る。下に明かりが少ないのでよく星が見える。母から教えてもらったことがある。
人は死ぬと空の星になり、虹へと変わり地面につき、生まれ変わるのだと。
その後、おばからも同じ話を聞き、母も聞いたのだな、と思った。私も死ねば星になれるのだろうか。でも虹にはなりたくない。もう苦しいことは嫌だ。
ぼーっとしていると後ろからスリッパが擦れる音がする。誰かな、と思い後ろを振り向く。しかし誰もいなかった。流石に私でも怖かったのですぐに病室に戻ろうとする。すると、
「こんばんわ。ハンカチの人。」
「んにゃぁぁぁ!!!」
突然かけられた声に思わず叫ぶ。なにか、聞いたことのある声だ。
「……あ!あのハンカチを拾ってくれた……。」
「はい。そうです。」
そこにいたのは今日の昼、ハンカチを拾ってくれた人だった。
「あの……お名前……聞いても良いですか……?」
「ああ。僕は森尾翔です。あの……あなたは?」
「あ、私は天乃日香栞です。宜しくお願いします。」
知らない人に、偶然1度会っただけの人になぜ名前を……と思ったが、なにかこの人は特別な感じがした。
「なに、見てたんですか?」
彼の顔にとてもあっている笑顔で訪ねられた。
「星を見ていたんです。綺麗なんですよ。人工も、自然も。」
「へえ……あ、本当だ。良く見えるんですね。」
横顔だけでも見とれてしまうほどに美しい顔立ちに素敵な笑顔が浮かぶ。
「でしょう。私、ここと、あっちの星が好きなんです。よく寝れないときに来てて。」
「へえ!そうなんだ……僕も見に来よう。」
なんだか古い友達のような気がしてならなかった。けどこの人のことは知らない。
不思議だなぁと思いつつ私も空を見上げる。
「きれいだなぁ……」
彼が呟いた。
「あの!実はここよりもきれいに見える場所があって。実は屋上なんですけど……。」
「嘘!ほんと?!うわぁ、ここよりもきれいに見えるのかぁ……」
私だけの秘密を教えてもいいかなとおもい、ふふ、と笑顔を漏らす。
「あ、笑った。」
「へ?!」
思わず頬を赤らめ、口を抑える。
「はは、笑顔の方が似合いますよ。」
殺し文句か…と思いつつも顔を背ける。赤い顔はあまり見られたくない。
「じゃあ、そろそろ、僕、行きますね。もう少しここにいたいけど……眠たいし。」
へへ、と笑いながら言った彼に、行って欲しくないな、なんて欲を出したが心の中だけで抑えた。
「そうですね。私もそろそろ眠いので……。」
「そうですね。じゃあ……また今度!」
また今度、会えるのかと喜びつつも彼に手を振り、私も自分の部屋に戻った。
なんだか、不思議な人だった。こんなにも安心出来る人なのだと思わなかった。
「楽しくなるかな……」
と、思い、目をつぶる。
星はどんな色をしていただろうか。記憶の奥底を探る。ただたんに、今見えるような色しか分からない。
彼の髪は茶色だろうか?黒だろうか?服は水色か?不思議と色々な疑問が湧いてくる。
けれどその中で私の見えるものは決まっていた。空の中で光る星の輝きと、彼の姿だった。
いつの間にか私は疲れていたのか、深い眠りについていた。
……To be continued
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