部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

恋する乙女

私は若干モヤモヤした気持ちでパパが運転する車に
明里ちゃんと一緒に乗り込んだ。

「おや明里ちゃん、おはよう」

運転席に座っているパパが明里ちゃんに挨拶をした。

「七海のお父さん、おはようございます〜」

パパからの挨拶を受けて返事をする明里ちゃん。
娘の私でも思うヤ◯ザの顔をしているパパに普通に挨拶を
出来るのは彼女とセンパイぐらいだと思っている。
……なんせみんなビビって逃げていくからね。
それを分かっているのかパパはあまり授業参観などの
学校行事に来なかった。
……家で泣くほど悔しがりながら。

「今日は七海をよろしくね」

「いえいえ、私こそ送っていただきありがとうございます」

「ななみんおはよう〜!!」

隣に座った明里ちゃんはいつもの様に元気に挨拶してきた。

「うん、おはよう」

「あれ? なんか元気ないねどうしたの?」

と私を見た瞬間そう言う私の幼馴染。

「いや元気だよ? よぉ〜し頑張るよ〜!!」

「そう……?」

明里ちゃんは若干不思議そうに言ってきた。
さっきまで悩んでいた事が表情に出ていたのだろうか?
(いや流石にない、よね……)
なんて思いながら車は成人式会場に向かうのであった。

「ーーありがとうねパパ」

「ありがとうございます〜!!」

「七海も明里ちゃんも気をつけるんだぞ。
あと帰りが必要なら呼んでくれ。
成人式はやかましい輩が七海に何をするかわかーー」

「考えておく〜行こっ明里ちゃん〜」

これ以上ここにいると最悪成人式に遅れてしまうかも
しれないと思った私は強制的に話を終わらせた。

「ま、待て!! まだ私の話は終わってーー」

「さぁレッツゴー!!」

「う、うん行こうか……」

と若干申し訳なさそうな表情をしながら明里ちゃんも
歩き出した。
やっぱり会場の近くとなると沢山の人がいた。
こんなに人がいるとセンパイは完全にアウトだろうと思い
そしてまたセンパイが近くにいない事を実感し落ち込んだ。
しばらく歩いていると不意に明里ちゃんが

「で、ななみん」

「ん?」

「今日はどうしたの?」

「えっ? 何が?」

「いやいやさっき車に乗った瞬間の顔見れば分かるって」

「……そんなに顔に出てた?」

個人的には上手く隠せていたつもりなのだがどうやら
幼馴染の目は誤魔化せなかったみたいだ。

「出てた出てた
ーーひょっとして彼氏のこと?」

そして悩んでいる事までバレていた。

「うん……」

私はもう誤魔化すのを諦めて玄関でのお母さんとの
会話の内容を話した。

ーーセンパイにこの晴れ姿を見せれないこと

ーー見せたくても遠いからあまりワガママを言えないこと

「ふ〜ん……」

と私の話を聞いた後、少し間を置いて

「ななみんも変わったね〜」

「えっ? 何か変わったの私?」

私自身では変わった気はしないのだけど。
ーーあっ、でもスリーサイズは変わったかも……
ほら、センパイに好かれたいから色々と頑張ったし〜
特定箇所は痩せたり、増えたりしましたよ?
って多分彼女が言いたいのはこんな事じゃないだろう。

「いや〜ななみんも恋する乙女の顔をする様になったな〜
って幼馴染の私は思った訳ですよ〜」

「なっ……!?」

幼馴染兼親友にニヤニヤしながら言われた事に対して
驚きすぎて上手く返答が返せない。

「昔のななみんも寂しがり屋だけどさなんかあんまり本気で
寂しがっている気がしなかったんだよね〜」

「そうかな……?」

「うんうんななみんをご両親以外で1番長く見ている私が
言うんだからそうだよ〜
……多分ね」

「最後の一言怖いな……」

「で、さっきの話の続きなんだけどさ。
ーー今の話をしている時のななみんの顔がさ
ザ・恋する乙女って感じだと思った訳ですよ〜」

「そうなの?」

「そうそう。いや〜幼馴染として嬉しいですなぁ〜。
まさかあのななみんがそんな表情をするなんてね〜」

「ちょっとからかわないでって……」

「だってさ、高校まで同じだったけど告白されても全部
断っていたから、一時期ななみんに“恋”って感情があるの?
って思っていたぐらいだからね〜」

「あれ……そこまで……言いますか?」

まぁ今まで告白されてきたけどなんかあまりピンとこず
全部断っていたけど幼馴染からそう思われていたとは。
……若干心折れそう。

「でも今の表情を見てななみんにも恋する感情があるって
事が証明されたね!!
ーー誰だ〜ななみんにこんな表情させるやつは〜!!
って元クラスメイト達は言いかねないね〜」

「いやいやそれはないでしょ〜」

「いやいや元クラスメイトの男子達は絶対思うね!!
ーー彼氏さん、夜道気をつけた方がいいかもね〜」

「いやセンパイなら大丈夫」

「あれ? そうなの?」

「うん、センパイなら大丈夫だよ」

というかあのセンパイなら普通に返り討ちにしそう……。
……しかもエゲツない方法でしめてくる。
あの人ならしかねない。
ーーいや絶対する。

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