部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

親父だけに

「で、どうやって親父達は入ってきたんだ?」
「そんなん合鍵を作っただけに決まっているだろうが。
七海さんが持っていて俺達が持ってないと思っているのか?」
「だろうな」
予想通りの答えが来た。
七海に渡していて自分達が持っていない訳ないよな……普通。
「……鍵穴変えておくか」
このままだと突然入ってくる可能性がある。
「ちょっとセンパイ!? それだと私も入れませんよ!!」
「あっ、確かにそれはーー」
そう言えば七海がいたよなと思った瞬間
「私はいつ!! どのタイミングで夜這いをしかければ!!」
……安定の七海クオリティであった。
「やっぱ変えよう。なんなら今すぐ」
「うぇ〜ん!! 待ってよ〜!! そんな事されたら
私死んじゃうよ〜!!」
「ああ、一度死んで精神鍛えなおしてこい」
「酷っ!? あっ、でもこんなドSなセンパイもいいですね!!」
「やっぱこの子馬鹿だ」
前から思っていたけど今日改めて思った。
「センパイの罵倒がしみる!! そしてそれ以上に気持ちいい
もっと!! もっと言って!!」
何故かせがむ様に言う我が彼女。
「拓海〜お前そんな趣味の持ち主だったのか……
まぁそれは拓海も1人の男だから仕方ないよな!!」
何故か1人で呆れながら納得する親父。
「よくないよくない!!」
「えぇ〜センパイいつも私をいじめるじゃないですか〜
本当は私がいじめられているのを見て興奮しているんでしょ」
「おい黙れそのまま一生喋るな」
「あぁ!! センパイの罵倒が痛い!! でも気持ちいい!!」
と身を震わせる七海。
「おまわりさん〜ここに変態がいます〜」
「センパイそれはダメですって!!」
「全ての原因が何を言うか!?」
「拓ちゃん、昔はあんなに泣き虫だったのに……」
「母さん、それは大分昔だよね!?」
「昔のセンパイ……!! 是非聞かせてください!!」
それはもう凄いぐらいに七海が食いついた。
テーブルに上半身を乗り出すぐらい。
「いいわよ〜」
「僕の意思は無視か!?」
「だって将来のお嫁さんに隠し事はよくないわよ」
「嫁だとしても隠したい事はあるわ!!」
というか何で自分が泣き虫だった頃の話を好き好んで
言わなきゃいけないのか説明してほしい。
「昔の拓ちゃんはとっても泣き虫だったのよ〜
転んでは泣いて、辛い物を食べて泣いて、暗くて泣いて」
「やめろって!! 恥ずかしいから!!」
「センパイ可愛い〜」
隣で彼女がそんな感想を述べているがここは無視して
この母さんおしゃべり魔とどうにかしないといけない。
だがそんな僕の思いとは裏腹に……
「他にもね、犬に追いかけられて泣いて、獅子舞に泣いて
それはもう色んな事で泣いていたわ〜」
「もぅセンパイったら泣きたければ私の胸かしますよ〜?
このふかふかの胸を」
「僕の両親目の前にいるからね!?」
「何を言っているんですか〜今更」
「そうだぞ拓海、今更」
「そうよ拓ちゃん」
「慣れが怖いよ!!というかここに僕の味方はいないのか!?」




「で拓海のせいで脱線したが……」
「おい、脱線したのは誰のせいだと思っている」
「ハハハ許せ!! 親父だけに!!」
「理由が分からんからな!?」
というか“親父だから許せ”ってなんなんだろうか?
「で、拓海達はいつ引っ越すんだ?」
「一応、テスト明けの2月を目標」
「おいおい〜我が息子よ〜彼女との同棲なんて男なら
今すぐにでも叶えたい夢だろうが!!
何故冬休み明けと言わない!!」
「テストがあるわ!! というか何故僕が怒られているんだ」
「息子だからな!!」
「理由になってない!!」
「ガハハ許せ!! 親父だけに!!」
「困ったらそれ言うの禁止な!!
……ったくとりあえず僕は2月に引っ越すからな」
「おう、分かった。愛の巣となる新居だが……」
「愛の巣という言葉はいらないがな」
「えぇ〜センパイ〜それはつけましょうよ〜」
「七海は黙っていて」
「いやん、センパイが私の扱いを雑にした〜」
隣で何か言っている彼女はほっといて親父に聞きたいことを
聞いてみた。
「とりあえず場所はどこなんだ?」
「場所はなここの最寄りの駅の隣の駅だ。
七海さんが所属しているキャンパス寄りの」
「あっちか……」
親父が言っている駅とはこの家からも歩いていける様な
距離にある駅であった。
そうなると今までとあまり変わらない生活が送れそうだ。
……そう言う面では親父に感謝しておこう。
「一応、手続きはこっちで済ましておいたからいつでも
引っ越して住める様にしてあるからな」
「そりゃどうも」
「ありがとうございま〜す!!」
「うむ!! 七海さんの笑顔が見れただけよしとしよう!!
息子の笑顔は正直微妙だからな〜」
「そんな微妙な笑顔の息子はあんたの遺伝子を受け継いで
いるからな? 元はあんたが原因だからな?」
「おぉ〜そうか!! 忘れていたわ!!」
「忘れんな!!」
「とりあえず新居には俺と母さんからのプレゼントが
用意されているから楽しみにしておけ!!」
「絶対ロクなものではない……」
僕の予感が告げている。
それは絶対ロクなものではないと……!!
「センパイ〜ご両親からのプレゼントなんですから
素直に喜びましょうよ〜」
「僕は親父からのプレゼントは七海からのプレゼント並みに
期待してない」
「酷っ!? 彼女からのプレゼントですよ!?
もっと期待しましょうよ〜」
「だって七海って変な物ばっかり送ってくるじゃん……」
「ふふん、私は常識に囚われないんですよ〜」
「……はぁ」
「溜息!?」


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