部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

自信がないんだ







俺達は清水寺の境内に入った。
まだ本堂の方には行かず、周りを探索した後
本命である本堂の方に行く予定だ。
そして俺達は今、音羽の瀧という本堂の裏側にある
場所を歩いていた。
「いや〜やっぱりここはいいね〜!!
流石修学旅行でみんな来たがるわけだ〜」
「桜も修学旅行で来たのか?」
「うん、中学生の時に。高校は沖縄だったからね〜
吉晴は?」
「俺も中学生の時に来た様な気がする。
高校は海外」
「ーーチッ、金持ちめ」
わざと舌打ちが聞こえるようにした桜。
「高校が修学旅行海外だったんだから仕方ないだろ!?
そっちだって沖縄だろ!?」
「うるさい金持ち私立校出身者め!!」
「あだ名が雑!! 」
というか桜の家の方がお金持ちなのでは……
そんな質問なんてしたら更に桜がヒートアップすること
間違い無しなのでやめておこう。
「てか桜」
「何? 金持ち私立校出身者」
「そのあだ名まだ続くのか……」
「私の怒りが収まるまで続くに決まっているじゃん」
「はいはい、お好きにどうぞ。
さっきからというか今日の昼から疑問に思っていたんだが
ーー何故、俺にご飯を奢る?」
かねてからの疑問を尋ねてみた。
「な、何のことやら……」
「いやいや誤魔化しても無駄だぞ?
昼飯に始まり、あの坂での野外販売だし。
あの食欲を完璧に具現化した桜が俺に奢るなんて
明日世界が滅びるのかと……」
「……ねぇ今、私の事完全にディスったよね?
絶対そうだよね?」
「間違った事言ったか?」
「間違ってはないけど……でもそれを言われるとね
女子として終わっている様に聞こえるんですよね……」
「俺は桜らしくていいと思うが」
「えっ、本当?」
「だって毎回見慣れてる」
というか食べない桜は本当に怖い。
見てて落ち着かない。
「……だよね〜ですよね〜そういう意味だよね〜」
と何故かひねくれる桜。
「で、どうなんだ?」
「はぁ……分かったよ。
少しは吉晴が元気になるかなって思って……」
「俺が……?」
「うん、なんかこの旅行中何かずっと考えている感じ
だったからさ……最初は私達に旅行がバレたのが原因
かなって思ったんだけど、なんか違う気がして……
上手く言葉では言えないんだけど……だから
食べ物で元気出してもらおうって思ったの」
「よく分かったな」
「そりゃ吉晴の彼女ですからね。
って事は何か悩みあるの?」
「あぁ……恥ずかしい事に」
「別に悩みがある事を恥ずかしいって思わなくても
いいと思うけどね。
ねぇ吉晴の悩み事当ててみようか?
ーー来年の部活の事でしょ?」
「ご名答、まさにそれだ。
すまんな。楽しい旅行中なのに部活の事で悩んで」
「まぁ、多少は嫌だなって思うけどさ。
しょうがないよ、だって吉晴は主将だもんね」
と苦笑しながら言う桜。
やっぱり俺の彼女は凄い。
今日改めて思った。
あんなに俺を振り回す割に周りをよく見ている。
(それに対して俺は何をしている?)
自分の事で手一杯になり、桜が楽しみにしていた旅行で
逆に彼女に気を使わせてしまった。
「ねぇ吉晴」
「何だ?」
「どんな風に悩んでいるか私に言って?
吉晴が満足いく答えが出るか分からないけど……
一緒に悩む事は出来るからさ」
「桜……
ーー分かった。話すよ」
「うん、聞かせて?」
と優しく笑う桜。
(あぁ……この笑顔……落ち着くな……)
この笑顔を目にすると何故か心が穏やかになる。
「俺さ、来年の部活運営が心配なんだよ……」
「どんな感じに?」
「ほら、俺達の上の代って国木田先輩を始めとして
みんなすげぇ人達ばかりじゃんか」
「あ〜確かにそれは思うね。国木田先輩、樋口先輩は
普通に凄い人達だしね〜」
「それに比べて俺は……
ーー何も無いんだ」
「何も無い? 吉晴に限ってそれは無いと思うけど」
「俺は国木田先輩や樋口先輩みたいに頭は良くないし
森みたいに運動がめっちゃ出来る訳ではない
かといって桜みたいに周りをしっかりと見ることは
出来ないし……かなり感情的になるし……」
溜まりに溜まっていたのだろうか、次から次に
負の言葉が出てくる。
「私も周りをそんなにしっかり見ているわけではないよ?」
「だとしてもだ……俺は周りの人達に比べて
これっていうのが無いんだ」
「あるから成功する訳では無いと思うけど……」
「それでも俺は……自信が無いんだ。
来年俺が主将になった時に部活として良い結果を
残せるか……」
「まぁ、今年の先輩達の代もあまり良い結果
残してないけどね〜
ーーってふざける場面じゃないよね。ごめん」
「いや、正直ふざけてくれた方が俺としては
とても助かる。まっ、俺の悩み事もまとめて
笑ってもらえると助かるんだけどな」
俺は笑いながら桜に言った。

コメント

  • 雪雨

    与謝野さんの扱いがw
    それでも強い信頼を感じられて凄いし安心する

    2
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