部活の後輩と付き合ってみた

きりんのつばさ

おかしい

今回から織田と与謝野の話となります。





ーーおかしい。
何がおかしい。
特にこれがという口では言えないが、とにかくおかしい。
俺は国木田先輩達と分かれて、桜と一緒に二条城
西本願寺、東本願寺、金閣寺などを巡った。
……あらかじめ言っておくが、巡る建物がおかしい
という訳ではない。
ただ俺の桜に対する直感が何か異変を感じている。
そして昼飯の時に事件が起きた。
「ねぇ吉晴」
「ん?なんだ?」
「昼ごはん、奢ってあげよっか?」
「はっ?」
(う、嘘だろ……桜が奢るだと……
あの食欲の塊みたいな桜が自ら奢るだって?
ありえないありえない……)
「ファミレスでいいよね?」
「へっ、ちょ、はっ!?」
俺は与謝野に手を掴まれ、引かれるまま
近くのファミレスに入った。
「さて、吉晴〜何する? あっ、値段は気にしないでね
私が出すから」
「そ、そうか……」
(怖い!! 桜から奢るっていう単語が出る事自体が
恐ろしいし怖い!! 絶対裏がある!!)
俺は恐怖で鳥肌が立った。
「吉晴は確かハンバーグとステーキ好きだったよね?
じゃあこれでいいよね?」
と桜が指を指したのは期間限定のメニューだった。
「それは……はぁ!?」
(今のメニューで一番高い!!
絶対!! 絶対裏があるってこれ!?)
「という事でこれにするね〜大丈夫出すから。
すみません〜」
と桜が店員を呼んでいる中、俺は混乱していた。
(考えろ……考えろ俺……桜ならいつもどんな風に
してくるか……そして俺がどんな仕打ちを受けるか……)
と考えていたらハンバーグが机に来た。
正直どんな味だったのかはあまり覚えていない。
そして本当に桜が全額出していた。
俺は桜が会計を済ましている中でとある結論に至った。
(あっ、そうか!! これは俗に言うトイチって奴か!!
そうかそうか、だったら納得出来る。成る程……
沢山奢っておけば、あとで沢山回収出来るしな。
だかな、桜。流石にこれ以上はお前の策には
引っかからないぞ……!!)
今の時点であれば止めておけば、桜のファミレス一回分で
済ませる事が出来る。
(次こそは俺が払って……出費を最小限に収める)


そして俺達はファミレスを出て、桜が行きたがっていた
清水寺に向かう事にした。
そこに向かう坂には八つ橋等様々な食べ物が売っている。
「うわ〜美味しそう〜!!」
陳列されている食べ物を見て、目を輝かせる桜。
「そうだな」
(よし……今がチャンスだな!!
これ以上、借金を増やすわけにはいかない!!)
「桜、何かーー」
「ーーすみません〜!! これ2人分ください〜!!」
俺が声をかける前に桜は注文していた。
(だ、大丈夫だ!! まだ初手で遅れただけだ!!
会計の際に俺が払えば……)
「これでお願いします〜」
「はい、ありがとうございます」
「早っ!?」
遅かった。
「はい、吉晴〜どうぞ〜」
と桜から抹茶のアイスクリームを受け取った。
「桜は寒くないのか?」
「私? 全然〜寒くないね〜」
と言いながらアイスクリームを舐める桜。
(くそッ……また出費が増えた……!!
だが次こそは……!!)
同じ過ちは繰り返さない。
そう決めた俺だっだのだが……
「俺が……負けただと……」
俺が財布を出そうとする度に先に財布を出そうとすると
桜に全て先手を取られてしまった。
「吉晴〜? お〜い吉晴〜?」
「ちくしょう……お前には完敗だ、桜」
「ねぇねぇ吉晴はさっきから何と戦っているのさ?」
「……己自身とだ」
あとこれからの俺の財布だな。
「よく、分からない吉晴。まぁそんな事をしてる内に
清水寺の着いたよ」
「ちくしょう……俺は勝てなかったか……」
「だから誰と戦っているのさ……」
桜に呆れられながら俺達は清水寺に
入っていくのであった。

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