カルマ値最低の貴族転生

修行中の触手

4話 クリムゾン家のメイド採用試験

 今日は使用人の休憩室にて面接が行われていた。

「メイドの志願ですか。この時期に珍しいですね。なにか理由でも?」
「特にありません」
「・・・そうですか、ではなぜうちに?」
「理由はありません」
「・・・・」

 その様子はもはや面接であるのか疑わしかった。

 面接を受けているのは短い銀髪の女性、リエルだ。

 どうしたらいいか面接官をしているメイドも困り顔になっている。

「知っての通りうちは恨まれやすい家柄です。危険が付いて回りますよ」
「問題ありません」

 脅しを含んで言うが無表情に素っ気なく返した。

「恨まれやすいとはどういうことかしら」

 部屋の入り口から凛とした女性の声がする。

 声のする方を向くと真っ赤なドレスに身を包んだ炎髪の女性。
 この家の主人、レイア・クリムゾンが鋭い眼光で彼女らを見ている。

「お、奥様!、これはえっとその、」

 突然、家の主人が現れたことにメイドはあたふたとしてしまっている。

「うふふ、からかっただけだ。クリムゾンの評判が悪い事くらい誰もが知っている。それで、その娘は誰だ?」
「えっと、うちの使用人メイドになりたいそうです」
「ふーん」

 レイアはリエルに顔を近づけ値踏みするように観察して、

「合格!かわいい娘は大歓迎だ。明日からうちで働いていいぞ」

 採用宣言をする。

「いいわけないじゃないですか!」

 すかさず使用人が撤回。

「私に逆らうのか?」
「この前それで刺客が潜り込んできたのをお忘れですか?」
「ああ、サリアの事か。それは私がきっちり堕としておいただろ」

 なんとサリアにそんな過去があったのか。
 しかも既にレイアに毒牙にかかっていたとは。

 というか元刺客に子供の世話させるなよ。

「それがおかしいのです。それにうちの業務についてこれるか、、」
「そんなにいうなら私が試してやろう」

 そう言って戸棚に近づき、果物とナイフを手に取る。

「ほれ、これで皮を剥いてみろ」

 果物をリエルに放り投げる。
 放物線を描きながらゆっくりと飛んでいき、そしてナイフを

 ヒュンッ

 投げた。

 刃先はリエルに向き弾道は確実に首を捉えている。

 パシッ

 リエルは指で刃を挟み、つかみ取った。
 そしてナイフを180度回転させ、遅れて落ちてきた果物をキャッチし、皮むきを始める。

「ほう、なかなかやるな。これならうちで働いても問題あるまい」
「余計、刺客の可能性が高まったじゃありませんか!」

 確かにナイフでキャッチボールできるやつなんて一般人でそうそういない。

 そして何故俺がこの頭のおかしいやり取りを知っているかというと、ずっとレイアに抱っこされていたからだ。

 いつも通りサリアの監視を抜け出し屋敷をうろついていたら偶然レイアとばったり会い、捕縛されてしまった。

 サリアよ、すまない。
 お仕置き確定だ。

 まあ、過ぎた事はどうでもいい、お仕置きはしっかりこっそり見学するとして今はリエルだ。
 このままだと非採用になりかねない。
 それでは今後リエルと接触しづらくなる。

 ここは俺がリエルをフォローするしかない!

「あーうー」

 手際よく皮むきを終えていたリエルに向かって両手を広げ体を伸ばしリエルの腕の中からリエルの腕の中に移動する。

 秘技、子供に懐かれる人はいい人の術。

「ほら、アギトも気に入ったようだしいいだろ」

 効果は抜群だ!

「はあ、もうどうなっても知りませんよ」

 面接官が諦めたようにいう。
 よく見る光景だ。
 うちの使用人も大変だな。

 こうしてリエルのクリムゾン家潜入作戦が成功?したのだった。

 というかリエルがまだ使用人メイドじゃないのに既にメイド服着てることに誰かつっこめよ。

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