異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
44 危険領域XXX
悪夢を見る。
体中をぬめりとした異形が這いずる夢だ。
異形はやがてキシリーの口から内側へと侵入しようとするが、固く閉じられそれは叶わない。
だから他の穴を探した。
人間の体というのは、自らの意志で閉じられる穴の方が少ない。
おぞましい流体生物を相手にした時は、あまりに無力だ。
侵入された。
下半身から顔面に至るまで、ありとあらゆる穴から体内に入り込まれ、うねり、ふくらみ、吐き出す。
どれだけ外側からの刺激を遮断しても、内側から変えられてしまってはどうしようもない。
キシリーの肉体は変えられていった。
細くしなやかに鍛えられた肢体は、醜く膨らんだ化物となり、人よりも自らを襲う異形と似た姿になる。
仲間だ。
お前は仲間だ。
耳でうねる異形が、繰り返し彼女にそう囁いた。
キシリーは首を横に振り、必死で抵抗する。
だが一方で、こうも思う。
もし彼女の肉体が魔法を拒絶しなければ、もし彼女が普通の人間で鍛えられた精神を持ち合わせていなかったら。
とっくに、楽になれていたのかもしれない、と。
そして異形の”本体”がキシリーの眼前に現れ、こちらを覗き込む。
アーシェラにも見える、ラライラライにも見える、だが自分自身にも見える。
そいつは自らの頭蓋をキシリーの口にツッコミ、無理やり体の中に入り込もうとした。
ゴギッ。
顎の骨が外れた。
ブチブチと頬の肉が断裂する。
喉も避け、首から大量の血が溢れた。
そしてヤツは心臓にまで入り込むと、同化し、脈動を始める。
血液は汚染、または置換される。
裂けた首から流れ出す血液が黒く淀んだ。
体が、致命的に作り変えられていく。
それでも――キシリーの体が感じているのは痛みではなく、思わず恍惚としてしまうほどの、強い快感で――
◇◇◇
――小鳥のさえずりで、目を覚ました。
酷い悪夢だ、まだ頭がガンガンと痛む。
あれだけ鮮明でリアルな夢を見たということは、脳が睡眠に堕ちきれていなかったのだ、さぞ浅い眠りだったのだろう。
キシリーは薄っすらと開いた瞳で窓の外を見た。
閉じられたカーテンの隙間から、太陽の光が差し込んでいる。
朝がやってきた。
部屋には誰もいない。
酷い夢を見たせいか、今のキシリーは妙に感傷的になっていて、ただそれだけのことが、無性に嬉しかった。
出来ればもっと陽の光を浴びたい。
そう思ってベッドから降り、立ち上がると――体が、いつもより重いことに気がついた。
下を向くと、そこには見慣れない肉の塊があった。
横を向き、姿見と向き合う。
そこに映る自分の姿は、およそ自分だと思えないほどふくよかで、女らしく。
とても、”奴ら”が好みそうな形をしている。
「……っ、ぅ……」
キシリーはこみ上げる吐き気に、口を押さえながら洗面所に急いだ。
そして、台に胃袋の中身を一気に吐き出す。
昨日はほとんど食事を取っていないので、内容物はほぼ――彼女の体液であるはずだ。
それが余計に、彼女の悪寒を増幅させた。
キシリーは空吐きするまでそれを繰り返し、ようやく落ち着いた頃に、肩で息をしながら正面にある鏡で自らの顔を見た。
言うまでもなく顔色は悪い。
それは大した問題ではないのだ。
だが、自分の手で触ると、その感覚がある。
くすぐったいような、昨日の出来事を想起させる微かに甘い感覚が。
口の中だって、ずっと無味無臭だったのに今は胃酸の味がする。
言うまでもなく、それはラライラライに作り変えられた影響だ。
「ううぅ……っ、く、ふううぅぅ……っ!」
キシリーは、これまで積み上げてきた実績によって、”自分は強い”と言う自信を持っていた。
肉体的にも精神的にも、与えらた命令は確実に遂行出来る、それだけの実力が自分にはあると自負していたのだ。
だが、常軌を逸した敵とぶつかった時、人間の想像の範囲内にある自信など、容易く崩れてしまう。
ずっと、涙どころか、弱音すら許され無い場所で生きてきた。
親に甘やかされたこともない、だからきっと、まともに泣いたのは自分が生まれた瞬間ぐらいのものだ。
そんなキシリーは、今――正気のまま自分が変えられていく、そんな絶望を前に、初めて涙を流していた。
頬を伝った雫は顎から滴り落ちる。
中には唇を濡らすものもあった。
涙がしょっぱい。
その味を感じてしまうということすら、絶望の一端である。
キシリーは、洗面台の縁に強く握った拳を置き、強く歯を食いしばって、うつむきながら、ひたすらに涙の雫を落とした。
「可哀想に、辛いことがあったのか?」
「……ッ!?」
気配は無かった。
だが突如聞こえた気配に反応して、眼前の鏡を見る。
すると自分の背後には、いつの間にかアーシェラが立っていた。
ぞわりと鳥肌が立つ。
おそらく”影”とやらを使って部屋に忍び込んだのだろう。
影は世界中どこにだって存在している、それを操る力などもはや何でもアリだ。
反撃すべきだ、どのような状況であってもそうできるよう鍛えられ、躾けられてきたはずだ。
だが――キシリーは反撃など無意味だと言うことを、すでに体に教え込まれている。
アーシェラが、背中から優しく抱きしめた。
もはや、キシリーは抵抗の意思すら示さなかった。
「悲観する必要はない、前の体よりずっと抱き心地がいいからな」
「そんなの、私は望んでない……!」
「望んでいないわけじゃないんだよ、知らなかったんだ。知れば誰でも望む、誰もが欲しがる、そういうもんだ」
アーシェラの甘い囁き。
キシリーは鏡越しに彼女を睨みつけ、反論した。
「でも、私はそうは思ってない」
「先入観のせいだな。確かに今の私は化物だ、半吸血鬼だ。だが、そんなものはただの呼び方の違いだろう?」
「仲間を殺したくせによく言う」
「そんなの今更じゃないか、騎士なんてみんな人でなしの人殺しだ。あたいも、キシリーも。だったら、今更人間をやめたところで何が変わるって言うんだ?」
人殺しで、人でなし。
確かに騎士とは、そういう人間たちの集まりだ。
キシリーだって理解している、別に自分が彼女たちの心への侵入を拒んでいるのは、そんな理屈めいた理由からじゃない。
「そんなに意地を張るなら、また楽にしてやろうか?」
「やめてっ!」
「違う違う、今回はそこまでは弄らない。ただ、ほんの少しだけ、キシリーの嫌悪感を取り除くだけだ」
「だからそれが……っ!」
アーシェラの手のひらがキシリーの目と額を覆い尽くす。
「(ああ、また――あれが――)」
くちゅっ。
頭の中で音がしたと思うと、キシリーの体が、アーシェラの腕の中でびくんと震えた。
◇◇◇
「はぁ、っは……昨日、ラライラライに体を変えてもらったの。それがっ、すごく、気持ちよくてっ。体の中、ぐちゅぐちゅ、ってしてもらうのも良かったんだけどぉ、今も、こうやって抱き合ってるだけど……んあぁっ、はぁぅ……前と、全然、違うのっ!」
「そうか、今まで誰に触られても何も感じなかったんだもんなあ、夢中になる気持ちもよくわかる」
「うん、夢中なの。昨日の夜も、ずっと自分で自分の体触ってて、それだけでも、すごかった、ん……っ、だけどぉ。やっぱり、アーシェラや、ラライラライに触ってもらった方が……ずっと、気持ちい……っ」
キシリーはベッドに腰掛けるアーシェラにしがみつきながら、その耳元で、今の体がどれだけ素晴らしいものか熱弁していた。
そうしている間も、体をこすりつけることは忘れない。
豊満な胸同士を押し付けあい、変形させる度にキシリーは「っは、ぁ」と湿った吐息を吐き出す。
そんな彼女を抱きしめるアーシェラは、優しく微笑みながら、頭や腰、そして時折臀部を撫でていた。
触れられている方も、その手の感触にうっとりとしている。
「んっ、んっ、んうぅっ。っはぁ……あぁ、なんで、こんなに幸せなのに、私……っ、嫌がってたんだろぉ……っ」
「ほんの少し先入観を取り除いてやるだけでこの通りだ、人間ってのはつくづく面倒な生き物だって思うよ」
「ありがと、アーシェラぁっ。私、こっちの方が、ずっと、いいっ!」
「そうだろう? あたいもそっちのキシリーの方が好きだよ」
「嬉しいっ、私も、好き……っ、んあぁっ……!」
アーシェラの膝の上で、幼い体が上下に揺れている。
キシリーはそれを続けるだけでも十分満足だったが、そろそろアーシェラの方もより強い刺激が欲しくなってきたようだ。
肩に手を置くと、少し体の距離を離してから、だらしない表情のキシリーと向き合う。
そして口を開いて顔を近づけると――彼女も自然と口を開き、誘うように舌を見せびらかした。
最初は舌先同士を触れさせ、じゃれあうように絡める。
湿ったそれが当たる度に、ぺちゃ、ぴちゃ、と軽めの水音が響いた。
それだけで我慢できなくなると、アーシェラはさらに深く相手の舌を舐りはじめ、やがて口を重ねて頬の内側の粘膜をこそぎ落とすように愛撫した。
「はおっ……お、ふ……ん、ふぅっ……」
喉奥にまで届くアーシェラの熱のこもったキスに、キシリーは必死で鼻で呼吸しながら対応する。
「(気持ちいい、いいよぉ……アーシェラ、もっと……もっと奥、奥にぃっ……!)」
キシリーがそう望むと、アーシェラはまるで心の声を聞き届けたかのように、さらに喉の奥へと舌を挿し込んだ。
「んごっ、おおぉおっ!?」
奥へ、奥へ――人間では到底届くはずのない場所まで、ずるりずるりとアーシェラは入り込んでいく。
影でただの人間であるキシリーの体を変えられたのだ、アーシェラ自身が変えられない道理は無い。
彼女は力を使って、舌を伸ばしていた。
今はまだ咽頭で届く程度だが、まだまだ人外の肉体は変貌していく。
「おっ、おおっ、ん、ほごっ、おおぉっ!」
にゅるりと食道を通り、体内の味を確かめながら、アーシェラの舌は潜り込んでいく。
喉を塞がれ呼吸はできなかったが、不思議と苦しさは感じなかった。
ただただ、自分の体内に大好きな人が入ってきている、その幸せと快楽で頭の中がいっぱいになっている。
だが声は、微かに空いた隙間から発されているため、くぐもったような、かすれたような、奇妙な音になっていた。
「んおぉぉおおおぉおっ!」
そしてついに食道を通り抜け、胃袋にまで到達すると、キシリーはひときわ大きく吠え、体を仰け反らせる。
すると同時にアーシェラの舌がずるりと食道の半ばまで引き抜かれ、自分の体の内側が擦り上げる感覚に、キシリーは目の前がチカチカするほどの強烈な悦びを感じていた。
そして体の痙攣が落ち着くと、再び舌は奥へと入り込んでいき、胃の中を動き回る。
キシリーはなすがままに体を預けながらも、自分の口内いっぱいに溢れているぬめった肉の塊を、健気に舌で舐めていた。
臓器を愛でられるという異様な状況にも、先入観を削ぎ落とされた彼女は動じない。
むしろ、人間であったら絶対に不可能な行為に、”自分は愛されているんだ”という思考を深めていった。
「(いっぱい……いっぱいぃ……アーシェラが、私の、中ぁ……っ。ずっと、吐いてるみたいなのに……それが、いいっ……の……)」
アーシェラの舌は更に伸び、胃のスペースを全て埋め尽くしつつあった。
キシリーのお腹はぽこりと膨らみ、その中を満たすものが蠢くたびに連動して動く。
内側も、外側も、全てをアーシェラに満たされていた。
五感全てが、彼女に支配されている。
命令を遂行し、それに応じた報酬を受け取る。
それこそがキシリーにとっての至上の幸せだった。
だが、これは――無償で与えられる、曰く愛と呼ばれるこれまでの価値観とは明らかに隔絶した、全身を包み込む幸福感は――今までの人生全てが間違いだったと、快楽によって思い知らされる。
人外に身をやつせば、これがいつでも手に入る。
そして、これを与えてくれる誰かにも、同じようなものが与えられる。
確かに、愛だ。
人には実現不可能な領域にある、あまりにも偉大なる、愛情だ。
知ったら、誰だって、溺れたくもなる。
「ふ、ふごっ……が、うぅ……んぉ……おおぉん……っ」
獣のような声を出すキシリーを見て、アーシェラは頃合いだと悟った。
自らの身体を変えてまで相手に奉仕をするのは初めてだったが、それでも、どうしたら一番気持ちよく出来るかは想像が付く。
その想像どおりに――アーシェラは、キシリーの体内を満たす舌を一気に引き抜いた。
「か、ひゃっ!? んごぉっ、おごおぉぉぉおっ、んおぉぉおっ、おおぉぉぉおおぉぉおおおおおっ!?」
ズルズルズルズルゥッ!
これまでとは比べ物にならない衝撃に、キシリーの眼球がぐるりと上を向いた。
脳内でバチバチと電流が流れ、それに反応して体も脱力した状態で痙攣する。
大量の唾液を口元から撒き散らしながら、永遠とも思えるほど長い時間、胃袋を、食道を、そして喉を擦り上げられ、彼女は幸福の頂きへと上り詰めていた。
全て引き抜かれたあとも彼女の痙攣は収まらず、口元をどちらの物かわからない唾液でべったりと濡らし、唇を半開きにしながら、放心状態となっている。
アーシェラに支えられていなければ、とっくに崩れ落ちていただろう。
「(喉が……すーすーする……いない……アーシェラが、いない……また、埋めて欲しい……よ)」
キシリーは奇跡的に気絶していなかった。
あれほど強烈な感覚を脳に叩き込まれれば、意識を失うか、あるいはとっくに壊れていてもおかしくはないというのに。
騎士に選ばれるほどの強さがあるからこそだ。
それでも――もし彼女が”先入観”を取り戻したとしても、先程の感覚は一生刻まれたままであろうが。
「じゅる……っ、人間は……ほんと、不思議だねえ。こんなに気持ちいいのに、なんで”人間じゃないから”って理由だけで拒むんだか」
「うん……ふしぎぃ、にんげんより、ずぅっと、いいのに……」
「それを理解してるキシリーはいい子だねえ。ご褒美だ、同じようにしてあげるよ」
アーシェラはキシリーの口の中に指を突っ込むと、彼女の舌をつまんだ。
そしてそのまま、力任せに一気に引き抜く。
「はごおォォおおっ!」
ずるぅっ、とキシリーの舌が伸びていく。
服を唾液で濡らす彼女の舌の先端は、へそのあたりでぷらぷらと揺れていた。
「おぉ……うひょ……ひゃひ……ひょれ……」
舌が伸びているせいでうまく喋ることが出来ない。
だが、どうせすぐに喋らなくなるのだから構いやしない。
愛し合う2人には必要最低限の意思疎通さえあれば十分なのだ。
なにせ、最も重要な――”愛しあっている”と言うお互いの感情は、疑う余地もないのだから。
そしてアーシェラは自らも同じ長さにまで舌を伸ばすと、大量の唾液を滴らせるそれを触れ合わせ、絡めだす。
意図を察したキシリーも、自ら相手の舌に巻きつけ始めた。
2人の口から伸びた触手は、編むように交わりうねる。
「は、あふ……ふぁっ、んうぅ……っ」
「へっ、へぇっ……お、おぉ……えぅ、ぅ……ん」
べちゃ、にちゃ、と言う粘質な音と、相手の甘い声だけが聴覚を埋め尽くしている。
胸あたりで絡み合っていた2人の舌は少しずつ上へと移動していき、やがて互いの口内でもごもごと蠢きはじめ、そして先程アーシェラがそうしたように、キシリーは相手の喉奥へと舌を挿入していった。
負けじとアーシェラも、再びキシリーの喉に舌を埋没させていく。
「んごっ、おごっ」と苦しげな声にも聞こえる喘ぎをあげながら、少ししょっぱい食道の味を楽しむキシリー。
その後、胃まで満たすと、今度は2人同時に一気に引き抜いて、同じ快感を共有して、心を繋がりを深める。
落ち着いたらまた舌を絡めて、奥まで沈めて、引き抜き。
何度も何度もそれを繰り返して、顔が唾液でべとべとになったって、むしろその匂いや味が興奮を高める。
好きだとか、愛してるだとか、数え切れないほど口にした。
それでも足りなかった。
その瞬間、2人は確かに、世界中の人間が誰も到達できない領域まで深く深く愛し合っていたからだ。
相手の肉で、臓物を満たす。
そんな愛し方が、人間に出来るものか、と。
◇◇◇
それから、キシリーが体力を使い果たし眠り、目を覚ますと――眠っている間ずっと抱きしめていたらしいアーシェラの姿が視界に入った。
”先入観”は、すでに元に戻っていた。
正常な価値観を取り戻したキシリーは、自分が何をしたのか全て思い出し、そして口の感触から変えられた肉体がそのままであることを悟ると、抱きついたまま嘔吐した。
口から溢れるのは自らが飲み込んだアーシェラの体液だけだったし、それが喉を通り過ぎる感覚すら気持ちよくて、もう後戻り出来ないと思い知らされる。
吐いて、泣いて、心が折れて。
それでも”正常さ”にこだわる自分の中の人間性に辟易した彼女は、アーシェラの耳元でつぶやいた。
「私を……壊して。元に、戻らないようにして……」
その懇願に、アーシェラはこう答えた。
「壊れるんじゃない、愛を知るだけさ。そして正しい形になるんだ」
「それでもいい。だから……お願い」
ぎゅっと抱きつくキシリー。
それから、彼女の部屋から響いたおよそ人間のものとは思えない声は、だが――唯一この城においてまともな人間である彼女にも、彼にも届くことはなく。
望みどおりである。
心は壊され、隙間に愛を注ぎ込まれ、都合の良い形になるまで成形されて。
心の底から半吸血鬼という存在を受け入れるようになるまで、交合は続いたのだった。
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