異世界で美少女吸血鬼になったので”魅了”で女の子を堕とし、国を滅ぼします ~洗脳と吸血に変えられていく乙女たち~
1 肉片少女と吸血鬼の交合
私は自殺しました。
衝動的と言うより必然的に。
常にそう思っていたことが、たまたま今日実行できたというだけで、それが10/2の月曜日、放課後だったということに特に意味は無いのです。
ただ、屋上に行ったら、フェンスに引き寄せられるような気がして。
まるで甘い芳香に誘われるかのように。
フェンスから乗り出して地面を見下ろすと、私の体は引き寄せられ、ずるずるとそちら側へと滑ってゆきました。
ひゅるり、どすん。
そして、砕けるように、潰れるように、私の体はひしゃげたのです。
私は死にました。
痛みも苦しみもなく、無になって。
ああ、やっと私の人生は終わるのだ。
そう思うと、私は嬉しくて仕方ありませんでした。
◇◇◇
思えば私の人生は、とても無価値なものでした。
私が父の子供ではないとわかったのは、8歳の冬。
母が家を出ていき、疑った父が何らかの検査を行ったから、と聞いていますが詳細までは知りません。
その日はクリスマスイヴで、明日の朝、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれることを期待していた私は、外で夜を過ごしました。
父はまるで汚らわしいものでも見るように私を見て、蹴り飛ばし、そのまま外に追い出したのです。
翌朝、冷たくなった状態で見つかった私は正気を取り戻した父によって病院に連れられ、一命をとりとめました。
しばし入院した私のために、クラスメイトたちが寄せ書きの色紙を持ってきてくれました。
丁寧な紙の包みを取り除くと、そこには彼らの心温かい言葉が並んでいたものです。
『死ねばよかったのに』
『なんで生きてるの?』
『戻ってくるな』
『気持ち悪い』
『幽霊女には病院がお似合いだ』
『父親に殺されればよかったのに』
私はとても胸が暖かくなって、すぐさまそれをゴミ箱に捨てました。
中学に上がってもそれは変わらず、高校に上がってもそれは変わらず。
とは言え、私にとっては些細な出来事でも、みなにとっては重大な出来事かもしれません。
ですので、その間に私がやられたことを羅列しましょう。
右薬指がありません。
左目が見えません。
頬の筋肉が後遺症で引き継いっていて、常に笑っているように見えます。
髪はいつも不揃いです。
全身あざだらけで、生傷も絶えません。
恋人はいませんが処女ではありません。
ネットで私の名前を検索すると、裸の画像が出てきます。
せいぜいそれぐらいのことで、特別辛いと思うことはありませんでした。
それに、中には優しい先生もいたんですよ。
彼女は私を守るために彼に犯されて、その後は壊れてしまったのか私をよく殴りましたが、とても優しい先生です。
だって、殴るだけじゃないですか。
とてもとても、優しい先生です。
◇◇◇
とにかく、私は死にました。
空から飛び降り、ぐちゃぐちゃになりました。
肉片か何かになった私は、それが私だと知れた瞬間、沢山の人に笑われると思っていたのですが。
次に目を覚ました時、私を迎えたのは嘲笑ではありませんでした。
「そう、疑問に思うことはあるまい……血肉があれば……それは、命となりうる」
やけに古めかしい口調で話す、死に体の少女だったのです。
色白で、金髪で、目は赤く、私とは対象的に花のように煌めいて見えます。
羨ましい、と言う発想すらできないほど、直感的に手の届かない天上の存在だと思いました。
そんな少女が私に話しかけてくれるだなんて、これは死の間際に神様がくれたご褒美のようなものかもしれません。
「そこまで言うほどか? ふ、余には……おぬしの方が……く、ふ、輝いてみえる、がな」
少女は不思議なことを言います。
不思議といえば、どうやら私の声は届いているようです。
目を覚ましてから一度も声は発していないというのに、どういう仕組みなのでしょう。
ですが考えても無駄でしょう。
こうして目の前の少女とお互いを褒め合うことも同様に。
あと少しで死ぬ者同士、じきに失う物を称え合った所で虚しいだけです、傷の舐め合いにしかなりません。
いえ、私には舌も無いので舐めあいすらできません。
「なければ、補えば……よい」
補う、そう言われても私には何もありません。
人格も外見も才能も学力も体力も何もかもがゴミクズのように無価値だった私は、もはや無と呼んでも差し支えがない存在だったのです。
いっそ本当に無になれたのなら、そう思って自殺したぐらいなのですから。
そして今、眼球だけになった私は、お望みどおり無になろうとしている。
「無、では……ない。それは”負”だ、力だ、存在だ、命だ……!」
私の、これが、命?
そんなことを言われたのは初めてでした。
お前のような無価値な存在は、存在しているだけで罪だ。
これまではそう言われて生きてきましたから。
「見る目の無い、者たちよのお……例え死にかけだろうと、余とおぬしが補いあえば、1つの命たりうるのだ」
補い合う、つまり、私と――私なんかと1つになろうとしているのですね。
「そういう、ことに……なる、な」
それならどうぞ、ご勝手に。
私みたいな存在があなたの命を救えるのなら、どう使われたって文句は言いません。
「……補い、あう、と言った……はずだ。どちらか一方に、天秤が、傾くことは……ない……」
それは残念です。
ようやく消えられると思ったのに。
「……まあ、良い。それもまた、おぬしの、力だ。さあ……心を、開け。余を受け入れよ、魂を――1つに――」
それはよいのですが、最後に聞かせてください。
あなたの、お名前と、そうですね……ご職業でも。
「ふ……余は、吸血鬼……名はカミラ……だが、この名も、もはや無意味だろうよ……」
吸血鬼――そんな物が本当に存在するなんて、と驚いていると、彼女は私に――いえ、正確には私の断片、残された眼球に手を伸ばします。
すると、視界は光に包まれました。
そして、胎内を想起させる熱と、夢の中にいるようなまどろみに意識が包まれたかと思うと、私は気を失っていたのです。
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