異世界転移したら中々異常が多いサイコブラッディーな非日常

家上浮太

ザウスゼルスにて2


長いナイフを舐めながら悪党は推参する。
犬の耳を生やした、元人間の獣人である。
「ムラマサじゃねぇか?なんでこんな辺鄙な所にいるんだぁ?俺を覚えてるかぁ?てめぇが全滅させた、あの戦士団の戦士長のギリアースだぜ?」
「誰だお前?」
「忘れたとは言わせねぇ!この街に俺は逃げて、ここにいるあのマッドサイエンティストに俺は体を改造された、俺の脚力は音速さえも越えるのだ!」
飛び出し、ジャンプし、ナイフを振り落とす。
確かに音速は軽々しく越えてしまったのだが。
「死ねぇ!」
「あっそ」
禍々しき妖気が牙を出した
抜刀、刹那の一太刀である。
「てめぇの弱さは道端のゲロ以下だよ」
「そ、そんぬっふぁっ!」
彼の体は斬られた瞬間に溶けた。
「お前の筋肉がマッドサイエンティストの施術に適応しなかったな、負け犬、無骨で太いだけでは何も役に立たないんだよ」
鞘に妖刀を戻して独り言を呟く。
「この街の風景は確かにザウスゼルスだが、そこはもう、吸血鬼の王との逃避行の道行きの一つで全滅させられた地域の一つだったはず、おかしいな、街を新たに創った、魔族の大半は破壊衝動しか持ち合わせていないはず、つまり人間の仕業か」

「御名答だ、エグドス・ムラマサ君」
脳味噌が剥き出しになった白衣の少女。
ゲロ以下の犬の獣人を踏みつけていた。
「ここは僕の思考実験場だ、シェーデル帝国の命によって、人体実験も範囲の内だ」
「ちっ、異世界からやって来た髑髏の兵団か」
「この世界は『残骸領域』、平行世界の様々な可能性の墓場だ、シェーデル帝国はナチス第四帝国とか言ってるらしいね、まぁ僕の知った事ではない、僕はただ、実験を続けられれば幸いなのさ」
「そうか、洗脳が得意な奴は?」
「それも異世界人、眼鏡かけた陰険な奴さ」
「…………年々多くなってるな、異世界転移者」
「転生は出来ないんだよね、それを司る女神様が大いなる魔女に破れてから異世界から転移するのだけは、高位の術者なら誰でも出来るようになったからね、君もだよ?ムラマサ」
「……………何の事だ?」
「惚けないでよ、刀匠さん」
「俺は今では刀の亡霊だよ」
「付喪神も祟ることがあるんだね」
「弟と同じ日本人、しかも知識でチートするタイプか」
「そうだね、悪霊を従える外道らしいよ?」
「とんでもないのを呼び寄せた者だな」
「君も元は刀そのものが転移した存在だろ?」
「なら今度は銃そのものが転移するのか?」
「ガンブレードなんてあるんだね」
「そうかい、お前の研究所はどこだ?」
「この街のどこかさ、探してみなよ」
そう言って、マッドサイエンティストは消えた。
「幻影現出器か、古い魔具を使うのだな…………」

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