fate/badRagnarökーー魔王の名はアーリマンーー

家上浮太

ジャン・ド・フォンタネル


「フォンタナ」(Fontana)と同じく、月面クレータの名称の1つ「フォンテネル」ということになる。《Fontanelle》には多孔質のオブジェのようなものが人形の背後に映っていた。妖精たちが棲む「小さな泉」からは「水」、たとえば《Nevermind》の「水中」を連想させるが、青い地球ではなく、干涸びた「月面」だったとは?‥‥。

月面のクレーターとはかつて湖のようであった、もしくは泉そのものか、海であったか。

陰の象徴は月。
陰とは女性だ。

「空亡様」
「準備万端か、錬金術と魔術による最高傑作、巨大肉人形にして、月の化身の雌の鰐」
「空亡様、もちろん企画案通りに順調です」
彼女(フォンタネルと呼ぼう)を一笑に付せない理由は見るものを自動的に加害者に引き摺り込む、この写真の構造そのものにある。男たちの「幼女姦」という抑圧されている暗い欲望を抉り出す。顔のない謎の人物の正体、匿名性というヴェールに隠れた手の所有者、鏡に映っているのは今まさに写真を見ている自分自身の顔ではないかという疑念。パロディというと安直な首の挿げ替えやコラージュ画を思い浮かべがちだが、一見パロディとは気づかないくらいオリジナルを改変したフォンタネル人形。ヌードの幼児を人間から人形へ、性別を男から女に変えることで、欲望の対象を転化させて主体から客体へ逆転させる。フォンタネルを手中にしている干涸びた指は「ネヴァーマインド」の瑞々しい手の成れの果てなのだろう、幼女人形がどんな男にも小児性愛の欲の花の種を埋め込ませる。

それを爬虫類でやる、最も生物学者にして動物園の職員であったデズモンド・モリスのアドバイスと監修があってこその完成であった、企画力も、企画書の精密さも万全だ。

空亡がどこまでも歪で知的な笑みを溢した。

「世界精神がなんたるか実験を開始するよ」

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