fate/badRagnarökーー魔王の名はアーリマンーー

家上浮太

クラウン


背負うべき『咎』がある。
さ迷うべき『罪』がある。
戸惑うべき『罰』がある。

心の中にはもう一人の自分がいる。
例えば、人間としての汚さ、醜さ。
悪徳、悪意、悪辣、外道さ、穢さ。

影。

「まぁ悪こそ強いんだよ、もう一人の小生」
「お前に肉体の支配権なんて渡さない!!」
「記憶も、か?」
「そうだ!」
「光が多いほど影は濃くなる、さぁ、お前の見いだした光はどんな影を創ったのか、分かるか、この恐ろしき方程式は解けるかな?」
「やめろ、やめてくれ!」
「そうだ、自分の中に一番の敵がいる、だ」
「お前を殺す!」
「不可能だよ!」
「なんでさ!!」
「そりゃあ、人間は罪悪感からは切り離されない、『枷』と『咎』は違う、前者は背負うべき、後者は剪定すべき、自分の悪意を配合して、色々混ぜて最後に小生は魔王になる」
「愛を枷というな」
「同じものだろ?」
「咎は全部背負え」
「お前が出来てない事を小生に強いられなきでくれ、なんて外圧だ、いやはや、この内なる影を抑圧するとはひどいなぁ、むごいなぁ、自傷と自慰をすれば君は少しは癒される、でもそれは一時的な倒錯、小生はそんなの欲しくない、他者に残虐を与えてこそのサディスト、正義なら誰でも憧れる、戦隊ヒーローだって大勢で一人をボコって陰湿なくせに敵キャラは楽しそうだよな、正義は苦しむだけ、誰だって悪に憧れを抱く、万引きしたいから、どうして人を殺してはいけないか、なぜ人に暴力をふるってはいけないのか、そんなの考察するに値しない、楽しいから、喜ばしから、愉悦だから、悪は罪を成す」
「それは人間てしてやってはいけない」
「おいおい、話聞いてたのか?人間なら誰だって持っている自己矛盾だ、葛藤とか、悩みとか、屈折とかそういうの忘れて壊したいだけ壊せばいい、皆嫌いだ!お前達なんか狂ってしまえ!そう叫べたらとことん楽だろ?」
「甘えるな!」
「小生は、シナモンのように優しいよ、そして、シナモンのように甘いのさ、君を堕落させて、君を没落させて、君を埋没させて、君を貶めて、君を辱しめて、これこそ被虐だ」
「黙れ!!!」
「だが断る!」
解放がされた。
「や、やめろ」
「さぁ、君の満たされるのは、ジャックザリッパーとある意味同じ猟奇的な胎内回帰願望だ、叶えてあげるよ、一生墓地に沈んでろ」

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