fate/badRagnarökーー魔王の名はアーリマンーー

家上浮太

宵闇、彼岸桜に膿まれた男


「久しぶり、パパ」
娘は、語りかけた。
愛を知らない父親。
桜の下には本当に沢山の死体が埋まっている、それは父親が恋人といった女達である。
そんな彼岸桜の人面痣。
彼岸桜に埋まれている。
溶け込んでいたのである。

彼岸桜が膿んでいた。

「どう、愛を感じた?」

「…………………………………」

「…………パパが悪いんだからね」
パパ、人類最凶の蝙蝠さんの骸。
死体、実の父親を桜に封印した。

禍津冬木の自宅。
そこは忌々しい首吊邸。
息が詰まるほど障気が濃い場所。
そこの主である、娘は『紅の茨』

「でも、もうすぐ禁断の果実も食べれる、人間の原罪はね、愛から始まり、大罪は愛から続き、人類悪は膨らんだ愛で終わる、そうだねぇ、パパの事はまず

最新の魔術師ダークアダム

と呼ぼうか、誰も愛してなかったパパはついに、人類悪という愛に満ちた存在になれるんだよ、良かったね、これで愛を知れるよ?」

歪んだ妄想で満ち終えたファザコン。
それはお月様が満月になるようにである。
朱の月ならぬ蒼の月、紅赤朱ならぬ蒼青蒼、その本当に愛を知らなかった怪物の名は。

無名。

無明と掛けられていた、その吸血鬼の個は。

娘の『理想の父親像』のために形成される。

警醒したかった。

誰もが、彼の虚ろを知っていた。
どの女もその伽藍を満たせない。

だからどの恋慕も遂に華となる。

蝶をそのまま植える行為である。

さて、娘はこれからイヴと名乗るのか、リリスとなのるのか、アンリマユの母親であり、愛人であるジャヒーの名前を受け継ぐのか。

愉悦の種子はそうしてガイアに根を張った。

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