異世界の復讐者

5話

「もしもし爺さん?秋斗だけど!うん。あーごめん。今日は友達の家に泊まるから。うん、じゃあおやすみ」
秋斗は爺さんに嘘をつき明日の準備を行っていた。家に帰った秋斗は明日マルク達が帰還する際に襲撃する準備を急ピッチで行っていた。
「マイマスター接触人物の特定が出来ました。」
「誰だ?」
秋斗の命令でマルク達に接触した人物の調査をしていた秋丸君8号改から秋斗に報告がいく。
「春日利彦 52才 独身 斉口警察署の警部捕です。」

「春日警部捕!?なんで..まさか!」

「春日のメール履歴、通話履歴を調べた所こちらの内容が出てきました。」

秋斗は家族を殺した人物に接触している警察官の名前に聞き覚えがあった。
捜査の結果に納得いかなかった秋斗は何度も警察署へ足を運び捜査の再開をお願いしていた。その時秋斗に対応した人物が春日だった。
秋丸君8号改は春日のパソコンをハッキングしメール履歴を盗み取りそのメールを胸のディスプレイに表示した。



決行日8月7日

捜査を撹乱し隠蔽しろ。報酬は2000万

秋斗は唇を噛みながら確信した。
春日はマルクの手下とメールや会っての話し合いで報酬の代わりに捜査が大きくならないように隠蔽する事を約束していた。

「くそ!警察まで...こいつも殺してやる、だがまずはアイツが先だ!」

警察官が事件にかかわっていた事で強い怒りを抱き復讐する相手が1名増えた事よりも明日異世界へ帰還するマルクの方が先だと集中する。
「ゴクッ、ゴクッ....ん?」
秋斗は一度怒りで熱が上がった頭を冷やす為リビングにおり水を飲む。秋斗は視線がテーブルの上にある指輪2個と緑色の水晶のネックレスに目が行く。
(父さんと母さんの結婚指輪と母さんのネックレスか.....そういえば....)秋斗は子供の頃に母に尋ねた記憶を思い出す。

「ねぇおかぁさんはなんでいつもおなじネックレスをつけてるの?」
「ふふふ綺麗でしょ?これはねお母さんのお母さん、秋斗のおばあちゃんから貰った大事な物なの。お母さんがお母さんである事を証明してくれる物でもあるの」

秋斗がまだ小さかった頃いつも母エリスが身に付けていた水晶のネックレスが気になり母エリスに尋ねた。
「しょうめい?おかぁさんはおかぁさんのほかに、なにかちがうの?」

「お母さんはお母さんよ!秋斗が大きくなったらこのネックレスをあげるわね」

秋斗にいつかこのネックレスを譲ると言う母エリス。

「えーいらなぁい。それよりあきまるくんいちごうにつかうはーどでぃすくかってよぉー」

「もう!誰に似たのかしら!はいはい。こんど電気屋さんみにいこうねー」

秋斗の幼い子供とは思えないお願いに苦笑いをしながら答える母エリスだった。

(そっか...おばあちゃんからもらったって事は異世界の物って事か?..異世界..まだ信じられない部分がやっぱりあるな...)
「パシッパシッ」
(まずは明日だな。うーんネックレスは自分が付けとくか。)

いまだに信じられない異世界や魔法の存在に考えてしまうが顔を二度叩きまずは明日の事を考える事にした秋斗。幼い頃の母エリスの言葉に従い自らにネックレスを付けた秋斗だった。


AM7:00
「対象が動き出しました。」
「あぁ追うぞ!」

秋斗と執事ロボット秋丸君8号改はバイクに二人で乗り、潜伏先から動き出したマルク達を追う。
(自動二輪の免許とっておいてよかったな。)
そんな事考えながら背中に執事ロボットをのせた16才の少年が家族のかたき取る為敵をバイクで追っていた。

「やばっ!」
「ウーウー」
「そこのバイク止まりなさい。」
マルクを乗せた車が交差点を進む。秋斗も追うがタイミングが悪く赤信号になる。仕方なく信号を無視して追う秋斗に不幸な事に白色のボディに赤灯を回したバイク、いわゆる白バイがサイレンを響かせ止まれと命令する。

(どうする..このままだと奴等きずかれるか..)
「奴等を逃がすな。衛星で追跡しろ」
「了解しました。マイマスター」
このまま警察を無視して追っても不味いだけだと判断した秋斗は追跡を一度あきらめ秋丸君8号改に衛星を使って空から監視し追跡させる。
「信号無視ね!免許証だして。」
言われた通り免許証を渡す秋斗
「ん?16才?君学校は?」
「学校は行ってません。」
早く終わるよう堂々とを嘘つく
「免許所得の1年未満は二人乗りは法で禁止されています。後ろの子もおりて来なさい」

「..........えーと人間じゃないんですが...」
早く終わるように従う秋斗だったがまさかの命令に一瞬言葉が詰まりながら答える

「何を....ひぃぃななんだこれは!?」
「自分が作った執事ロボット秋丸君8号改です。」
近ずき降ろそうとした警察官であったが近くでみた秋丸君8号改の姿に怯えながら質問する
警察官に秋斗は淡々と答えた

「バカな!ロボットだと!?そんな危険な物載せて運転を認める訳にはいかん!」
(まずい時間がかかりすぎだ....)

「マスター対象が斉口市斉口高校へ向かっています。」

「斉口高校!?なんで!?まさか..まずい!」

「お!おい!まて!止まれ」
秋斗は警察官の制止を無視しバイクに乗って自らの高校斉口高校へ急ぐ。


**********

AM 8:00

「おはよー由衣」
「おはよ里香ちゃんどうだった?」
里香が紫藤に挨拶をかけると紫藤も返すついでに確認する。どうだった?とはもちろん昨日の帰りに話した里香が毎朝行っている担任に秋斗の心境を尋ねる事のことだ。

「ダメ..あのバカ早くこいっつうの!」
里香は一ヶ月学校へこない秋斗に悪態を呟く。

「キャーー」
「なに?なんだ」「なんだ?」「なんだ?」

毎日の朝の光景が女子生徒の悲鳴と共に戦場の血の臭いのする光景へと変わっていった。

「お!おい!お前達ここは学校だぞ!直ぐに出ていきなさい。」

「ピチャッ...ゴロゴロ....」

朝突然現れた不審者の侵入者に、外に出ろと叫ぶガタイのいい男性教師だったが、マルクの一振りで血飛沫をあげ頭が地面に転がる。

「キャーー」
「な、なんだ?」「なんだ?」「なんだ?」

女子生徒の叫びになんだ?なんだ?と人が集まるが頭が地面に転がる男性教師の死体をみて一瞬の静寂後悲鳴と共にパニックが起きる。

「逃げろー」「お、おい!逃げろ」「ん?なんだ?」

「邪魔です。」

「うっぇゴホッ」

騒動にきずいて無かった生徒がマルクの前を通り過ぎると胸に一突きで短い人生を終える。

「なんか煩くない?なんだろ?」
「叫び声のような...」
里香と紫藤が周りから聞こえる声に耳を傾ける。そんななか里香達クラスに謎の集団が入ってきた。

「ここですか?」
「はい。春日からはこのクラスだと聞いております。」
マルクの質問に部下が答える。
「皆さんおはようございます。」
「......」
「あれれ私の翻訳魔法起動してますか?」
「もちろんでございます。」
「なにしてるんですか!?」
突然の乱入者の朝の挨拶にクラスの誰も喋らない。マルクは自分の翻訳魔法が起動してるかを部下に質問して起動済みを確認した。
そんななか女性担任と男性の学年主任がクラスにやってきた。

「初めまして。わたくしマルク・ローガンと申します。柊秋斗君を殺しに参りました」

「殺し!?ふざけるな!」
学年主任の男性教師が叫びながら近ずく。
「ファイヤボルト」
マルクが一言口ずさむとマルク指先に大きな炎の塊が浮かぶ。指を動かすと炎の塊が男性教師を襲う。
「ぎゃぁぁぁ熱い、熱い、」
「「キャー」」「「うわぁぁ」」
男性教師の光景にクラス中が叫ぶ
一瞬で男性教師は燃え上がり炭となった。

「はい。静かに!柊秋斗君はどなたですか?」
「ひ、柊君は、お休み、です。」
マルクの質問に女性教師がプルプル震えながら答える
「休み?」
「か、彼のご家族が先月亡くなっり、学校をお、お休みしてい、ます。」
秋斗が学校にいない事を必死に伝える女性教師
「困りましたね..彼も一緒に殺しとければらくだったのに...」
「まさか!あなた達が秋斗の家族を!?」
マルクの独り言に里香が思わず質問する。
「あらら、独り言が聞こえてました?お恥ずかしい。はい。私が殺しました?ん?殺させた??私が父親を魔法で操り娘と妻を殺させ自らは首を吊らせて自殺させましたけどなにか?」

「魔法!?なに言ってるの?あんた薬物でもしてるんじゃないの?」

里香は手に拳を握りマルクの前に達マルクの発言を薬物でもしてるんじゃないのかと疑う

「魔法がない世界ではこんな反応になるのですね。ですが柊秋斗君がいないのであれば用は無いですね。あなた方...死にますか?」

「ふざけるなぁぁなっ!?」
「パラサイト」

里香がマルクにめがけて近ずき本気でハイキックをしようとするが体の動きが止まる。

「か、体が動かない!?」
「信じてくれました?」
体が動かない事に理解が追い付かない里香にマルクは魔法の力だとばかりに言ってくる。

「里香ちゃん!」
「由衣こないで」
不自然な形で動かない里香を心配した紫藤にこいつらは危険!と感じ「こないで!」と紫藤に叫ぶ。紫藤はそれでも里香のもとへやってきた。

「里香ちゃん大丈夫?」
「わからないっ!なんで体が動かないの!?
由衣は下がってて!」

「友情ですかー美しいデスネー!そんな友情を壊すのが、一番楽しいデスヨネ♪」
「パラサイトミッション」
里香を心配する紫藤に、理解出来ない力で体の自由がきかない里香は、紫藤に下がっててと言う。そんな二人にマルクのあの非情な魔法が里香を襲う。
「え、え、体が勝手に動く、いや、なんで?」
「ど、どうしたの里香ちゃん、行っちゃダメだよ里香ちゃ!ウッ痛っなんで!?」
「ドン!由衣っ!違うの!体が勝手に..うぅ」
里香がマルクの元へ近くへ移動しはじめた事を止める紫藤に里香が手で紫藤をふっ飛ばす。まさかの里香の行動に困惑する紫藤。体が勝手に紫藤に手を上げた里香は必死に否定する。
「では!これより最高のショーを御見せしましょう。」
そう言ったマルクは自分の腰にあるロングソードを里香に渡す。
「や、やめろ、由衣逃げて!お願い!」
「え、え、里香ちゃん?や、やだ、怖いよ」
ロングソードを受け取った里香は紫藤の元に歩き出す。最悪のこの後の光景が頭によぎった里香は紫藤に逃げろと叫ぶ。
里香が剣を片手に近ずいてくる事に紫藤は恐怖を感じ動けない。
「や、やめて、」
「いやぁぁぁ」
里香が紫藤の前でロングソードを振り上げる。
「秋丸!打ち落とせ!」
「了解しました。プシュ!」
「キン!」
里香が振り下ろす前にやって来た秋斗が秋丸に里香の持っていたロングソードを打ち落とせと命令すると、秋丸君8号改の右腕から釘が飛び出しロングソードの腹に命中し里香の手からこぼれる。
「秋斗!」「柊君!」
「秋斗..貴方が柊秋斗君ですか。初めましてわたくしマルク・ローガンと申します。残念ながら貴方のお命貰い頂きに参りました。」

里香と紫藤は恐怖の光景から救った人物に目を向けた。そこにはずっと逢いたかった人がいた。とっさに名前を呼ぶ二人。その事で突然現れた少年が自分の探していた柊秋斗だと理解したマルクは母エリスの時と同じように自己紹介をし、命を頂くと言った。
「命を頂く?こっちの台詞だ。父さんだけじゃなく里香までキタネェ魔法なんか使いやがって、お前だけは必ず殺してやる。」
「ん?なぜ父親の事を知ってる?まぁいいです。どうせ殺しますから」

秋斗の言葉に父秋次にも同じ魔法を使った事を知ってる事に疑問を持ったマルクだったがどうせ殺すからと疑念を捨てる。

「秋丸殺れ!」
「了解しました。マイマスター」
秋斗が秋丸に命中する。
「プシュ、プシュ、プシュ、プシュ、プシュ。」
「グサッ、グサッ、グサッ、グサッ。」
「なっ!くっ」
秋丸君8号改により放たれた釘がマルク達を襲う。マルクは飛んできた物体をギリギリで避けるも部下全員は頭に刺さり一瞬で命を落とす。
「二人とも大丈夫か?」
「あ、秋斗ち、違うの体がっ!あっ」
「大丈夫。わかってる。あいつの魔法で操られてたたんだろ?父さんも同じだった...」
秋斗は里香と紫藤の元へかけよる。二人に怪我はないか確認する秋斗に紫藤を殺そうとしてた里香が違うと説明しようとしたが秋斗は人差し指で里香の口をふさぎわかってる。と言った。秋斗は側に落ちていたロングソードを拾うとマルクに体をむける。
「さぁ命を頂きましょうか?」
「ふ、ふざけるな!私はマルク・ローガンだぞ!ローガン家次期当主だあがぁ痛っだぁぁ!」
秋斗の言葉に自らの家系を口にするが、秋斗の命中で秋丸君8号改から放たれた釘がマルクの右太ももに刺さる。
「パラサイト」
「プシュ」
「な、なんで魔法が聞かない?こ、この世界の人間に魔力耐性は無いはず!?ウッがぁ痛てぇぇ」
「機械に魔法が効くかよっ!」
秋丸君8号改にパラサイトの魔法をかけるマルク、しかし効かない事に慌てるマルクに秋丸君8号から放たれた釘が左太ももに刺さる。
機械に精神魔法が効くはずないと秋斗が叫ぶ。
「パラサイトぉぉ」
「死ねぇぇぇ」
秋斗がロングソードを振りかぶる。
「なっ!里香っ!?」
「うぅ秋斗ごめん、か、体が....」
振り下ろす目の前に里香が飛び出してくる。ギリギリでロングソードを止めた秋斗に里香が涙ながら謝る。
「う、動くな、動いたらこの女は自ら首の骨を折って死ぬぞ。わ、わかったら動くなよ!」
「くそっ!里香を離しやがれ!」
「里香ちゃん!」
マルクの魔法で再度操られてしまう里香を人質に動くなと命令するマルク。里香をはなせと叫ぶ秋斗と心配する紫藤。
「闇と光が混ざる時、時空の扉は開かれる。
ゲート!」
マルクが呪文らしき言葉を唱えると教室が揺れだし魔方陣らしきものが足元に広がる。そして教室の隅がブレだし光と闇、対なる事象が混ざったかのような時空の裂け目が現れた。
「ま、まずい!行くな里香ぁ!」
「行かないで里香ちゃん!」
急な魔法に動きの止まってしまった秋斗。
マルクはその隙に里香を掴み里香一緒に時空の裂け目に逃げて行ってしまった。
「秋丸!追うぞ!」
「了解しました。マイマスター」
「ま、まって!柊君!」
消えたマルクと里香を追うため躊躇なく追う事を決める秋斗に紫藤が制止する。
「紫藤さん時間が無い。さっきより裂け目が小さくなってる。」
「わ、私も行きます。里香ちゃんは大事な友達ですから!」
「だ、ダメに決まってる!」「行ったらダメだ!」「け、警察がなんとかするよ!」

自分も一緒に行くと言う紫藤に秋斗が答える前にマルクがいなくなった事で緊張から解かれたクラスメイト達が紫藤を止める。

「黙って!」
「.....」
普段おとなしい紫藤の大声にクラス中が静まる。
「お願い..柊君、柊君が一緒じゃなくても私は一人でも行く。里香ちゃんは大事な大事なたった一人の親友だもん!」
「わかった。」
「戻ってこれるかわからない」そんな言葉を伝える必要が無い事を紫藤の瞳で感じ取った秋斗は一言「わかった」と返す。
「お、おい柊!しょ正気か?」
「紫藤さん、行っちゃダメだよ!」
クラス中の止める声を無視し、秋斗と紫藤、秋丸君8号改は消えかける裂け目の前にきた。
「行くよ!秋丸、紫藤さん掴まって」
「うん。」
「了解しました。マイマスター」
秋斗達は裂け目の中にはいった。


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