正反対の僕と彼女~2人の関係の行方~

梅谷シウア

page1 term 1~となりの君は~2/2

それからしばらくすると、待ちに待った体育祭。私は短距離走に出場するし、実行委員会としての仕事もあって午前中は忙しい。
 晴人の顔を見ると、この間の事を思い出してしまう。晴人は気にしてないだろう。午前中、私は晴人に突然応援され動揺して、挫いた足を引っ張りながら実行委員の仕事を何とかこなした。しかし昼休みには足に限界が来てしまった。
「泉さん、どうしたの? こんなところで」
「はっ、晴人?」
「えっ、ああ、うん。そうだよ」
「午前中の短距離走の時に足挫いたんだけど、そのまま忙しくて、痛みもなくて放置してたら」
 私は、赤く腫れあがった足を晴人に見せる。すると晴人は心配した様子で私を無理やり座らせどこかに行ってしまった。
 どこに行ったんだろ? 救護テントには熱中症気味の人たちの対応に追われてるから、無駄足なんだよなぁ。
 私は晴人がどこに行ったのかと考えを巡らせた。
 そして、数分。ようやく戻ってきた晴人は、コンビニの袋を持っていた。
「ごめん、お待たせ。ちょっと足を出してくれる?」
 晴人は椅子を持ってくると、私をそこに座らせコンビニで買ってきたと思われる湿布などで手早く私の足の手当てをしてくれた。
「大丈夫かな?」
「ありがとね、晴人。大丈夫だよ」
「うん。まあ、気にしないで」
 晴人は、そう言いながら自動販売機でスポーツドリンクを2本買って私に1本手渡してくる。私は悪くて受け取ろうとしなかったけど、晴人はいいからと渡して、どこかへ行こうとする。何を思ったのか私は晴人を引き留める。
「晴人ってさ、昼休みっていつもどこ行ってるの?」
「屋上にいるけど、それがどうかしたの?」
「いや、晴人の席使っちゃってるし、晴人いっつもどっかいってるからどうしたのかなって思って」
「ああ、なるほど。姉さんが屋上に入る方法を教えくれたから、いつも屋上でのんびり過ごしてるけど」
「そっか、よかった」
「席使ってるの気にしてるならそんなこと気にしないでもいいよ。それはそうとそろそろ午後の部始まるけど大丈夫?」
「もう仕事もないしのんびりしたいな。晴人、おすすめの場所ある?」
「じゃあ、体育館への渡り廊下とかどうかな?」
「じゃあ一緒に行こ」
 私は多少無理やりだったかもしれないが、晴人のおすすめの場所に晴人と向かった。私を助けてほしいと思った時に、色々してくれた晴人ともう少し一緒にいたかったのかもしれない。
「盛り上がってるけど、泉さんはここにいていいの?」
「私がいたら問題でもあるの?」
「いや、そういう訳じゃなくて。なんていうの、友達と一緒じゃなくていいの?」
「みんな他の団だし、たまには晴人と2人で話してもいいでしょ」
 晴人と泉はスポーツドリンクを飲みながら、下で行われている部活動対抗リレーを眺める。
「まあ、なに、聞くだけなら僕もできるけど」
「そっか、じゃあ聞いてほしいな」
「いいけど、どんな話?」
「部活の事で、色々あってね。」
「そっか、でも中学の頃からやってるんでしょ? 姉さんも泉さんのこと気に入ってるみたいだし、もう少し頑張ってみたら?」
 晴人は良く分からないけどと最後に付け足した。
「私って結華さんに気に入られてたの!?」
「うん、姉さんが気に掛けるなんてそうそうないし、かなり気に入られてると思うよ」
 そっか、よかった。と泉は少し肩の力が抜けたように返す。ふと下を見ると、部活動対抗リレーはアンカーに回っていた。
「また何かあったら、聞くぐらいはするよ」
「そっかじゃあ、そのときはよろしくね」
 こうして私と晴人は、体育祭の午後を共に過ごして終わったと思ったのだが、結華さんに声を掛けられて晴人のうちにやって来た。
「お邪魔します」
「はい、はい、いらっしゃい。ここがはるくんと私の愛の巣だよ。早く上がって上がって」
 いつもの事か、と思いながら私はリビングへとは入ってみる。するとドアを明けた途端いい匂いが漂ってくる。いい匂いの元となっている料理を作っていたのは晴人で、私は目を丸くした。
「これ、晴人が作ったの?」
「そうだよ、じゃあ僕は部屋に戻るね」
「えっ、なんで? せっかくはるくんの知り合いだけ呼んできたのに」
「じゃあ、少しだけね」
 そういって晴人も加わり、結華さん発案の打ち上げをすることになった。いい感じに盛り上がって来た時には、夜も遅く私たちは鎌ヶ谷家に泊まることになった。飲み物がなくなったので、買いに行くことになった晴人と、一緒にコンビニへと向かう。
「今日は姉さんがごめんね。迷惑じゃなかった?」
「うん、うん、楽しいし来てよかったよ」
「そっか、ならいいんだけど。これからも姉さんと仲良くしてあげてほしい」
「こちらこそ」
「おっ、そろそろ着くね」
「そうだね」
 私は店内に入ってすぐに頼まれていた下着と歯ブラシをかごに入れていく。しかし歯ブラシは1個足りなかった。
「泉さんの方は見つ、足りなかったか」
「うん、もう1軒寄ってみるよ」
「そこまでさせられないよ」
 会計を終えた晴人は、マンションの近くまで私を連れてってから、私に袋を渡してもう1軒のコンビニに向かっていった。
 私はその時晴人が言った「泉さんみたいな女の子をこれ以上一人で出かけさせるわけにはいかないから僕が行くよ」と言う言葉が頭の中を駆け巡っていた。
 晴人の家に戻ると結華さんが、ウィスキー入りチョコレートを食べ酔っぱらっていた。私も無理やり食べさせられ、気が付くと晴人の布団で寝ていた。
 まだ頭が痛い。翌日私はウィスキー入りチョコレートの二日酔いに悩まされながら、我が家へと帰った。
 いまだ、晴人の言葉が忘れられない。今まで何人にかわいいとか言われてきたけど、晴人のは強く私の頭に残った。

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