正反対の僕と彼女~2人の関係の行方~

梅谷シウア

#1 14.教育実習生~彼女はしっかり考えていて~その2

教育実習生が来てそろそろ1週間。晴人は教育実習生から解放され、いつも通りの日常を過ごしていた。
「どう? あの教育実習生とは仲良くなった?」
「晴人がそんなこと聞いてくるなんて意外。まあ仲良くなれたんじゃないかな。先生っていうよりかは、おせっかいなOGみたいな感じかな」
「なるほどねぇ。それもあって僕に絡んできてたのかな」
 晴人は、珍しく放課後に1人で教室にいた泉と話していた。
「悪い人ではないんだろうけどね」
「それはそうと、なんで泉さんはここにいるの? いや、居たら悪いってわけじゃなくて、部活があるんじゃないのかなって」
「今日はお休みなんだけど、友達は部活があってね」
「なるほど。って事はねえさんが帰ってるかも。あれ、推薦の話聞きに行ったんだっけ」
「相変わらず、結華さんに振り回されてるんだね」
 泉はこの間の打ち上げの事を思い出して笑いながら言う。
「もう十何年と振り回されてるから、慣れたよ」
「あれ、じゃあ今日は晴人遅くまで残れるんだよね?」
 晴人は携帯のツール一覧から、カレンダーを開いて結華が推薦の話を聞きに行っていることを確認してから頷く。
「僕は結姉が返ってくるまでに家にいればいいから残ろうと思えば残れるけど」
「じゃあ勉強教えて。もうすぐ試験じゃん。分かんないところあるから」
「別にいいよ。なにが分からないの?」
 晴人は泉の分からないところを説明していく。それからしばらくすると日も傾いてくる。見回りにやって来た高瀬先生が教室にやってくる。
「あら、泉さんまだ残って、お邪魔しちゃったわね。戸締りよろしくね」
「高瀬先生、誤解だから。ただ晴人に分かんないところ教わってるだけだから」
 そうですよ、先生の考えてるような関係じゃないですよ。と、晴人も言う。高瀬先生は半信半疑のようだが、勉強をしている机にやってくる。
「鎌ヶ谷くんって頭良いの?」
「普通ですよ。知ってることしか、僕は知りませんからね」
「この間の試験学年トップクラスだった晴人が何言ってるんだか」
「ただ運が良かっただけだよ」
「運だけで90点台が取れたら苦労はしないって」
「たまたま前日勉強したところが出ただけだよ」
 晴人のノートを高瀬先生は開いてみる。ノートの中身は文字と矢印だけでぐちゃぐちゃにまとめたものだった。
「これ、分かるの? 汚いじゃんこのノート」
「誰かに見せる訳じゃないし、自分が分かればいいんだよ」
「それは先生が困るんじゃないかな?私にこのノートを提出されても困るよ」
 高瀬先生は本当にぐちゃぐちゃなノートを見ながら言う。
「提出用のノートは後できれいにまとめたのを出してますよ。これです」
 晴人は鞄の中からもう1冊のノートを取り出す。そのノートの中身は、先ほどのノートを書いた人と同一人物が書いたものとは思えないほどに、綺麗なものだった。
「本当に頭がいいんだって思わされるね」
「そんなことないですよ。見やすいならそのノート貸そうか?」
 晴人は泉に綺麗にまとめたノートを渡すとそれを使って説明していく。
「鎌ヶ谷くんは、教えるのも上手だね」
 結華が返ってくる少し前まで晴人は泉の分からないところを教えて解散になった。
 そんなこんなで金曜日。晴人はいつものように屋上で昼食を食べていた。
「あなたがここに来るのも久しぶりね」
「教育実習生に振り回されたり、雨が降ってたりでここに来れなかったからね」
「そういえばあなたのクラスに教育実習生が振り分けられたんだったわね」
「そうだよ。教育実習生が配属されたときに日直だったのもあって、教育実習生とは結構話すよ」
 ふーん。と興味なさそうに習志野は弁当を食べる。
「この場所って平和でいいよね」
 のんびりと昼食を食べられることが、晴人にとってはかなり久しぶりだった。

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