黒套の復讐者

幻日刀飛

真円

ラインはクエストを終えると、食料を買いフー老子の元に向かった。
「フー老子お願いします。」
「ふむ、どこまでできるようになったかの」
と小さく呟く。

ラインは一礼し素早く構え集中状態に入る。
そしていつもの速攻だ。
1歩目の踏み込みで地面が少しめり込む、その瞬間にトップスピードでフー老子に突っ込む。
今回は左右にステップも入れず単純に最短距離で詰める。
まずはしゃがみ下段回し蹴りからの下、中、上の三連蹴り、これは見事にさばかれる。
ラインは短く息を吸い怒涛の連続突き、だが速いだけの連続攻撃はフー老子には通じない。
そこに祖父との修練を重ねる。祖父との組手でもラインの連続攻撃はことごとく振り払われていた。

じいちゃんの動きを思い出せ!

ラインの動きは一気に速度が落ち祖父の動きを一生懸命トレースする。
すると今までさばかれていたラインの攻撃がかすり出した。
「ほっ、ほっ、ほっ、んっ、ほっ」
フー老子は遅くなったはずの攻撃を数発さばけなくたまらず距離をとる。
「ボウズ、気のことはまだまだだが今の動きはよかったぞ。」
「はっはい。ありがとうございます。」
ラインがお礼を言う
「こりゃ、油断は禁物じゃ。」
褒められてラインは嬉しくなりつい気を緩めてしまった。
次の瞬間には壁に吹っ飛んでいた。
「今日はここまでじゃ。」
「はっはい。...」

「ボウズは真円流じゃな。」
「えっ?」
ラインはきょとんとする。
「技等は伝承されとらんようじゃが、素体は素晴らしい。」
「そんなことまでわかるんですか?」
「普通の修練方法とえらく違うようじゃな。どこの指南所で学んだんじゃ?」
「あっ、いえ祖父に稽古をつけてもらってただけです。流派とかも知りませんでした。」
「なるほど、じゃから真円流の動きではなかったのか、おぬしの祖父はなかなか粋なことをしよるな。」
「どういうことですか?」
「真円流は分流の中では充分に強い、じゃがボウズの育て方はどんな戦闘技術も取り込めるようにベースだけを完璧に仕込んだって感じじゃな、おそらく格闘技だけで留まらずあらゆる武器を扱えるようにする為じゃないかの。」
「...でももう祖父はいません。...なんで真円流だと思ったんですか?」
「そうか...それは残念じゃな、ボウズの最後の動きは紛れもなく真円流のそれじゃったよ。さすがのわしもさばききれなんだ。」
「あれは祖父の動きを再現しようと一生懸命してみました。」
「なるほどの。気の方は結局まだまだじゃが、まさか真円流じゃったか。」
「円を意識するんじゃ。」
「円ですか?」
「歩法から型、攻撃の起点、技の繋ぎ、さばき、防御。真円流はすべて円を基本とし真円の軌道を体得して初めて威力が発揮されるのじゃ。」
「おぬしは技はひとつも教えてもらっとらんのか?」

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