ロリポップ

詩歩

1章 はじまり


「ねえ、南ちゃん。遊びに行かない?」

3月の暖かな昼下がりの

隣にしゃがむ彼はまっすぐ見つめてこういった。

ここはバイト先。小さなデリバリーのお弁当屋さん。
さっきまでなんてことない他愛ない話をしていたはずなのに突然の誘いだった。

「えっ…いや、え?」

返事をする間も無く注文の電話が入り慌てて立ち上がりその場を離れた。


お弁当を詰めながらぐるぐるとさっきの言葉が頭をめぐる。

誘ってくれた彼は吉野孝太さん。23歳だ。
私は高校を卒業して間もない18歳、つまり5つ上だ。

吉野さんから見れば私なんて子どもなはずだ。

そもそも吉野さんとそんなに仲がよかった記憶もない。

私はバイト先では調理係のキッチン
彼は配達係のドライバー

確かにちょいちょい話してはいたけれど一体どういう風の吹きまわしだろう。


バイトから帰っても頭はそのことでいっぱいだ。
私は決してモテるタイプではない。
地味で美人でも可愛くもなく、面白いわけでも頭がいいわけでもない。

ベッドの上で1人悶々としていると
メッセージアプリが音を立てた。

相手は吉野さんだった。

ドキドキしながら開くと

『暇なとき話したいな!』

と送られていた。

既読をつけてしまったものの、なんて返事をすればいいかわからず、同じバイト先であり
同級生であり親友の結衣に咄嗟に電話した。

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