ネトゲ廃人、異世界攻略はじめました。
プロローグ
音速を超えた速度で迫る、無数の銃弾。
その中の一つが僕の頬を浅く掠めた。
できるだけ姿勢を低くし近くの柱にさっと身を隠す。
ちらと傷の部分を見れば、赤色のダメージエフェクトがそこに表示されていた。
視界左下の体力ラインは61%となかなかに低い数値を示しているが、今現在回復系のアイテムは手持ちにない。
体力回復は無理と判断し、敵をできるだけ早く仕留めることに意識を集中する。
柱から少しだけ顔を出し、銃弾の飛んできた方向を見やる。
そこには、大型のガトリングガンを腰だめに構え、背にはロケットランチャーを装備した、重装のいかつい男の姿があった。
しかし、彼がいるのは僕がいるビルとは別のビル。
このステージは、向かい合った二つの高層ビルからお互いに撃ち合うというなんとも男心をくすぐってくるステージだ。
廃墟となり、コンクリートと鉄筋だけとなったビルとビルの間は約30メートルほど。
そこからひたすらに連射速度の速いガトリンガンから狙われ続ければ手も足も出しようがない。
また、そんな状況にも関わらず、僕の武装はコンバットナイフのみという、なかなかに鬼畜な戦況だ。
「これは、賭けに出るしかないか……」
ぽつりと一人呟いて、僕は足元にあったコンクリート片を拾う。
それを、ゆっくりと横に投げた直後、僕はその逆方向に全速力で走り出した。
投げたコンクリート片が多少のかく乱にはなったようで、敵の射撃開始がコンマ数秒遅れた。僕はそのすきにいくつかの柱の横を走り抜け、階段まで抜ける。
背中の数センチ後ろを大量の銃弾が通り抜けていく恐怖に耐えながら、僕は上へ上へと上っていく。
4階分ほど上に上がったとき、急にガトリングガンの銃声が止んだ。
この世界のガトリングガンはその構造上、上下の射角は制限される。
したがって、ビルの五階分も高低差がついてしまうと下から上を狙うことはできなくなってしまうのだ。
普通ならここで、僕がライフルを引きぬき上から下に撃ちおろして勝利――となるのだが、今の僕にそんなライフルなんてものはない。
再び僕は手ごろな柱に背中を預ける。
そして、カウントをする。3……2……1……
ゼロ。
そのタイミングで僕は柱を飛び出し、敵がいるビルの方向へ走り出した。
そして、そのまま速度を緩めることなく大きな窓から飛び出す。
僕が窓の淵を蹴ったその数瞬後に、敵は背中にあったロケットランチャーを撃ち放った。
――タイミングはばっちり。あとは――
持ち得る力をすべて出し切って窓から跳んだ僕。
しかし、飛距離が足りない。僕はビルとビルの半ばめがけて落下を開始する。
ふわりと身を包む浮遊感。忠実に再現された下向きのGを全身に感じながら、僕は落ちる。落ちる――
――落ちる――僕の足元に、あのロケットランチャーの弾頭が飛んできていた。
全身の感覚が拡大し、時間さえゆっくり流れているように感じる。
すれ違うたった、一秒にも満たない時間。
僕はその間に、弾頭へ右足を着け、そして思いっきり蹴った。
落下していた僕の体は再び運動エネルギーを取り戻し、敵のいるビルへ一直線で飛んでいく。
こんなこと、現実世界じゃありえないだろう。でも、この『仮想の世界』では、不可能が可能になるのだ。
驚嘆、恐怖に染まる敵の表情。
そりゃあ、敵がロケットランチャーを踏み台にして飛んでくるなんて芸当を見せれば、驚きもするだろう。
だから、僕は思いっきり笑って、ナイフを前に突き出す。
そして、その剣尖が敵の胸に触れる瞬間。
「GG!《グッド・ゲーム》」
そう称賛の言葉を口にし、この勝負に終止符を打った。
その中の一つが僕の頬を浅く掠めた。
できるだけ姿勢を低くし近くの柱にさっと身を隠す。
ちらと傷の部分を見れば、赤色のダメージエフェクトがそこに表示されていた。
視界左下の体力ラインは61%となかなかに低い数値を示しているが、今現在回復系のアイテムは手持ちにない。
体力回復は無理と判断し、敵をできるだけ早く仕留めることに意識を集中する。
柱から少しだけ顔を出し、銃弾の飛んできた方向を見やる。
そこには、大型のガトリングガンを腰だめに構え、背にはロケットランチャーを装備した、重装のいかつい男の姿があった。
しかし、彼がいるのは僕がいるビルとは別のビル。
このステージは、向かい合った二つの高層ビルからお互いに撃ち合うというなんとも男心をくすぐってくるステージだ。
廃墟となり、コンクリートと鉄筋だけとなったビルとビルの間は約30メートルほど。
そこからひたすらに連射速度の速いガトリンガンから狙われ続ければ手も足も出しようがない。
また、そんな状況にも関わらず、僕の武装はコンバットナイフのみという、なかなかに鬼畜な戦況だ。
「これは、賭けに出るしかないか……」
ぽつりと一人呟いて、僕は足元にあったコンクリート片を拾う。
それを、ゆっくりと横に投げた直後、僕はその逆方向に全速力で走り出した。
投げたコンクリート片が多少のかく乱にはなったようで、敵の射撃開始がコンマ数秒遅れた。僕はそのすきにいくつかの柱の横を走り抜け、階段まで抜ける。
背中の数センチ後ろを大量の銃弾が通り抜けていく恐怖に耐えながら、僕は上へ上へと上っていく。
4階分ほど上に上がったとき、急にガトリングガンの銃声が止んだ。
この世界のガトリングガンはその構造上、上下の射角は制限される。
したがって、ビルの五階分も高低差がついてしまうと下から上を狙うことはできなくなってしまうのだ。
普通ならここで、僕がライフルを引きぬき上から下に撃ちおろして勝利――となるのだが、今の僕にそんなライフルなんてものはない。
再び僕は手ごろな柱に背中を預ける。
そして、カウントをする。3……2……1……
ゼロ。
そのタイミングで僕は柱を飛び出し、敵がいるビルの方向へ走り出した。
そして、そのまま速度を緩めることなく大きな窓から飛び出す。
僕が窓の淵を蹴ったその数瞬後に、敵は背中にあったロケットランチャーを撃ち放った。
――タイミングはばっちり。あとは――
持ち得る力をすべて出し切って窓から跳んだ僕。
しかし、飛距離が足りない。僕はビルとビルの半ばめがけて落下を開始する。
ふわりと身を包む浮遊感。忠実に再現された下向きのGを全身に感じながら、僕は落ちる。落ちる――
――落ちる――僕の足元に、あのロケットランチャーの弾頭が飛んできていた。
全身の感覚が拡大し、時間さえゆっくり流れているように感じる。
すれ違うたった、一秒にも満たない時間。
僕はその間に、弾頭へ右足を着け、そして思いっきり蹴った。
落下していた僕の体は再び運動エネルギーを取り戻し、敵のいるビルへ一直線で飛んでいく。
こんなこと、現実世界じゃありえないだろう。でも、この『仮想の世界』では、不可能が可能になるのだ。
驚嘆、恐怖に染まる敵の表情。
そりゃあ、敵がロケットランチャーを踏み台にして飛んでくるなんて芸当を見せれば、驚きもするだろう。
だから、僕は思いっきり笑って、ナイフを前に突き出す。
そして、その剣尖が敵の胸に触れる瞬間。
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