異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第149話 これからのようです

 皆のステータスを確認した俺は部屋から出て、魔王様がいるであろう所を探す。

 魔王様はこの時間であれば朝食を取っていると思う。多分食堂にいるだろう。

 俺は食堂に向かった。

 食堂からは朝食のいい匂いが立ち込めていた。寝起きの俺でもすぐに食事を取りたくなるくらいだ。

 そんな食堂を覗くと、食事を取っている魔王様の姿が見えた。

 やっぱりここであってたみたいだな。

 俺は魔王様のいる食堂の中へ入った。

「おはようございます」

「おはよう。よく眠れたかな?」

「えぇ。とてもよく」

「それは良かった。どうだい、一緒に食事なんて?」

「そうですね、俺もいただきます」

 俺は魔王様の正面の席に座る。今回の朝食はパンに野菜やハムをはさんだサンドウィッチに、サイコロ状に小さく切られた肉の入ったポトフだった。

 俺は手を合わせてからそれらを口に運ぶ。

「……どうだい?口に合うかな?」

「とても美味しいです。特にこのパンがほかのパンよりしっとりしていて、野菜に合いますね」

「おぉ、分かるんだね!そう、このパンは私が試行錯誤の末に作り上げたパンなんだ!いやー分かってくれたようで嬉しいよ」

 このパン手作りなのか、驚きだな。試行錯誤したって事は相当時間かけて作ったんだろうな。いつか俺もやってみたい。

 そんな事を考えながら魔王様お手製のパンで作られたサンドウィッチを頬張っていると、食堂にさっきまで寝ていた皆が入ってきた。

「起きたようだね」

「皆、おはよう」

 みんな寝ぼけているのか挨拶が生返事が返ってきた。しかし、その中で二人ほど目を光らせている人がいた。

 まぁ当然のようにミルとゼロですね。この二人だけは朝食と知ってテンションが上がっている。

「「「いただきます」」」

「はむっ……。こ、これは……」

「とってもおいしーのー!」

 他の皆も同じ反応を示したので魔王様はとても嬉しそうだ。

 それから皆んなで談笑しながら食べた朝食を終え、今後の事について話をすることになった。

 初めに全く関係はないが、魔王様と俺達に時間のズレがある事を教えて貰うことにした。昨日教えてくれるという事だったしな。

「時間のズレの原因は君達が何かしらのトラップにかかったからだって推測できる。多分そのトラップは別の次元に跳ぶんじゃないかな?」

「転移トラップにかかっていました。多分このトラップだと思います」

「それだね。別次元の時間はこちらの時間と切り離されて、それぞれ別々に進んでいると思う。恐らく別次元の方が遅いんだろうね。時空魔法でも使っていたのかな?」

「という事は、俺達は逆パターンの精神と時の部屋に飛ばされたということですね」

「なるほど、そういう事だったのね。それなら私にも分かるわ」

「その、精神と時の部屋と言うのがどういうものなのか分からないけど、分かってた貰えたなら良かったよ」

 精神と時の部屋は時間の進みが違うからな。多分それと同じだ。ただ進む時間が遅いか早いかの違いがあるだけだ。

 ジュリ以外の皆は分かってないみたいだから後で教えてあげよう。

「じゃあ、次は戦争について話してもいいかな?」

「はい。お願いします」

 俺達がいなかったこの世界での一週間で決まった、聖国が戦争を仕掛けるという話だ。しっかり聞いておかなければ。

「昨日話したように聖国は、王国と帝国に宣戦布告をしかける。だけど宣戦布告をしかける事を決めたのは教皇だけなんだ」

「聖王は戦争をするつもりは無いということですか?」

「むしろ、平和的に交流出来たらいいと思っている穏健派だよ。だけど聖王は今現在教皇に拉致監禁され、教皇の地下深くに捕えられている。これによって聖国のトップは聖王から教皇となって、最終決定が教皇によってなされる事になったんだ」

「そこまでして戦争を……。しかし俺にはなぜそんなに戦争を起こしたがるのか分からないんですが……」

「使い魔からの情報だと"復讐"らしいよ。それが誰に対してなのかまでは分からないけどね」

 復讐の為だけに戦争を起こす……。そんな馬鹿みたいな理由で一体どれくらいの損害が出るのか分かっているのだろうか。

「この戦争を未然に防ぐ為には、ヨハンを捕らえるもしくは殺すしかないだろう」

「ヨハン……聖国の教皇……。勇者を操るほどの力の持ち主。俺達で対処しきれるかどうか……」

「いや、君の内なる力が解放されれば一人でヨハンを捕らえる事が出来るだろう。……でも君の力の解放にはまだ因子が足りてないように思える」

「因子?」

「そう。君以外の仲間達はその因子が揃い、強く願った事で力を得たんだと思うよ。私に分かるのはその因子がなんなのかだけだけどね」

「……パパ。あたしの因子ってなんだったの?」

「一番強いのが仲間を思いやる事だね。それはミルの因子だけじゃなくて力を得た皆の因子も同じだよ」

「じゃあ俺の因子はどうなんですか?」

「君はまだ力を得ていないから教えることは出来ない。もし教えてしまったら君はもう成長出来ない」

「そうですか……」

「……だけど、一つアドバイスをしてあげよう」

 そうして魔王様から出た言葉は俺に衝撃を与えた。

「"乗り越えろ"」

 俺の因子を知っているであろう魔王様は俺の過去をそれから推測したのだろうか。そして、俺が未だに過去に縛られていることを知ったのだろうか。

「私から言えることはこれだけだよ。多分君が一番よく分かっていることだとは思うけどね」

「……はい。そうですね」

「ねえねえマスター、乗り越えるって何を乗り越えるのー?大きい石ー?」

「そうだな……俺が乗り越えることが出来た時に教えてあげるよ」

「えー。……でもマスターが言うならしょうがないかー」

「すまないな。これだけはどうしてもな」

 俺は自分の過去を乗り越えなければならないらしい。恐らくは俺のトラウマとなっている二つの事だ。乗り越えるのは難しいだろうが乗り越えなければならない。意地でも乗り越えてやる。

「…………君の本当の因子は違うんだ…………君が力を得る事は絶望的なんだ……本当にすまない……」

「魔王様?なにか言いました?」

「いや、頑張って欲しいと思ってね」

「ありがとうございます。ちゃんと乗り越えて力を得ます」

 俺は自分の過去を乗り越える事を決めた。何をどうすればいいのか分かっていないが色々やっていこうと思う。

「話を戻すよ。君達には教皇を捕らえるもしくは殺すために、聖国に向かってもらいたい。もちろん最優先事項は教皇だけど、聖王の奪還も考えておいて欲しい。すこしきついかもしれないけどやってくれるかい?」

「はい。やらせていただきます」

「私の国が危ないのだもの当然私だってやるわ」

「帝国も危機に晒されるから皆を守る為私もやる」

「私達元々魔物だった者は主様と共に行動致します。主様かやるというのなら私達もやります」

「パパの頼みなら断れない。任せて」

「まぁ私みたいな女神がいれば安心だろうし私も一緒について行ってあげる!」

「ありがとう」

 皆も俺と一緒に聖国に行くようだ。皆、戦争を止める為に頑張ってくれるようだし、俺もやるしかないだろう。

「聖国には私が送るから、今日はゆっくりするといい。十分に疲れを取ってくれ」

「ありがとうございます」

 こうして俺達がすべき事が決まった。

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