異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第140話 休息のようです

ーside:主人公ー

 俺がここにいない皆に念話を飛ばす。フェイは念話を持っていないので、ここはミルに頼るしかない。

『皆無事か?』

『えぇ。私とレン、それにミルとフェイも無事よ』

『もしかしてそっちも合流できたのか?』

『そうよ。と言ってもついさっき会ったばかりなのだけれど』

『そうか、大丈夫そうで安心した。丁度俺達もゼロ達と合流出来たところだ』

 ジュリ達もしっかり合流していた。あっちのまとめ役はジュリがしてくれるだろうし心配はない。

『それでジュリ達は今どんなところにいるんだ?』

『壁が地面で地面が壁で……。上に落ちる石に宙に浮く岩……。こんなのなんていればいいのかしら?』

『……反転世界とか?』

『それがしっくりくるわね。まあそんな所にいるわ』

 ジュリ達がいる所は色々と物理法則が成り立っていないようだ。もしかしたら魔法の力が作用しているのかもしれないな。

『それで、そう言うあなた達はどこにいるのよ』

『宇宙』

『えっと……宇宙ってあの宇宙かしら?』

『そうだ。あの宇宙だ。しかし、宇宙と言っても息できるし、透明な地面があるし、超巨大な鯨が泳いでたりするからなぁ』

『そっちも大概みたいね』

『言われてみればそうだな。でも綺麗だーって言って俺以外の皆が見とれてるからな。あまり気にしてない』

 特に鯨を見た時は凄かったな。今ではゼロやリンめも鯨の存在に気付いて言葉を失ってる。

『羨ましいわね。こっちは重力が変になってるから、レンとかミルが飛び回ってるわ』

『そっちは楽しそうな感じじゃないか。俺はそっちが良かったぞ』

 重力が変になってる所だったらいつもは出来ない事とか試してみたい。戦いとかはちょっとやりずらいだろうけどな。

『あ、そういえばこんな事を話すために念話したんじゃなかった』

 全員の無事を確認した今、皆に伝えておかなければならない事がある。

『皆聞いてくれ。恐らく皆もだと思うが、トラップや過酷な環境、それに強敵と戦ってきた。時間的に言えば既に一日が過ぎようと言うところだ。ここで皆に質問。今日寝た人いる?俺は寝てないんだが』

『わたしとリンは寝てなーい!』

『私とレンも寝てないわ』

『あたしとフェイも』

『全員寝てないんだな。ならここで提案なんだが、土魔法で簡易的な家を作ってそこで休息を取らないか?寝てないと今後がきついかもしれん』

 俺は力を使ったり、走り回ったりでヘトヘトだ。だから寝たいと思っている。そうすれば疲れが少し無くなるはずだからな。

『そうね。ここら辺なら間ものも出てこないでしょうし丁度いいわね』

『あたしはもう少し遊んでから』

『そこら辺は好きにしてくれて構わん。だが、遊んだ後はしっかり休んどけよ?』

『ん』

『よし。じゃあ俺からは以上だが、他になにかある奴いるか?……いないな。じゃあさっそく家作りを始めるか』

『分かったわ。こっちも家作り始めることにするわ』

 そうして念話を切って、ゼロとリンに向き合う。

 さてと、どんな家を作ろうかね。簡易とは言ったが作ったものが酷いと休息でも何でもなくなるからな。少しはいいものを作りたい。

「今から家を作り始めるが、どんなものにしたいとかそう言う希望はあるか?」

「お城のベッドがいいー!」

「わ、わたしもふかふかなところで寝たいですっ」

「これは男の見せどころだね!頑張って!」

「あのベッドは無理だが、どうにかしてみよう。最悪、硬いところの上で寝ることになるな」

 俺もそんなのは嫌だが、寝れないよりはマシだろう。とりあえず、家の外形だけでも作っておくか。

 あれをこうしてああすればっと。まあこんなもんだろう。

 出来たのは平屋。まぁそこまで広くはないが、四人と一匹が寝るくらいはどってことないくらいの大きさだ。

「おお!マスターすごい!」

「外形だけだから内装は空っぽだがな」

「じゃあ私達で作っちゃおっか!」

「はいっ!」

 そう言って中に入っていく三人。楽しそうで何よりだ。

 さて、俺の方だが今から柔らか素材で作るベッドの開発をしようと思う。候補は二つ。

 一つは水魔法をどうにかして、ジェル状にして固め、弾力のある膜で包むという案。

 そしてもう一つが、結界魔法をベッドの形にした状態で、柔らかくするという案。

 どっちもどっちだが、簡単な方は後者だろう。前者の弾力のある膜なんてどこにもないからな。

「じゃあ結界で作ってみるか」

 そう言う事でまずは結界をベッドの形に張る。長方形で角張っていて硬い。このままだと土と何ら変わりはない。むしろ結界の方が硬いくらいだ。

 さて、これを柔らかくする為にはどうすればいいんだろうか?張ってしまったらもう変更出来ないし、やはり張る前にやらなければいけないのか?

 まあいいやそのへんは創造のスキルに任せよう。俺は柔らかい結界をイメージすればいいんだし。

 俺は柔らかい結界をイメージして、再度結界を張った。するとさっきまでの、角張ったやつではなく、楕円ぽい感じになった。

 そして、見ているだけで分かる圧倒的プルプル感
プリンのように震えている。

「成功してしまったか……。自分が恐ろしいぜ……」

 とまあ冗談はさておき、プルプルしている結界に触れたところ、いい感じの弾力で寝るのにピッタリくらいの硬さだった。

「これなら皆喜ぶだろう。じゃあ家の中で同じのを作るか」

 そして、自分で作った家の中に入る。すると中はさっきまで何もなかったのが嘘のように装飾されている。

「ここはテーブルね!」

「分かったのー!」

 そう言ってどんどん作られていく装飾品。まあこれくらいは好きにさせておこう。

 そうして俺は皆の分のベッドを作って、その内の一つに寝転がった。

 あぁ、いい感じだ。自分の才能が恐ろしいぜ。まあ想像のおかげなんですがね。

 そんな事を考えながら、俺は眠りについたのだった。


◇◆◇◆◇


ーside:ジュリー

 あの人からの念話が途切れてすぐのこと。

「皆、遊ぶのを一旦やめて家を作るわよ」

「ん」

 ミルとレンが遊ぶのをやめて集まる。

「ではどんな家を作りましょうか?」

「あのー。話が全く分からないんですけど……」

 そういえばフェイは念話が使えないんだった。

 私はフェイにさっき決まった事を教えて、どうするか聞いてみた。

「それなら簡易的なものでいいんじゃない?どうせ寝るだけしか使わないんだし、豪華にする必要も無いだろうし」

「あたしも賛成」

「私も皆さんと同じ意見です」

 まあそうよね。私もここで家を作るなら簡易的なもので充分だと思う。

「じゃ、あたしが作る」

 ミルがそう言って作った家は家とは言えないほどだった。本当にただ寝るだけの場所のような感じだ。

「中に樹木魔法で作った蔓のハンモックを四つかけておいたからそれで寝て」

 さっきの間にで、樹木魔法も使ってハンモックを作るなんてすごいわね。さすがミルといったところかしら。

「あたし遊んでくる」

「あ、私も少し遊んでいきます。この中で自由に動けるようになりたいので」

「そう言うことなら皆で鬼ごっこをしてみたらどうかしら?四人でやればまあまあいい感じになると思うわよ」

「ん。じゃあそれで」

「私も数に入ってるんだね。まあやるからには本気だすけどね」

 そうして私達は特訓という名の鬼ごっこをはじめたのだった。

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