異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第130話 謎かけを解くようです

ーside:主人公ー

「はぁはぁ、ふぅ……」

「色々お疲れ!よく魔物の殲滅に、虫の大軍、毒の粉を飛ばす花に、ハリケーンが突如発生するとか色んな罠を生き延びたね!」

「う、うるせぇ……!お前が手伝わないから死にかけたんだぞ……」

「実際問題、私何も出来ないし仕方がないよね!」

 一切悪びれる様子もなしに受け答えをする女神。こいついっぺん殺してやろうか……!

「まあ一旦落ち着いたんだしここら辺で休憩を……ってあれ何?」

 俺が密かに殺意を女神に向けていると、女神が俺の方ではないどこかを見てそんなことを言った。

 俺もその方を見てみると、看板のようなものが立っていた。

「看板か……?」

「そうみたい。あ、何か書いてある。どれどれ……」

 看板に近付いた女神が読み上げた文章はこのようなものであった。

『未来を望む者、天を臨む。天に極めて近き所にて宙を舞う。されどその者、天に羽ばたかず地に落ち、新天地へと旅立つ』

 謎かけか。これの意味をまんま読み取ると、空を飛びたかった人が、無謀にも宙に飛び出して落ちて死んだって事になるのか?

「女神は、これが何を示唆していると思う?」

「大方、次に進むためのヒントだと思うけど……」

「けど?何か心配なことがあるのか?」

「罠の可能性もあるかなって」

「その可能性もあるのか……。まぁ罠だとしてもやらなければ分からんからな。やるだけやってみるか」

 俺と女神はこの謎かけについて、思考を巡らす。まぁ俺には推理のスキルがあるからそっち頼りなんだがな。

「まず、この未来を望む者って言うのは恐らく転移トラップから抜け出そうとしている人の事だろう。よってこれは俺達だと言うことが分かる」

「じゃあこの天に極めて近い所って言うのはどこになるの?」

「恐らくあれだろう。ここからでも見える高い一本杉」

 ずっと気にはなっていたが、アニメでよくある野原に一本だけ立っている高い木っていうシチュエーションで、不思議と違和感はなかったんだよなあ。

「じゃああそこから飛び降りて地面に激突すれば次に行けるってこと?」

「まぁそうなるだろうな」

「じゃあ行ってみよう!」

 俺と女神は転移で一瞬にして一本杉の元まで来た。ついでにてっぺんまで行くのにも転移を使って時間の短縮を謀った。

「ここからの眺めは最高だな。だが……」

「とっても綺麗ね!でも……」

「「花とか木の配置が魔法陣になってるのはちょっと……」」

 前に魔物から逃げる時に空を飛んだが、その時は逃げる事で精一杯で下なんて見てる暇がなかった。実質上から下を見渡したのはこれが初めてだ。

「多分この魔法陣が次のステージへの扉と言うわけだな。あの謎かけでいう新天地がそれだ」

「でもどうやってこの魔法陣発動させるの?」

「そこなんだよなぁ」

 そこまでの推理はできても、実際にしなければならないことが分からない。

「ニャ!」

「あ、おい!シロ待てっ!」

「ちょ!落るぅ!」

 俺がいきなり飛び出したシロに手を伸ばした時、一本杉から離れ下に落ち始める。女神はそれに巻き込まれるようにして俺と同じく下に落ち始める。

 俺達が落ち始めると、花や木が少しの間輝い出したのが分かった。

 そうか!そういう事か!

「は、早く飛んで!地面にぶつかって死んじゃう!」

「女神落ち着け!このままで大丈夫だ!後は転移するはずなんだ!」

 俺達が落ちるに連れてどんどん輝きを増していく花々や木々。

 そうして地面スレスレまで来た時、俺はここに飛ばされた時と同じ、光に包まれた。


◇◆◇◆◇


ーside:ゼロー

「ぜ、ゼロちゃんっ。もう疲れたよ……」

「リンはだらしないのー!そんなんじゃ強くなれないのー!」

「は、走るだけで強くはなれないからっ」

「さぁどんどん行こー!」

「ゼロちゃーんっ!置いてかないでー!」

 リンは体力がなくて、ちょっとだけふにゃふにゃしてる。リンは強いのにあんまり強そうに見えないから特訓して強く見せないと!

「はやくはやくー!……およ?」

「待ってー!……ゼロちゃんどうしたの?」

 わたしがリンに特訓をしてたら、わたし達がいる海と海の間の一本道の途中に看板らしき物を見つけた。

「な、何か書いてあるよ?」

「わたしが読んでみるね?」

「う、うん」

 わたしは看板に書いてあったやつを読み上げる。

『大海を二つに穿つ大いなる道筋が大海に飲まれた時、未だかつてない力を持った巨人が現れる。勇気ある者、その巨人に挑み敗れ飲み込まれた時、新たな境地へと達す』

「んー?よく分からないのー?」

「謎かけ……なのかなぁ?」

「謎かけって何ー?」

「えっと、それはね……ひゃっ!」

「わぁー!道が沈んでいくのー!」

「道が沈んでるんじゃなくて、海が上がってきてるんだよっ!早く逃げないとっ」

 足から膝、太もも、腰の順番でどんどん沈んでいく。

「ゼロちゃん捕まってっ!」

「うん!」

 わたしはリンの背中に抱きついて、おんぶの状態になった。

「飛ぶからしっかり捕まっててね!」

「分かったー!」

 そうしてリンが宙に飛び上がった時、すぐ近くで大きな波が起きて、そこから大きな人が出てきた。

「巨人っ!?さっきの看板に書いてあったやつだとしたら……」

「リンどうしたのー?」

 リンはさっきから独り言を言って、何か考えているみたいだった。

「ゼロちゃん。わたし達は多分あの巨人に飲み込まれる事になると思う」

「えぇー!飲み込まれちゃうのー!?」

 いきなり何を言うかと思ったら、あの巨人に食べられちゃうって!

「飲み込まれないと先に進めないと思うから、わたしを信じてあの巨人に食べられて!わたしも一緒だから!」

 リンは本気の目をしてた。だからわたしはリンを信じる事だけをする。

「分かったのっ!二人であの巨人に食べられるのっ!」

「うんっ!じゃあ行くよっ!」

 わたしとリンは巨人に特攻して、返り討ちに合う。そして、巨人はわたし達を捕まえて口の中に放り込んだ。

「うぇえ……ネバネバして気持ち悪いの……」

「く、くちゃい……」

 口の中で転がされたわたし達は奥に流し込まれた。

 するとだんだん白い光に包まれてきて、最後には目の前が真っ白になった。


◇◆◇◆◇


ーside:ミルー

「宝箱みっけ」

「もうこれで十五個目だけど、そんなに持てる?」

「大丈夫。土魔法を使えば荷台も造れる」

 あたし達は遺跡の中を探険し始めて通算十五個目の宝箱を開けた所だった。

 ここまでに何回か罠が発動したけど、全てあたし達の小さい体でどうにかなった。小さい体が嫌だったのに皮肉なものだと思う。

「じゃあ最後はこの大部屋ね」

「ん。早く行こう」

 あたしはどんな宝箱があるのかわくわくしながら大部屋の扉を開けた。でもそこにあったのは宝箱でもなく金銀財宝でもなく、ただ一つの看板だった。

「あぁ、やる気失くした」

「ミルってほんとに気分屋よね。ほんのちょっとしか一緒にいないけどそれがよく分かる」

「えっへん」

「別に褒めてないから。それよりあの看板何か書いてあるけど、えっと……?」

 素っ気ないフェイに寂しさを感じなからも、フェイの言葉に耳を傾ける。

『欲深き富豪、世界中から財宝集めたり。その富豪の死す間際、己の矮小さを嘆き真実の愛を求める。愛情深き信徒がこれを示し、富豪が輝く世界へと誘う』

 むむ。これは謎かけ。意地でも解かないと負けた気になる。

「謎かけにしては昔話っぽいけど……」

 するとこの部屋のどこからかあたし達以外の声が聞こえ始めた。

「……あぁ私のなんと愚かな事か。欲に溺れ、罪を犯し、何も成さぬまま死に絶える。どうかこの愚かなる私に慈悲をくださるのなら、ほんの少しだけでも愛なるものをお教え下さい」

 この声は奥の壁に面した所にあるベッドから聞こえてきていた。この話と看板の内容を合わせると……。

「「愛を教えれば次に進めるっ」」

 むっ。フェイも同じことを考えていたみたい。でも愛なんてどうやって教えれば……。

 フェイはそんなあたしを置いて富豪の所に歩みを進める。あたしはその後を追いかける形になってしまった。

 そして、先に付いたフェイが愛を語る。

「愛とは真心でございます。この世すべてのものに慈悲を加える。それこそ愛と呼べるものでございます」

「……愛とは真心か」

 フェイは愛の何たるかを分かっていない。あたしが本当の愛を教えよう!

「愛は真心だけじゃない。好きな人と添い遂げる事、誰かを大切に思うことが愛になる。愛は誰かを愛し、思い続ける事が出来てこそ感じる事が出来るもの。だから人の数だけ愛の形がある。本当はあなたも愛は知っている。子供の時は親から少なからず貰っているはずだから」

「……私の幼少期か。懐かしいな。母の抱擁、父の背中……そんな暖かなものが愛だったのか……。人生の最期で最高のプレゼントを貰ったよ……。あり……が……と……」

 富豪が死に絶えると同時に私達の体が光に包まれる。

「ん。あたしの勝ち」

「えっ!?これ勝ち負けあったの!?」

 あたしがフェイに向かってVサインをした時に、目の前が完全に白一色となった。


◇◆◇◆◇


ーside:レンー

「なんでこう触手ばっかりなのよ!」

 ジュリ様がお怒りになっている理由は全て罠が触手だったことにあります。今は触手の方は落ち着いていますが。

 正直に言えば私も触手は懲り懲りです。

「他のステージも触手ばっかりなのでしょうか……」

「それはないわね。ミルのフェイの所は遺跡らしいし、触手要素が皆無だもの」

「そうですね」

「はぁ、蔓とか蔦ならまだ分かるのだけど、巨大イカとか、その他もろもろの触手持ちの動物とかほんとにやめて欲しいわ」

「ジュリ様が一度捕まってしまった時は冷や汗が止まりませんでしたよ」

「あの時は無我夢中だったからあまり覚えていないのよね……あら?何かしらこれ」

 山の麓にある小汚い湖の前を通った時、ジュリ様がなにかを見つけた。

「看板……みたいね。何か書いてあるから読んでみるわね」

 そして、ジュリ様が書いてある事を音読する。

『湖に一柱の神あり。その神、湖が死す時また同じく死せる。慈愛にあふれた者、湖の守護者となり、湖を守らん。神は感謝の証として新しき大地を与えん』

「湖ってここの事なのでしょうか?」

「恐らくはそうでしょうね。となると……」

 私は浄化魔法を使い、湖を綺麗にする。

「なるほど。湖の守護者とはこういう事なのですね」

「憶測だけれどね。湖が死ねば髪も死ぬから、反対に湖を生き返らせれば神も生き返ると思って」

 ジュリ様だけでなく私も浄化魔法をかけていき、だんだんと綺麗になっていく湖。

 湖が完全に綺麗になった時、湖が淡く光り始める。

「おっ?これは神がおいでになるのかしら?」

 ジュリ様の言った通りに湖から誰かが浮き上がってきた。それは白く長い髪に長い顎髭、そして、目の細いおじいさんだった。

 そのおじいさんは湖から出るとみるみるうちに若返っていき、外見が三十歳くらいになった。

「いやーすまんのぉ。湖の水質だけはわしでもどうしようもなくてのぉ。感謝の印に新しい大地をあげよう」

「まんま正解だったみたいね」

「という事は次に進めるのですね」

「多分ね」

 そんな話をしていると、ここに飛ばされた時と同じように白い光に包まれた。

「どうやら、また飛ばされるようね。次は触手じゃなければいいのだけど」

「そうですね。あんなのに追いかけられるのはもう沢山です」

 そして、私達は新たな世界に飛んだ。

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コメント

  • 火野目 燐助

    謎かけでもなんでもないじゃんw
    ただ書いてあることやってるだけやん

    2
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