異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第129話 罠が連鎖するようです

ーside:リンー

「じゃあわたし達も行こー!」

「お、おー」

 わたしはゼロちゃんと一緒に海の方に歩き出した。

 海は太陽の光を反射してキラキラ輝きながら小さく波打っている。その海を左右に分けるかのように一本道が陸続きで出来ていた。

「……でも、ちょっとだけ遊びたいの!」

「ゼ、ゼロちゃんっ!遊んだらダメだよっ、皆頑張ってるのに!」

「そうかぁ……あっ!なら遊びながら先に進めばいいのー!」

「ゼロちゃんっ!」

「へーきへーき!」

 ゼロちゃんはわたしを置いて一本道を走っていく。わたしはゼロちゃんに置いて行かれないように後から走ってついて行く。

「ゼロちゃん待ってー!」

「リンはわたしを捕まえるのー!」

「えぇー!そんなの聞いてないよぉ!」

「早く捕まえるのー!」

 カチッ

「「あっ」」

 なんか今カチッて音がした。もしかして今のが罠なんじゃ……?

「ゼロちゃんどうしよぉ……罠を発動させちゃったよぉ」

「大丈夫なのー!多分皆どうにかするのー!」

「ほ、ほんとに……?」

「うん!だから心配しなくてもいいのー!じゃあ続き行くのー!」

「えっ!ま、待ってよゼロちゃーん!」

 わたしはゼロちゃんをまた追いかけ始めた


◇◆◇◆◇


ーside:フェイー

「…………」

「…………」

 私はミルと遺跡みたいなところで二人っきり。ミルと二人になるのは今日が初めてで、何を話せばいいのか分からない。

 でも、何も話さないのはちょっと気が引けるから勇気を出して話かけてみた。

「……ミル、えっとね……」

「しっ、なんか音が聞こえる」

 話しかけた矢先にこんな事を言われて少しあたふたしてしまった。けど、ミルの言ったようになんかゴロゴロ音が聞こえてきた。

 ……ゴ……ロ……ゴロ……ゴロゴロ……ゴロゴロ!!

「ね、ねぇミル?なんか音が近付いて来てない?」

「あたしもそう思ってたとこ。あたし達、気が合うね」

「そんな事言ってる場合じゃあないと思うんだけど!」

「ん、ちょっと言ってみたかっただけ。気にしないで」

 そんな事を言っている間に音はすぐそこまで迫っていた。そして、目の前の天井が滑り台のようになった。

 なんて言うかちょうど上の階と下の階が坂道で繋がった感じ。近付いて来る音と目の前の光景を合わせて考えると……。

「なんか嫌な予感が……」

「やっぱりあたし達気が合う」

「そんな事言ってる暇があったら逃げた方がいいと思うよ!」

「ん。じゃあ逃げよう」

 私達が踵を返して逃げようとした時、その天井から大きな鉄球が転がってきた。

「やっぱりこれかぁ!」

「あたしの夢が一つ叶った」

「こんな夢叶えなくていいからぁ!!」

 私達は必死で逃げる。さっきまであった分かれ道は全て一本道になってしまって横の道に逸れることができなくなっていた。

「誰か助けてぇ!!お願いだからぁ!」

「あたしがどうにかする。……アースシールド!」

 ミルが土魔法と樹木魔法を順に発動させて、土と木で出来た壁を作った。鉄球はこの壁に勢いよくぶつかった。

「やったの……?」

「それが出てしまったら壁が割れるのは確定」

「えー!早めに言ってよぉ!」

 ミルが言ったように壁にどんどん亀裂が入っていき、ついには割れてしまった。

 私達はそれを見届ける前に走って逃げ始めた。

「あたし達は共にちっちゃいから、左右の角に分かれてやり過ごそう」

「うん!分かった!」

「「せーの!」」

 私達は左右に分かれて角に縮こまる。鉄球はゴロゴロ音を起てて私達の横を通り過ぎていった。

「よ、よかったぁ、何とか死なずに済んだ」

「じゃあ先に……」

 私達がその場を動こうとしたその時だった。

 ガコッ

「ふぇ?な、何今の音?」

「多分罠が発動した」

「えぇー!」

「発動したものは仕方がない。先に進もう」

 私はミルの神経の太さに驚きながらも、少しだけ打ち解けることが出来てよかったと思い、先に進み始めた。


◇◆◇◆◇


ーside:主人公ー

「おい女神。何故お前は戦わんのだ」

 ここでの初戦闘が終わり、俺は開口一番それを言った。

「別に戦っていいけど、私の神力に当てられて魔物が強くなっちゃう事があるよ?いいの?」

「マジかよ……なら戦わないでくれ。お前は見てるだけ、そこにいるだけでいい」

「分かった!その命令には絶対に逆らいません!」

 お前、本当は戦いたくないだけじゃないのか?だが、神力云々が本当だとしたら戦わせたくはないな。

 お、そうだこいつのステータス見てやろ。強いのに戦わないとかなってたら、マジで殴ってやろう。

 俺はステータスと唱えた。

《ERROR》

 ファッ!エラーってなんだよ!?こいつが神だから見せてくれないのか?だとしたら卑怯くさいな。

「それよりいいの?罠が発動し始めたみたいだけど」

「ん?罠?」

「そう。ほらそこら辺虫だらけ。遠くからはこの虫を食べる為に鳥とかが集まってきて、その鳥を食べる為に大型の魔物が寄ってきてるし」

「要するに全ての敵が一同に会すということか……。なにそれ俺殺す気?」

「殺す気も何も、罠なんだから殺さなきゃ意味無いでしょ」

「ごもっともで……。それでこれをどうにかする為には?」

「ない」

「ん?よく聞き取れなかったんだがもう一回」

「ない」

「よく聞き……」

「現実を見なさい!集まってくるものはどうしようもないの!逃げるし似ても途中で魔物に出くわすことになるし、あるとしたらすべてを殲滅するくらい」

「嘘……だろ……?俺一人でこれをやれって言うのか?」

「そういう事」

 俺はここでリタイアかなぁ……。皆俺がいなくても頑張って……。

「なんで諦めてるの!とりあえず虫は火に弱いんだから炎魔法でも放ってしまえばいいのよ!」

「あぁそっか。じゃあえいっ!」

 俺は火の玉を作りだして虫に投げつけた。虫が悶える姿はウネウネグニョグニョしていて気持ちが悪かった。

 ピンッ

「あ、草原を燃やした影響で罠が発動した」

「うっそだろ!女神、お前謀ったな!」

「たまたまだからその火の玉おさめて!」

「……仕方ねぇな」

 なんて言ってるが内心、心臓バクバク。俺のせいで誰がが傷付く事になるかもしれないってなる。その点はこの転移トラップの狙い通りだな。

「魔物が来る前にどこか遠い所まで逃げないとダメね」

「りょーかい。じゃあ飛ぶぜ」

 俺は女神を抱えて空を飛び、地上の魔物達から逃れることにした。


◇◆◇◆◇


ーside:ジュリー

「ちょっとやめて!」

「ジュリ様これは……!」

 山の中を進んでいた、私達は罠にかかっている最中。どんな罠かと言うと、蔓が私達を締め上げようと迫ってくるもの。

「触手とか誰得なのよ!」

「ともかく今は逃げましょう」

「逃げるって言っても、周りを囲まれてて逃げる所なんてないわ」

「大丈夫です。私に捕まってください、飛びます」

 私はレンが出した手を両手で掴んだ。こうしている内にも蔓は刻一刻と迫っており、早く逃げないと捕まってしまう。

「しっかり捕まっていてください!」

 レンはそう言って私が返事する間もなく上に向けて飛び出し、多少木々にぶつかりながらも山を抜ける事が出来た。

 しかし蔓はなおも追ってきて私達を絡め取ろうとしてくる。

「本当にしつこいわね。空中にまで追いかけて来なくてもいいでしょうに…。」

「ジュリ様、山の麓に平地がありますのでそこへ向かいます」

「分かったわ。そこなら蔓も追いかけて来ないと思いたいわね」

「はい全くです」

 私達は麓に向けて飛び始めたが、下からは蔓がどんどん出てくる。
 
 私は腹いせに火の玉を蔓に向けて放った。蔓は燃えて追ってこなくなるが、それ以上の蔓が下から湧いて出てくる。

「レン急いでっ!捕まったら終わりよ!」

「はいっ!」

 レンはスピードを上げて麓に飛んでいく。その途中で何か透明な柔らかいものに当たった。

 ビーッ!

「な、なに?」

「恐らく罠が発動したのでしょう。空中にまであるとは迂闊でした」

「皆に迷惑をかけてしまうわね……。でも今は私達が逃げるのが先決よね」

「はい。なんとしてもこの蔓から逃げなければなりませんからね」

 私達は蔓から逃げるために急いで麓に向かった。


◇◆◇◆◇


 様々な場所で叫び声と悲鳴が上がり、罠が罠を呼ぶ。罠から逃げる事で必死になりながらも、先に少しづつ着実に進んでいく。

 ある草原で……。

「おい、こっちだ!」

「なんでこんなに追ってくるの!」

 ある海辺で……。

「波が追いかけてくるのー!逃げろ逃げろー!」

「ま、待ってよぉ!!」

 ある遺跡で……。

「い、いや!蜘蛛がっ蜘蛛がぁぁ!!」

「でかい。気持ち悪い。もうダメ……」

 ある山で……。

「なんでこんなに触手ばっかりっ!もう嫌!」

「私もう諦めていいでしょうか……。疲れました」

 色々な場所で罠に翻弄される。果たしてこの調子でトラップを抜けることが出来るのか。先はまだまだ長い……。

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