異世界に転生したので楽しく過ごすようです
第119話 演技指導のようです
「ありがとうございました!今後も御贔屓に願います!」
タキシード、シルクハット、仮面を買った俺達は服屋を出た。買ったはいいのだが、一つだけ問題が……。
「本当にもうすっからかんだぞ……。タキシード一式が高いのは知っていたがここまでとは……!だが金がなくなった理由はそれだけではない!なぜ、金がないのに皆まで服を買ってしまうんだ!」
「「「つい……ね」」」
「今夜のご飯は質素なもので決定だからな」
「「「はい……」」」
そう。金が底を突いたのだ。
あぁ。あんなに金があったのに今では貧乏だなんて……。結婚するんだから御祝儀貰えないかなあ……。
この世界に転生して、初めて金に困った。まぁ帝都ではあんまりというか全然クエストしてなかったしなぁ。
クエストどうにかして受けたいんだが、俺は帝都から出れないからなぁ。俺が二人居れば一人は留守番、一人はクエストと役割分担出来るのに……?
「あ、分身使えばいけるかもしれん。そらよっと」
俺は分身を一体作り出す。遠隔操作しないといけないからあれだが、そこはスキルでどうにかすればいい。
「「よっ、元気にしてたか?」」
「「俺はお前だぞ?言われなくても分かるだろ?」」
「「確かにそうだな!はっはっは!」」
「マ、マスターがこわれちゃったー!」
「「心外だなゼロ。俺は壊れてないぞ。この通りピンピンしてる」」
俺は分身と手を取り、組体操を行う。
「それで壊れていないって言えるあなたの頭がおかしいわね……」
「「やっぱり?実は俺もそう思ってたんだよな」」
「ダメだこいつ……!早く何とかしないと……!」
女神が頭を抱えテンプレ通りの反応を示す。
まぁ俺自身よく分かっているのだが、いかんせん楽しくなってしまうのだからしょうがない。
俺は分身の遠隔操作を一旦やめて、真面目に話をする。
「諸君、我の話を聞いてくれないか?」
「「「はっ!」」」
ほんとノリのいい奴らだな!乗ってくれたならそのまま続行だ!
「この度、財布の中身は底を突いた。このままであれば我らの生活は困難を極める。そこで、この分身に働いてもらう」
「分身……ですか?」
俺に合わせた口調でレンが問う。
「いかにも。この分身は我と比べると力は劣る。さりとてクエストは十分にこなせよう」
「分身にクエストを受けさせるという事なのですね?」
次はジュリが俺に確認をしてくる。
「理解が早くて助かる。分身は我が遠隔操作を行う。本音を言えば自動制御で動かしたいところではあるのだが、そう上手くはいかないようなのでな」
どうにかすれば、自動制御出来るだろうがそれは怖いからな。自分の知らないところで分身が何かして、面倒事を持ってくるかもしれないし。
「諸君にこの分身を付ける。スキルは全て我と同じものを行使する事が出来るので、クエストも円滑にこなせよう」
「「「はっ!」」」
うむ、分かってもらえたようだ。まぁ今日はもう遅いし、明日からクエストを頑張ってもらおう。
「じゃあ皆明日からよろしくな」
「「「はーい」」」
その後は質素な夕食を取り、無事に一日が終わった。
そして次の日。言っていたように分身をクエスト組にお供させて、俺自身はフェイと女神と一緒に留守番。
なぜ女神も留守番なのかと言うと、こいつが戦わないということが分かったからだ。というか戦わないと思うわってジュリに言われたのが大きい。
強大な力を持っているのに戦闘には参戦したのを見た事がないって言われて、納得したしな。
さて、並列思考を使って共有と遠隔操作で分身が見たり聞いたりしたものが聴ける事に気付いてから、頭の半分でもう一人の俺を頑張らせていた。
分身よ、あいつらへのツッコミ頑張ってくれ……。まぁ実際は俺なんだけどね。
今回は帝都近郊の魔物の掃討をするようで、クエストを五、六個一気に受けていた。多い気もしないが皆なら出来るだろう。
本体の方の俺はと言うと、結婚式本番にする演技の熱いレクチャーをフェイから受けていた。
タキシードを着るのに不格好だったら様にならんからな。
「背筋を伸ばして顎を引く!足は踵を揃えてつま先を少し開く!」
「こ、こうか?」
「もっと余裕を見せるような感じで!」
「ふっ、これくらいか?」
「よし!そのまま歩いて!」
「任せておけ」
俺は歩きだす。背筋を伸ばし顎を引き、余裕を醸し出しながら。
「ダメ!全然美しくない!歩幅は一定で、軸をぶらさない!」
「こんな感じか?」
「ちょっとマシになったけど全然ね」
「マジか……。めっちゃ疲れるんだけど……」
「背中が曲がってる!」
「は、はい!」
「あはは!それそれ〜!がんばれ〜!」
女神め……!自分は何も無いからっていい気になりおって!
仕返しに少しからかってやるか!
「お美しいお嬢さん。あなたをこの悪意に満ちた世界から奪いに来ました」
俺はそう言って女神の前に跪き、頭を下げる。
「え、えっ、なな何っ?」
「さあ、この手を取って私と共に行きましょう」
俺は女神に手を差し出し、女神は訳も分からず手を取った。
そして、俺はその手を自分の方に引っ張り女神を引き寄せる。
女神は咄嗟の事に体制を崩し、俺の胸の中に収まる。
その女神の目を見ながら俺は手を取った反対の手を女神の腰に回す。
「あぁ、その美しい瞳に惹き込まれてしまう。これでは君を奪うどころか、君に私の心が奪われそうだ」
「そんな……こと…っ」
そして、俺はだんだんと顔を近づけていく。女神は既に流れに身を任せて目を閉じている。
普通ならここはキスをするところなのだが、俺は普通ではないのでキスはしない。一体何をするのかと言うと……。
『さ、出番だシロ!』
『ニャ』
シロが代わりにキスをする。といっても、シロの頭に女神がキスをするだけだが。
シロは俺の念話を聞き、女神の唇に自分の頭をあてた。
「んっ……ん?」
女神はすぐに目を開けた。そして、俺から離れる。
まぁ流石に気付くか。しかしからかいには成功したな!
「よ、よくも、わ、わわ私の乙女心を弄んだわねっ!」
「ふっ。騙される方が悪いのさ。それとも本当にキスして欲しかったのか?どうなんだね?」
「そ、そんなわけっ……ないでしょっ!べーだっ!」
お前子供かよ……。まぁこの反応を見れただけよしとしよう。
「ほっ……。ほんとにキスしちゃうかと思った」
何故か安堵の溜息を付いてそんなことを言うフェイ。
「同意も何もなしにキスなんてするわけないだろ?ましてや相手は女神だぞ?」
「私だと何か悪いことでもあるの!?」
まぁいつものように女神はスルー。スルーされた女神は雑言罵倒をしてくるが、久しぶりに女神に勝って何を言われようと痛くもない。
「でも、さっきみたいな感じで本番もやればいい感じになる!」
「なるほど……今の感じか……。女神、俺の練習相手になってくれない?」
「い、いや!また同じ事をして乙女の純情を汚すつもりでしょ!」
「さっきも言ってたが乙女……ブフッ!」
「なに!?なにか文句でもあるの!?」
「い、いや……ブフッ!」
「笑うなーっ!」
女神が俺を殴ってくる。
だが俺はその手を掴み、女神の懐に入り込む。女神はいきなりの事に後ろに下がろうとしたが、足がもつれ倒れ始める。
俺は倒れる女神の背中に空いている腕を回して抱きとめる。
「お嬢さん、大丈夫かい?危ないところだったね」
女神を抱きとめているので俺と女神の顔は至近距離にある。
「はうぅ……」
「キャー!」
女神はフリーズしてるが、フェイは悶えているな。こんな感じでいいのかね?
ちなみに女神は顔が真っ赤になって動かない。もしかしたら怒りに顔が赤くなっているのかもしれない。
俺は女神をちゃんと立たせてから離れた。
「あぁ、今の感じ最高っ!胸がときめいたよ!」
「私の心臓は死にそう……」
対比的なフェイと女神。心臓が死にそうって言ったのは女神だ。
「さぁもっと練習するぞー」
「い、いやぁぁ!!」
女神の絶叫が響いた部屋ではその後も俺に演技指導が行われた。
タキシード、シルクハット、仮面を買った俺達は服屋を出た。買ったはいいのだが、一つだけ問題が……。
「本当にもうすっからかんだぞ……。タキシード一式が高いのは知っていたがここまでとは……!だが金がなくなった理由はそれだけではない!なぜ、金がないのに皆まで服を買ってしまうんだ!」
「「「つい……ね」」」
「今夜のご飯は質素なもので決定だからな」
「「「はい……」」」
そう。金が底を突いたのだ。
あぁ。あんなに金があったのに今では貧乏だなんて……。結婚するんだから御祝儀貰えないかなあ……。
この世界に転生して、初めて金に困った。まぁ帝都ではあんまりというか全然クエストしてなかったしなぁ。
クエストどうにかして受けたいんだが、俺は帝都から出れないからなぁ。俺が二人居れば一人は留守番、一人はクエストと役割分担出来るのに……?
「あ、分身使えばいけるかもしれん。そらよっと」
俺は分身を一体作り出す。遠隔操作しないといけないからあれだが、そこはスキルでどうにかすればいい。
「「よっ、元気にしてたか?」」
「「俺はお前だぞ?言われなくても分かるだろ?」」
「「確かにそうだな!はっはっは!」」
「マ、マスターがこわれちゃったー!」
「「心外だなゼロ。俺は壊れてないぞ。この通りピンピンしてる」」
俺は分身と手を取り、組体操を行う。
「それで壊れていないって言えるあなたの頭がおかしいわね……」
「「やっぱり?実は俺もそう思ってたんだよな」」
「ダメだこいつ……!早く何とかしないと……!」
女神が頭を抱えテンプレ通りの反応を示す。
まぁ俺自身よく分かっているのだが、いかんせん楽しくなってしまうのだからしょうがない。
俺は分身の遠隔操作を一旦やめて、真面目に話をする。
「諸君、我の話を聞いてくれないか?」
「「「はっ!」」」
ほんとノリのいい奴らだな!乗ってくれたならそのまま続行だ!
「この度、財布の中身は底を突いた。このままであれば我らの生活は困難を極める。そこで、この分身に働いてもらう」
「分身……ですか?」
俺に合わせた口調でレンが問う。
「いかにも。この分身は我と比べると力は劣る。さりとてクエストは十分にこなせよう」
「分身にクエストを受けさせるという事なのですね?」
次はジュリが俺に確認をしてくる。
「理解が早くて助かる。分身は我が遠隔操作を行う。本音を言えば自動制御で動かしたいところではあるのだが、そう上手くはいかないようなのでな」
どうにかすれば、自動制御出来るだろうがそれは怖いからな。自分の知らないところで分身が何かして、面倒事を持ってくるかもしれないし。
「諸君にこの分身を付ける。スキルは全て我と同じものを行使する事が出来るので、クエストも円滑にこなせよう」
「「「はっ!」」」
うむ、分かってもらえたようだ。まぁ今日はもう遅いし、明日からクエストを頑張ってもらおう。
「じゃあ皆明日からよろしくな」
「「「はーい」」」
その後は質素な夕食を取り、無事に一日が終わった。
そして次の日。言っていたように分身をクエスト組にお供させて、俺自身はフェイと女神と一緒に留守番。
なぜ女神も留守番なのかと言うと、こいつが戦わないということが分かったからだ。というか戦わないと思うわってジュリに言われたのが大きい。
強大な力を持っているのに戦闘には参戦したのを見た事がないって言われて、納得したしな。
さて、並列思考を使って共有と遠隔操作で分身が見たり聞いたりしたものが聴ける事に気付いてから、頭の半分でもう一人の俺を頑張らせていた。
分身よ、あいつらへのツッコミ頑張ってくれ……。まぁ実際は俺なんだけどね。
今回は帝都近郊の魔物の掃討をするようで、クエストを五、六個一気に受けていた。多い気もしないが皆なら出来るだろう。
本体の方の俺はと言うと、結婚式本番にする演技の熱いレクチャーをフェイから受けていた。
タキシードを着るのに不格好だったら様にならんからな。
「背筋を伸ばして顎を引く!足は踵を揃えてつま先を少し開く!」
「こ、こうか?」
「もっと余裕を見せるような感じで!」
「ふっ、これくらいか?」
「よし!そのまま歩いて!」
「任せておけ」
俺は歩きだす。背筋を伸ばし顎を引き、余裕を醸し出しながら。
「ダメ!全然美しくない!歩幅は一定で、軸をぶらさない!」
「こんな感じか?」
「ちょっとマシになったけど全然ね」
「マジか……。めっちゃ疲れるんだけど……」
「背中が曲がってる!」
「は、はい!」
「あはは!それそれ〜!がんばれ〜!」
女神め……!自分は何も無いからっていい気になりおって!
仕返しに少しからかってやるか!
「お美しいお嬢さん。あなたをこの悪意に満ちた世界から奪いに来ました」
俺はそう言って女神の前に跪き、頭を下げる。
「え、えっ、なな何っ?」
「さあ、この手を取って私と共に行きましょう」
俺は女神に手を差し出し、女神は訳も分からず手を取った。
そして、俺はその手を自分の方に引っ張り女神を引き寄せる。
女神は咄嗟の事に体制を崩し、俺の胸の中に収まる。
その女神の目を見ながら俺は手を取った反対の手を女神の腰に回す。
「あぁ、その美しい瞳に惹き込まれてしまう。これでは君を奪うどころか、君に私の心が奪われそうだ」
「そんな……こと…っ」
そして、俺はだんだんと顔を近づけていく。女神は既に流れに身を任せて目を閉じている。
普通ならここはキスをするところなのだが、俺は普通ではないのでキスはしない。一体何をするのかと言うと……。
『さ、出番だシロ!』
『ニャ』
シロが代わりにキスをする。といっても、シロの頭に女神がキスをするだけだが。
シロは俺の念話を聞き、女神の唇に自分の頭をあてた。
「んっ……ん?」
女神はすぐに目を開けた。そして、俺から離れる。
まぁ流石に気付くか。しかしからかいには成功したな!
「よ、よくも、わ、わわ私の乙女心を弄んだわねっ!」
「ふっ。騙される方が悪いのさ。それとも本当にキスして欲しかったのか?どうなんだね?」
「そ、そんなわけっ……ないでしょっ!べーだっ!」
お前子供かよ……。まぁこの反応を見れただけよしとしよう。
「ほっ……。ほんとにキスしちゃうかと思った」
何故か安堵の溜息を付いてそんなことを言うフェイ。
「同意も何もなしにキスなんてするわけないだろ?ましてや相手は女神だぞ?」
「私だと何か悪いことでもあるの!?」
まぁいつものように女神はスルー。スルーされた女神は雑言罵倒をしてくるが、久しぶりに女神に勝って何を言われようと痛くもない。
「でも、さっきみたいな感じで本番もやればいい感じになる!」
「なるほど……今の感じか……。女神、俺の練習相手になってくれない?」
「い、いや!また同じ事をして乙女の純情を汚すつもりでしょ!」
「さっきも言ってたが乙女……ブフッ!」
「なに!?なにか文句でもあるの!?」
「い、いや……ブフッ!」
「笑うなーっ!」
女神が俺を殴ってくる。
だが俺はその手を掴み、女神の懐に入り込む。女神はいきなりの事に後ろに下がろうとしたが、足がもつれ倒れ始める。
俺は倒れる女神の背中に空いている腕を回して抱きとめる。
「お嬢さん、大丈夫かい?危ないところだったね」
女神を抱きとめているので俺と女神の顔は至近距離にある。
「はうぅ……」
「キャー!」
女神はフリーズしてるが、フェイは悶えているな。こんな感じでいいのかね?
ちなみに女神は顔が真っ赤になって動かない。もしかしたら怒りに顔が赤くなっているのかもしれない。
俺は女神をちゃんと立たせてから離れた。
「あぁ、今の感じ最高っ!胸がときめいたよ!」
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