異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第68話 女神と2人っきりのようです

「皆様。お待たせしましたー」

「ニャ」

「ありがとうございます」

 ビャクさんは料理を作り始めてから2、30分くらいで完成させた。

 出てきたのは何かの肉の入った味噌汁と、魚の塩焼き、それと白ご飯だった。見た目は普通に和食だ。

「美味しそう。いただきます」

「うまく出来てるといいのですけど……」

 俺も料理に手をつけ始める。

 最初に手に取ったのは味噌汁だ。味噌の香りではないが、それに近い匂いがする。大豆に近いもので作られているのだろう。俺は汁を啜り、肉を頬張った。

 ほっとする味だ。なんというかお袋の味的なやつ。安心する味と言ってもいいな。

「おいしー!」

「ええ。そうですね」

「このお肉ってなんのお肉?」

「あ、俺も気になる」

「これはさっきのウルフですね。あのウルフのもも肉は柔らかくて美味しいんです」

 そうなのか。だったら殺したやつ捕まえて、ミルとかゼロの食事に当てらいいかもな。

 そんな時ビャクさんが何か思い出したように、声を上げた。

「ビャクさん?どうかしましたか?」

「そういえばなんですど、どうして皆様はあんな所でウルフと戦っていたのですか?」

「ああ、それはですね」

 俺はビャクさんにここに来るまでの経緯を話し、ウルフと戦っていたのは一番の目的だった武器を使いこなす為だといった。

「そうだったのですか。あのウルフは集団だと恐ろしく強くなりますから、さぞかし苦労したことでしょう」

「ビャクさんが助けてくれなかったらちょっと厳しかったですね。なにせ使い慣れてない武器を使って戦っていましたから」

 実際あの時に逃げるか検討していたからな。

「あ、武器の事なんだけど、私皆の事を見てたから何がダメだったか指摘できるよ!」

「女神お前はそれをやってたから戦闘に参加しなかったのか」

「うんまあそういうことになるね!どう?皆聞きたいでしよ?聞きたかったら私の所にきなさい!」

 胸を張りる女神と、それに頷く皆。そして、置いていかれる俺。ビャクさんはシロを膝の上に乗せて頭を撫でている。……え?俺ぼっち?

 皆は1人ずつ女神に指摘を受けに行っている。俺の聞き耳スキルで聞いてみると、体重移動がまだ甘いだとか、間合いを完全に把握してないだとか、武器の持ち方を変えてみたらどうかだとか、結構真面目に教えていた。

 女神ってなんだかんだ言ってしっかり者だったりするよな。普段はポンコツ過ぎてそれが埋もれてしまっているのだがな。全く残念なやつだ。

 女神に指摘してもらった皆は忘れないうちにと言って食事を取ってすぐ、武器を持って外に出た。

「皆様元気が有り余っているようですね」

「女の子なんですから少しくらいは戦いから離れて、他のことをしてもいいような気がしますけどね」

「例えば花で王冠作ったり?」

「そうそう。ってお前は行かないのかよ!特訓を見てやるとかしないのか?」

「あんまり言ってもあれかなーって思って」

「そう言えば、武器を使いこなせるようになりたいのは武道会でちゃんと使えるようになるためですよね?」

「そうですね」

「でしたら対人戦をしてみるのはどうかと思いますが。なんでしたら私がお相手しますけど」

「いいんですか?」

「ええ。女の子の相手は同じ女の私がやった方がいいと思いますし」

「確かに。俺だとやりすぎるか、逆になにもしないかの二択位になりますし。お願いします」

「分かりました。ちょっと行ってきますね。シロはどうします?」

「ニャン」

 シロはひとつ鳴くと俺の膝の上に乗って丸まった。可愛いやつめ。

「ふふふ。そうですか。ではシロをお願いします」

「了解です」

 ビャクさんは少し準備運動をしてから外に出ていった。

 今この家にいるのは俺と、俺の隣に居る女神と、俺の膝の上にいるシロだ。しかしシロは今絶賛睡眠中だから実質、俺と女神だけだ。

「あ。そういえばビャクさんってどれくらい強いんだ?」

「あの感じだと貴方と同じくらいじゃない?」

「ちなみになんだが、俺ってどれくらい強いんだ?」

「まあこの世界ではトップクラスよね」

 薄々分かってはいたんだが、やっぱりそうだよな。ドラゴン殺したり、アダマントタートルをワンパンしたりとかしてたしな。

「そんなことよりあなたは行かないの?皆待ってると思うけど」

「たまには俺なしでもいいんじゃないか?俺も久しぶりの和食だったからゆっくりしたい気分だし」

「あー私もその気持ち分かる!久しぶりの和食っていいよね!」

「ん?和食を今までに食べてたみたいな言い方だが、神の世界で和食が出てるのか?」

「うぇえ!?え、えーっと……うん!そう!いろんな世界のいろんな食べ物とかで偶に食べるよ!」

「神の世界なんか楽しそうだな」

 いろんな世界の食べ物食べれるとか羨ましい。

「そんなわけないでしょ!上位神とか最高位神はめちゃくちゃ適当で自分の仕事はほっぽり出すくせに、下位神には仕事ばんばん持ってきてやらないと堕ちるぞとか言われるんだよ!それに神同士の夫婦喧嘩とか笑えないし!この前最高位神の夫婦喧嘩で世界がひとつ消えたんだもん!」

「え。なにそれこわい。最高位神なにやってるの」

「ほんとよ!上位神は上位神で、下位神をあの手この手で強引に妻とか夫にしようとするんだよ!それこそ断ったら堕とすぞってレベルで!何よ雑草の神様って!俺根強いから、とかほんと意味わからないんだけど!馬鹿みたい!」

「妙に具体的なのが出てきたな……。実体験なのか……」

「他にも蜂の巣の神様とか落花生の神様とかなんで上位神なのっていう神様いるし!よりにもよっていつもそんなのが私に……」

 今出てきた蜂の巣の神様は、お前のハートは俺が蜂の巣にしてやるぜ、とかいいそう。落花生の神様だったら、お前は落花生の如く恋に落ちるよ、とかいいそう。

 もし振られた神様の近くにある納豆の神様がいたら、ネバーギブアップっていってる気がする。

 なにそれ神様ユニークすぎだろ。なんか笑えてくるわ。

「何笑ってるのよ!人の不幸は蜜の味って言いたいの!天罰食らわせるわよ!」

「ちょ、たんま!それはやばいやつ!俺が笑ったのはお前の事じゃなく、他の神様の事だよ!」

「ほんと?嘘じゃない?」

「ほんとだほんと」

「神に誓える?」

「誓う誓う」

「純愛の神にも?」

「誓うちか……え?純愛?」

「な、なんでもない!忘れて!」

 なんか女神が赤くなってる。まあ純愛とか言って恥ずかしかったのだろうな。

「それで?女神はいつその神の世界とやらに戻るんだ?」

「私あんな所に戻りたくない!私にとっては苦痛でしかないもん!」

「もんってお前……。仕事とか溜まってるんじゃないのか?」

「下界に降りてる時は仕事がお休みになるからありませーん!」

「そんなことじゃいつか堕ちるぞ?」

「だらけて堕ちるのと、働いて堕ちるのとあなたならどっちを選ぶ?」

 堕ちるのは確定なのか……。可哀想に……。

「俺だったら楽な方だな」

「でしょ!?だから私は今のままでいく!」

 それから俺は女神の愚痴に付き合わされた。

 神様同士の確執とかめっちゃ面白かった。

 目くそ鼻くそという言葉があるが、目くその神様からしたら俺の方がまだ綺麗だと主張し、鼻くその神からしたら俺の方がでかいとか主張しているらしい。その言い争いはここ千年は続いているらしい。

 神様って馬鹿しかいないのかよ。つくづくそう思った俺だった。

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