異世界に転生したので楽しく過ごすようです

十六夜 九十九

第62話 帝都に着いたようです

 魔王様に転送してもらった俺達。場所は帝都の近くの平原。

 魔王様もちゃんと考えてくれていたようだ。

 もし帝都の中にそのまま転送されていたらなんやかんやなってたなってたはず。例えば、帝都の人に見つかって騒がれたり、俺が誘拐犯として衛兵さんに連れていかれたり……。

 俺は別に女の子を誘拐してるわけじゃないですし!捕まる意味が分からないんだけどね!

「はぁ……。俺は何を考えてるんだ……」

「どうしたのマスター?行かないの?」

「ん?ああ、すまん、何でもない。それじゃ行くか」

 下らないことを考えてる暇があったら早く帝都に向かえって話ですよね。すいません。

 時間的にはもう夜だ。宿を取ったりしないといけないので早く帝都に向かう事にした。

 帝都に入る時は王都同様、門番がいて身分証明をしなければならない。俺とミル、ジュリ、それとまだ従魔のシロはいいのだが、人間になった元魔物組と女神は身分証明出来るものがない。

 俺はしょうがなくゼロとレンとリンの3人分の入国料を払った。女神?女神は自腹だ自腹。金持ってるか聞いたら俺より持ってやがったからな。

 まぁそんなこんなで入国した俺達は帝都の夜の街並みに圧倒された。

 レンガ造りの建物が並び、窓から漏れる光と街灯が夜の街を照らしていた。その光ひとつひとつが街を飾っているイルミネーションのようで、それはもう幻想的なものであった。

 また、道行く人の頭には耳がついており、それは人によって異なっていた。猫耳や犬耳、象耳なんてものもいた。

「これはまた、王都のときとは違う感動があるな」

「主様の言う通りですね。とても幻想的です」

「きれいなのー!」

「わぁぁー!」

「あの人達が女神様の言ってた獣人族なのかしら?」

「そう!獣人の特徴はそれぞれ耳が付いているということ!それ以外は人間族とあんまり差がないの!他にも帝都にはエルフだったりドワーフだったりもいるから近いうちに会えると思う!」

「へぇー、そうなのか。そりゃ楽しみだ」

「美味しいものある……?」

「もちろん!帝都で有名なのは魚料理ね!その他も美味しいものがあるから探してみるといいかもね!」

「ん。わかった」

「……どうしてお前は帝都についてそんなに知ってるんだ?」

「私は女神よ?この世界について知っとかないと女神なんて出来ないわよ」

「さいですか」

 俺達はしばらくその街並みを眺めてから宿を探しに行くことにした。

 今からでも宿が取れるといいんだが……。どこかいい感じの宿はないのか?

「あそこの宿ならいいんじゃない?高そうだけど」

 指で宿を指して女神が提案をする。

「えっと?エルフの憩いの場?名前の感じからするとエルフ限定の気がするんだが」

「ですがエルフ限定とは書いてありませんよ?」

「まぁ確かにな。行くだけ行ってみるか」

 俺達はエルフの憩いの場という宿の中に入った。

 中は清潔感のある飲食スペースがあり、何人かの人が食事をとっていた。

「いらっしゃいませー」

 そのスペースの奥から少しおっとりとした、女性の声が聞こえた。そして、その声に遅れるようにして一人の女性が出てきた。

 その女性は耳が尖っており、髪の色が淡い緑をしていた。俗に言うエルフという種族だ。

 このエルフは一般的に見てタレ目だろう。おっとりとした雰囲気が出ているのもそれが一つの要因だろう。

「今夜はどうされましたかー?」

「俺達、宿を探していたんですけど、ここってエルフの以外でも泊まれるんですか?」

「ええ、そうですよー。お店の名前でよく間違われるんですがあのエルフというのは私の事ですー」

「そうなんですね。てっきりエルフ限定かと……。泊まれるのでした7人と1匹が泊まれる部屋ありますか?」

「さすがに人が多いいので2部屋になりますがいいですかー?」

「はい。よろしくお願いします」

「お部屋は奥の階段を登って、2階奥の二部屋をお使いくださいー」

「分かりました」

「ではー」

 エルフの店主さんだと思うが、その人はまた奥へ戻っていった。

 俺達は教えて貰った部屋へ向かった。

 部屋は質素ながらも細いところまで手入れが行き届いていることが分かる。

「いい宿だ。さっきの人の親切心が分かるな」

「そうね。確かにいい宿ね」

「あのエルフ様凄いです」

「このベッドきもちーのー!」

「あたしもそのベッドに寝たい……」

「はわわ!あんまり暴れたら怒られるよ!」

「うんうん。元気が一番!」

「ニャン」

「なぜお前ら全員がそこにいるのか聞いてもいいか……!」

 何故だ!俺は二部屋とったはず!こいつらはアホなのか!

「聞いて後悔しない?大丈夫?多分凄い理由だと思うよ?」

 女神が俺の方を向いて、可哀想な人を見る目をした。

 おいやめろ。俺をそんな目で見るんじゃない。

「理由を聞くくらいで後悔するとかどんだけだよ」

 俺はそう言いながらも理由を聞いた。

「むしろ貴方がここにいる理由は?」

 俺の問は問で返されてしまった。仕方ないから俺はその問に答える。

「この部屋に泊まるためだが?」

「私達も同じ理由よ」

 な、なんだってー!俺と同じ理由だってー!と言うことはお前らこの部屋に泊まるのかよ……。

「なら俺は隣の部屋に……」

「さぁ、皆!隣の部屋に行くわよ!」

 えぇ……。なにそれ怖い。お前らは俺をどうしたいんだよ……。

 それからというもの俺が部屋を移動しようとすると皆が付いてくる。それはもう獲物を狙う獣の様に。

 俺はもう部屋の移動を諦め、現状を受け入れた。

 うん。その方が俺の心は削られずに済む。もうこんなのは慣れた方が早いもんな!もう今更だし!

 そして、俺は皆と一緒に眠ったのであった。

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