to be Continued ~ここはゲームか異世界か~

秋乃ヒダマリ

5話 『アソコ』





 「モグモグ…(チラッ)…モグモグ…(チラチラッ)…ゴクッ」


 チラチラと申訳なさそうにこちらの様子を窺っている宿屋の美人女将。(エリアと言う名前らしい)

 そして、オレはと言うと、朝ご飯を食べているのだが――いま少し機嫌が悪い。

 ほんの数分前まで、人生最大の危機に遭遇していたからだ。
 その話には、少し時間は遡る

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 数分前、オレは昨日の疲れもあり、ぐっすりと眠っていた。

 以下、ダイジェストでお送りします。



「――おきてー! あさだよー!!」

 んあぁ? あと五分~……
ぼんやりと聞こえた声に、心の中で返事をする。

「は・や・く・おきてー!!!!」

 うるさいな~、あと五分って言ってるだろ~……スャ~

 薄っすらと目を開けて――またすぐに目を閉じる。
 あと五分は神々の午睡よりも大切なのだ。


「ムカッー…もぅおこったもんねー……――くらえー!!!!」
ドスーン!!!!

「うぐッ!!」

 四分と五十二秒を残して、大事なところ(通称:ムスコ)に伝わる“物凄い衝撃”と共に、秋山の意識が否応無しに覚醒する。

「ぐぁぁあ!!!!!!」

ガバッ! っと起きあがあった秋山の目には大粒の涙。分かる人には分かるだろうこの痛さ
 反射的に手で押さえようとしたが、ソコには先客が――

「やっとおきたー! やったー!!」

 ソコにいたのは……小学一年生くらいの女の子だった。
 サラッとした焦げ茶色の髪に茶色い目、白い肌に白のエプロン姿の女の子が腰に手を当てて――

「リカがおこしてあげたのー!! えらいでしょー!!」
 えっへん! と無い胸を張っていた。(そこまで分析する余裕はなかったが)

 当の秋山はと言うと

 痛てぇぇぇぇぇえ!!!うおぉぉぉぉお!!死ぬぅぅぅぅぅう!!!!
 こんの、クソガキっちゃろか!!!ピ――にしてピ―でピ――――!!(自主規制)

 子供相手にあらん限りの悪態を思い浮かべていた。

 その後、騒ぎを聞きつけたエリアさんがやって来て、涙を浮かべて悶え苦しむオレを横目に、オレの上で胸を張っているリカに事情を聴いて――
憐れむ視線を送って来た。

 オレ……泣いていい?

 暫くして、何とか落ち着いたオレは、エリアさんに勧められて朝ご飯を食べる事になった。

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 で、冒頭に戻る。

 どうやら朝ご飯の時間を過ぎても起きてこないオレを心配して、娘のリカに起こしてきてとお願いしたら“あんな事”になってしまったらしい。

 Oh、思い出すだけで……ぁうー

 娘のリカは現在、エリアさんのお叱りを受けてしょんぼりしている。
 お叱りの途中に「……アソコはまだ早いわよ――」とかなんとか聞こえたが、気のせいだろう……気のせいと思いたい。

 そんなこんなの一騒動はあったが、無事に朝ご飯にありつくことが出来た。
 当然(?)ご飯は味があった。味覚もあるし、お腹も減る。ついでに痛みも……




 それから程なく、ご飯を食べ終わったオレは、少し迷ったが“アルタの街”を見て回ることにした。


 ――あぁそうそう、娘さんとはちゃんと仲直り(?)した。中々起きなかったオレも悪かったし……相手は子供だしね?


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 街は予想以上に賑やかだった。

「らっしゃい!!お客さん今日のはいつもより新鮮でっせ!!」
「そこのカッコいいお兄さん!!うちの商品見ていってよ!!」
「あんちゃん!一杯どうだ!!」
「恋人へのプレゼントにいかがですか?」(それは死んでも買わん!)

 活気があるとはまさにこの事だろう。四方八方、営業の嵐である。
 オレは一軒一軒見て回っていた。珍しい商品やいい匂いの食べ物を大量に買い込んで『インベントリ』に放り込んでいった。
 ちなみに、スキル『収納』を持っている人が結構いるらしく、『インベントリ』を驚かれたりはしなかった。

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「いやー、結構買ったなぁ」

 今の秋山は、かなりのお金持ちだ。以前はできなかった“大人買い”が出来るだけの余裕がある。
結果、散財してしまった。(まぁ、まだまだお金はあるけど。)


 それにしても――

「なんか…独り言が増えた気がするなぁ……」

 そんなことを思ったせいか、急に虚しさが襲ってきた。

 ……暇だ。物凄く暇だ。

 この世界にはゲームはない、どころかPCやスマホも存在しないというのは、現代っ子の秋山からすれば、いくらお金があったとしても退屈でしかない。

「そろそろ行くか……」

 虚しさに耐えかねた秋山は、目的の場所――





 集会所――“討伐ギルド”へと向かうことにした。

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