結末のわからない恋の物語

出雲沙之介

イチャイチャ

その後、イベントは雨天ということで走り終えた人から流れ解散という形になりましたので、里香ちゃんと一緒にお風呂屋さんへレッツゴーです。

会場から近いスーパー銭湯の駐車場に着き、2人でお風呂屋さんに入っていきます。

大きな畳の休憩スペースがあったので、そこで待ち合わせることにして、男湯と女湯とに分かれます。

「じゃ、また後でねー」

手を振って赤い暖簾に入っていく里香ちゃん。いいですねー、なんかこういうのって。

昔から、カップルでやりたいことの1つでした。

里香ちゃんと恋仲になってから、忘れていた青春の憧れがどんどん蘇って来るんですよ。

例えば、24時間営業のスーパーで部屋着で買い物しているカップル。あれ、凄く憧れるんですよね。

だって、深夜ですよ?部屋着でスーパーですよ?当然、同じ部屋に帰るに決まってるじゃないですか!!

帰って何をするかまではご想像にお任せ的な所でありますが、小さなアパートで2人寄り添って生きているんだなぁと思うと、なんかほっこりするんですよ。

ま、さすがに既婚者同士なので里香ちゃんとそんなことはできませんがね。

他にも色々と里香ちゃんとしたい『カップル的なこと』はたくさんありますが、この暖簾の前で「じゃ、またあとでね〜」っていうのも1つの憧れでした。

父の影響で私もフォークソングが好きで…と言うと分かる人はわかると思います。そう、『神田川』ですね。

今はスーパー銭湯の時代なので、洗い髪が芯まで冷えて…なんてことはありませんけど、なんかこう、憧れるシチュエーションでした。



さてさて、お風呂から出て、そのままスーパー銭湯内の食堂でご飯を食べて、ゴロンと横になれる畳の部屋で2人でくつろぎながら、この後どうしようかねーと話していました。

結局、行き先が決まらないまま、とりあえず車に移動すると、ニヤニヤとこちらを見つめてくる里香ちゃん。

どうやらイチャイチャしたいご様子。スーパー銭湯の休憩スペースではさすがにイチャイチャはできませんからね。

平日でもそこそこ車が止まっていて、ちらほらと人の行き来もある中でさすがにちゅうは出来ません。

そこで、私は里香ちゃんを膝枕してみました。いい感じに里香ちゃんの姿が隠れたので、前に屈むようにちゅうしてみました。

マラソンの練習の為にやっていたストレッチの成果が、まさかこんな形で活用できるとは思いもよりませんでしたね。

それからしばらくそのままイチャイチャしていましたが、さすがに体勢がキツイのと、隠れているとは言え足音がする為に里香ちゃんが外を気にするので、場所を移動することにしました。

といっても、駐車場の端に移動するだけですが。

雨でお仕事が中止になったのでしょうか、工事業者さんの車らしきライトバンが止まっていて、その隣がいい感じに死角になっていたので、そこに車を止め、続きを再開しました。



大人の恋愛…といっても、私と里香ちゃんは『一線を越えない』と約束している仲です。イチャイチャするにしても、抱き合ったままちょっと激しくキスするぐらい。

飽きない程度にリズムを変えて、ちょっと間を空けては少しお喋りを挟み、またキスをしての繰り返し。

時々、昂ぶった気持ちの儘に、唇から首筋、耳朶へとキスのまま辿って行ってしまいますが、その辺りで流石に思い立ち、その首筋から下に辿った先にある小ぶりな丘や、ジーンズに固く守られている湿地帯には手も触れず、元気溌剌になっている我がジュニアも彼女の体に極力触れぬよう気をつけます。

それでも互いに貪るように求め合うので

キスに込められた欲求がやがて限界まで上り詰ると



「も……だめ…」

火照った顔の里香ちゃんが、何かを我慢するように、私の体を引き離します。

「店長さん、キスうますぎ…」

そんなこと言われたの初めてでした。むしろ自分ではあまり自信がなかったぐらい。

私がうまいというよりは、里香ちゃんがうまく誘導してくれていると、私は感じていました。

彼女のキスは、して欲しいことがわかりやすいんですよ。

求めるように舌を出して来たり、ほんの僅か顔を動かすことで、私に刺激して欲しいところをうまく当てがってくるので、私はそれに答えるように、舌先で舌先を触れさせたり、唇や舌を咥えて吸ってみたり、その度に里香ちゃんが反応するので、その反応に合わせて、自分の欲求のままに彼女を貪ると、さらに激しく反応し、そして…

「したくなっちゃうよ…」

足をもじもじさせ、里香ちゃんが小さく呟きます。

正直、裸にもなっていない状況で、こんなこと言われたのは初めてでした。というか、大人向けのそういうDVDでしか聞いたことありません。

この瞬間、小柄で可愛らしい里香ちゃんの印象が、かなりアダルトなイメージへと変わっていきましたが、何だかんだ彼女も30過ぎです。ハタチのお嬢さんのような恥じらいはないということでしょうか。

しかし、一線は越えないと約束したわけですし、こんな場所でそんなことはできませんし、そんなことできそうな場所へ行く資金もありませんし、というよりあえて用意してこなかったのですが。

里香ちゃんには悪いけど

我慢してもらいましょうかね。

私は里香ちゃんに悪戯っぽく笑いかけると、少し強引に口付けしました。

里香ちゃんに嫌がる素振りはありませんでしたが、少し激しくするとまた身体を引き離します。

「ちょ、ホント、ちょっと待って!」

顔は必死になにかを我慢している様子で、瞳は熱く火照ったように潤んでいて、一言で言えば色っぽい、言葉を選ばなければエロい顔。

私は『自称どっちもいける派』なんですが、Sっ気はあんまりないと思っていました。しかし、今の里香ちゃんの反応に結構唆られている自分がいるのが、わかります。

待てと言われて待てるものかと、ギリギリを攻め続けてあげたくなりますね。

私は彼女をギュッと抱きしめました。互いの顔が横に並びます。うなじに唇を寄せ、先ほどのキスのように動かすと、里香ちゃんの身体が反応してビクンとなります。

嗚呼、良い!!

しばらく里香ちゃんの抵抗(?)を無視しつつ、触っちゃダメなところには触れずに攻め続けます。

その先にはいかないと約束している大前提があるので、好きなだけ焦らしまくります。

こういうのもいいですねぇ。

里香ちゃんも、その先はダメというのは理解しています。嫌がっているのではなく我慢している、そして我慢の限界に来ているのがはっきりわかります。

そこを敢えて攻める!!

自分の中の新たなジャンル開拓に喜びを感じつつ、里香ちゃんが我慢の限界に達した様子なので、一旦間を置きました。

「もう」

戸惑いながらも、ちょっと嬉しそうな笑みを見せる里香ちやん。

一時、互いに体を離して衣服と髪の乱れを整えます。

パンツも下ろしてないのに一戦終わったような、不思議な達成感を感じながら、話しはこの後どうするかという方向に向かっていきます。

「うわっ、LINE来てた」

時間確認のつもりでスマホを手にした里香ちゃんが、先ほどまでとは表情が一変。どうやら旦那さんからのお問い合わせがあったようです。

そういえば今日は旦那さんが休みとか言ってましたわ。一人で待っているまだ見たこともない旦那さんの姿を想像すると、さすがに罪悪感が溢れて来ます。

ごめんね。

確かに、自分でこんなことしてて思う資格もないんですが、自分の嫁さんが職場の『友達』と出掛けると言って、こんな変態野郎とこんな変態行為をしていると思ったら、そりゃあ怒り心頭になるでしょう。

どっちも本能なんでしょう。それでも里香ちゃんとのこの関係は失いたくないと思ってしまいます。

里香ちゃんは、顔は可愛い方ではありますが、誰もが振り返るほどの美女ってわけではなく、身体は本人も気にしていますが、かなり幼児体型で、見る人が見ればおバカな行動も多々あります。

しかし、愛嬌のある可愛らしさとは、パーフェクト美人より里香ちゃんぐらいの可愛らしさの方が私的には好ましく感じますし、幼児体型もその可愛らしさと相まって、保護欲をそそるような魅力と言えます。そんな可愛らしさ満載の外見から起こるおバカな行動は、マイナスどころかより可愛く感じる最高のスパイスになっています。

おや?

こうして見ると、なんとなくなんですが…

ロリ…

いやいやいや

流石に発育前の少女に欲情するようなタイプの大人ではないですよ、私は。

ただ、里香ちゃんのようなタイプの女性を好きになることは過去にもありましたし、ボインボインなグラビアアイドルよりも、ファッション雑誌に載っているようなスレンダーな体型の女性の方がどちらかというと好みです。

ま、ボインボインも好きですけどね。ただ恋愛相手に求める基準には揚がらないだけです。

母親が身長150cmに満たない小柄な人なので、もしかしたらそういった関係で、小柄でスレンダーな女性を好む傾向があるのかもしれないですね。

うん、大人ロリ系としよう。

そういえば以前何かで見ましたね、そういうの。なんだっけ?犯罪にならないロリ系…

あ、合法ロリだ。

成人しているけど、童顔幼児体型の幼く見える女性を好むタイプ。そうだ、うん。私は合法ロリですわ、きっと。

「ほんっと、私って嘘つけないんですよ。本当辛いです、こういうの」

と、私が一人考えていると、里香ちゃんが旦那さんに言い訳LINEを終えたようです。

一応旦那さんには、職場の人達とマラソン大会に参加して、その後みんなでスーパー銭湯行ってご飯食べて帰ると伝えてあるそうです。

嘘は2つ。『職場の人』で確かに間違い無いんですが、詳しい関係は言えない男性と二人きりということと、ご飯食べた後はその男性と互いを貪りあっていたということだけ。

ご飯なんてそう何時間もかかるものではありませんが、まぁ女性同士で出掛けているということにしてあるので、お喋りが止まらず気が付いたらこんな時間だった!と言っても問題はないでしょう。

「ちょっと早いけど…そろそろ帰らないと、旦那さん待ってるから…」

そう言う里香ちゃんの様子は、旦那さんが一人で待てなさそうと言うよりは、そうやって旦那さんを一人留守番させているということに、自分の罪悪感が耐えられなくなってきているようでした。

「じゃ、帰ろうか」

最後に小さく「ちゅっ」として、車のエンジンをかけます。

2人の熱気でガラスが真っ白に曇っているのを見て、思わず2人で笑ってしまい、ちょっと微妙な雰囲気になりかけていた空気が和みました。



帰り道、そんなに遠くまで来たわけじゃないのに、何故か道を間違えて妙に遠回りになってしまったのを、よっぽど帰りたくないんだねって笑い合いながら帰りました。

そんな道中、里香ちゃんが私の過去の恋愛について知りたがったので、それとなくボカしながら話してあげました。

なんか、大好きなコに過去の恋愛話をするのって、複雑ですね。

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