ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード11:はじまり、おわり

 GX機関本部はロシア森林地帯に秘密裏に建設された。地球規模で人間を保護、監視するための衛星の開発、運営や護衛兵テリトリーガードの養成を行いつつ、そこでは宇宙工学、物理学、天文学等の宇宙に関するあらゆる技術を研究していた。そこは今、戦場と化し、周辺は日の事なっていた。その中で西園寺、石動、マルコの三人はヘリから見ているとマヒナらしき影とベガと同じような身なりの宇宙人が二人とテリトリーガードが攻防戦を繰り出していた。そして少し離れた所にポツンと倒れている人影を見つけて、それめがけて降りた。するとその人物がベガ本人だと分かった。
「おまえ、大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳がない。 しかし、ようやく来たみたいだな。」

ベガを囲んで三人が話しこんでいると後ろから何者かが忍び寄ってきている間隔が襲った。振り返ると先程の研究所を守っていた宇宙人がこちらへ来ていた。どうやらマヒナは撤退して臨戦態勢は解かれているようだ。ベガと同種らしき二人の宇宙人は二人で何やら話しこんでいた。

「アルタイル、あれが例の兵器か?」
「多分そうだろう。 ン? ベガ、まだ死んでいなかったのか。」

「当たり前だ。 この馬鹿は自分が何者か理解していない。 もしかしたら世界を救うかもしれん。」

きっと馬鹿とは西園寺自身の事を指しているのだろうとここにいた誰もが理解した。だが、件の西園寺は冷静だった。冷静だったからこそ彼らに質問を投げかけた。

「お前たちは俺の事知ってんのか? 俺が変身する本当の理由を、」

「ええ、知っているわ。」

横から入ってきたのは負傷しているマヒナだった。石動はにらみながら彼女を追っていたが西園寺が彼の衝動を少し抑えようと片手を彼の刀にやった。西園寺は続けてくれと相槌をした。

「いい? あなたは私たち、グランドオーダーのための最終兵器「エルダー」人間を絶滅させるための生物兵器。 あなたは無意識かもしれないけどあの隕石騒ぎから始まった地球での怪人騒動、あれはあなた自身が隕石型ポッドにのって人間を効率的に抹殺するための因子のようなものを散布した。すべては私たちが地球という惑星を還元し我々の住みやすいようにする計画だった。」

「なぜ、過去形なんだ。」

「あなたが、人間になってしまった。 元々は私たちと同じだけど、衝突の影響か、初期不良か、人間と触れ合うことで予想外にも人間として成長してしまった。だから、私たちが表に立つ理由。でも、もうあなたに頼るのも面倒だし、怪人(ユーゲント)化した人間を飼うって言うのも悪くないかな? ってなったの。」

「そんなことさせない! <エルダー>!!」

エルダーマンは石動、マルコの二人と共にマヒナへと向かった。しかし、二人の宇宙人が邪魔をしてきた。

「我々は元はこの地球(ほし)にいてはいけない存在「エルダー」を抹殺するために来た。」
「だから、ここは停戦協定だ。我々ギャラクシーエージェントのアルタイルとデネブが、」
『お前と、共に闘ってやる。』

厄介にもギャラクシーエージェントとマヒナが手を組んで西園寺たちを襲ってきた。しかしそこで怯む西園寺ではない。

「俺の事については何となくわかった! 二人とも、それでも俺と戦ってくれるか?」
「オレはマヒナを殺せればいい。」
「俺はあいつらじゃなくて俺を助けてくれたおまえの心を信じる!」

エルダーマン=西園寺豪とマルコ・ロッソは一つ目の宇宙人二人を、石動はマヒナを担当してそれぞれ戦闘態勢へと向かって行った。西園寺、マルコ組はマヒナとも距離を放すため、距離を取りながら拳を交える。 石動は感情的にマヒナをいたぶり続ける。しかし、それは負傷したマヒナには効いていないようだった。西園寺の方はというと宇宙人に対して意外にも優勢だった。どうもマルコの存在は彼らにとってはイレギュラーであったようだった。そして、西園寺はマルコと共に編みだした新しい必殺技を繰り出すのであった。

「大人しく、しろ! この殺戮兵器が!!」

「お前たちが危惧しているような兵器には俺はならない! 絶対に!」
「ゴウ、例のあれいくぞ。」

そういうと彼らは天高く舞い上がり、地上にいる二人の宇宙人目がけて大振りの蹴りを息を合わせて蹴り落とす!
<紅炎蹴り(プロミネンス・シュート)!!>
見事、命中し二人は石動の補助へと向かった。

「お前はオレの家族を! それだけは許すわけにはいかない。」
「あなたが因子を持つ子か見たかった。でもあなたでは無かった。それだけのことよ。」
「人を殺しておいて! <銀雷斬(ライトニング・アウト)!!>」

銀の雷は哀しみのような怒りのような轟音を響かせていた。

「あなた、邪魔なのよ。そろそろ消えて。」

マヒナは両手をかざすとエネルギーが球体に凝縮されていく。シルバーボルト=石動新は逃げずにまた一歩も引かず、ただ剣を構える。目の前の敵を討たんとばかりに雷鳴が鳴り止まない。

マヒナは一瞬のすきを見て石動の後ろをとった。急所があたる眼前に来ていた。それを阻止するため西園寺はエルダーマンの力を最大限使い、人間離れした速さで彼の所へ、そして突き飛ばした。

一瞬の閃光は西園寺にすべてダメージを受けてしまった。マヒナは少ししくじったという顔をしたが手っ取り早いと思い、力を込めた。 彼の体はどこにも無かった。

「・・・ こっぱみじんね。 もうここで、あなたたち全員殺ってしまおうかしら。」
「それは、私が命がけで実力を行使してでも止めてやる。」

重症で倒れていたベガがようやく起き出した。彼もまたギャラクシーエージェントだと悟り面倒だと思ったのか、舌打ちして帰っていった。

「おい、ベガ! 西園寺はどうにかならんのか!」
「どうにもならんよ跡かたもないんじゃ。それより、あいつが死んでもグランド・オーダーの作戦は終わっていない。君たち、どうする。」
「死んだあいつの敵と果たせなかった使命のためにやらないと、アラタ、やるよな?」
「やるさ。今回は僕にも非がある。あいつを死なせてしまった。僕の衝動的な感情のせいで。 だからやってやる!」
「ならば、最終目的地はアメリカ。 奴らはそう言っていた。きっと、人口の多い場所で作戦を始めようと言う魂胆だ。」

西園寺の死を目撃した石動、マルコ、ベガは再度一丸となってグランドオーダーと戦い、世界を救う事を宣言した。彼らはアメリカで無事に世界を救えるのだろうか。



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