ELDERMAN(エルダーマン)

小鳥 遊(ことり ゆう)

エピソード1:始まりの男

 西園寺豪は今日も戦い続ける。休むこともない。そして絶対にこの世界で絶望する弱者である人間を見捨てることもしない。ユーゲントの暴徒化は拡大する一方で、手に負えなくなっていることもあるが、それでもなお、彼は戦い続けるのであった。
 「……! くそっ! こいつ殴っても殴っても再生しやがる・・・!どうなってんだ…あの身体はよ~!」
 その怪物は全身が氷のような青い塊からできているようであった。 殴っても蹴っても四肢は特殊な蒸気が出たとたん元通りになってしまう。おそらく本体であろう胸部や頭部は触れようとするだけでも自分の身体が凍ってしまう。そのせいで自慢の右腕がやられてしまっていた。
「ククク・・・終わりか?」
勝利を確信したのか、その怪人は豪に煽りをかけていた。だからといってこの男が諦めるわけはない。ここで、あることに彼は気づくのであった!
(…? あの煙何なんだ?あれで体が元に戻るんだろ? だとしたら…そうか!)
「何をぶつぶつ言っている! お前はもう詰んだんだよ!」
「へっ、分かったんだよ。お前の再生能力のカラクリ。ズバリ、その蒸気だろ。それは水蒸気なんだ。つまりお前の能力は水!いや、お前自身も水で構成されてて、水蒸気を変化させ自分の手足にしていたんだ!」
そのユーゲントはそれでもなお、物怖じせず、堂々としていて
「今更それが分かったとて戦局は変わらんよ!大人しく蒸発しろ!」
その時であった!一瞬にしてユーゲントの再生のためのパイプはぷっつり切れていたのである。その隙、約3秒の出来事なのだ!それも拳は凍らずに、いや凍るよりも先に彼の必殺の技は彼の冷気よりも強い熱を帯びているようだった。
「どうやら、ほんとに蒸発すんのはお前の方のようだぜ。」
 赤閃拳フレアドライブ
瞬間の出来事であるが、周りは赤く染まり敵は跡形もなく蒸発していった。血しぶきもあまり飛ぶこともなかった。あたりは蒸気で満たされ、残されたのは彼の薄暗く黄色に光る眼差しだけだった。
「よし…これで今日のお仕事…ハァ…終了!」
先の戦いで多少の疲労が出たのかため息をつきながら一人、つぶやいていた。
 だが、ヒーローには休むということは許されない。新たなる敵がしとしとと彼の目の前にやってきていたのであった。それはもやがかっていてよく見えなかったが大きく、ゆうに5メートルはありそうだった。
「おいおい、勘弁してくれ。お前もあいつの仲間か?悪いが後にしてくれないかな?」
それに対し、そのはっきり見えた大きな図体でありながら天使のような輪が烏帽子をかぶったような顔の後ろについた不思議な者は
「同じくして、破壊するものよ。何故この惑星ほしの生命体の見方をする?」
「は? 何言ってんのあんた。俺は強いて言うなら、護るもので破壊はしない主義なんだがな。そんでもってあんたの質問に答えるなら、俺が力を持ち、ヒーローであるから人の見方をするんだ。それ以上でもそれ以下でもない!」
そう言っている彼の目の前には大きな拳が飛ぼうとしていた。おそらく瞬時で本来より大きく見えていたが瞬時で回避した。エルダーマンは即座に相手の脇腹辺りに蹴りをお見舞いしようとしたが、かわされてしまいしかも相手に後ろを取られて、足蹴にされてしまった。
「いずれ、貴様とはまた、目覚めた時、会うことになるだろう。その時は我々に歯向かうことは無いだろうから。それが運命なのだから。」
意味深な言葉を残し去ったその男、いや、人間だったのかどうかもわからないあれはなんだったのだろうか。そんなことよりも渦中の豪は悔しさを顔ににじませながら、
「あー!もう!むかつく!次会ったら絶対倒してやる! …でも何なんだ? 俺の運命って、わからん。けど、これだけは言える。仲間がいる。俺と同じような強くてああいうわけわからんやつと戦える多くの仲間が・・・。もっと大きなことに巻きこんでしまうかもしれないけど。」
 彼がユーゲント二体と戦い疲労しきった体を休めるために秘密基地に戻った西園寺豪だったが彼を休ませる気配はなく、中心にある大きなモニターには熱源反応がびっしりと京都を赤く染めていた。その情報から見るに相当の数が乱戦しているようだった。
「ああ、これもお役目というか、性分というか。あ、そうかそこに俺に協力してくれる奴がいるかもしれん。行ってみよう。」
ガレージに向かい愛用のバイクにまたがって、彼は夜の公道を駆け抜けるのであった。

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