転生王子は何をする?
第124話 既に問題が解決してますね(誰がやったんでしょうねー)
「と、到着…。」
フォルツ王国から逃げ出してから30分後、漸く学園都市エコールに帰りついたトリスは、精神をゴリゴリと削られた人のような声を出しながら、アルヴィトから這い下りる。
「あぁ…。どう誤魔化そうかな…。」
「…。」
「すみませんすみません…(ブツブツ)。」
彼らの姿は、死屍累々という言葉が、これ程似合う状態があるかというほど、消耗しきっている様子であった。
誰がどのセリフを言っているのかは、ここに記さなくても分かるであろう。
特にトートは、目が虚ろになっており、末期のうつ病患者を連想させる表情をしている。
「まぁこうなった以上、ドンと構えて行こうぜ!何とかなるって!」
しかしいきなりトリスが、空元気にしか見えない笑顔で、前向きすぎる事を言い出す。
「…どっからその自信が湧いてるんだろう?」
「能天気過ぎますわ…。」
「…(泣きそうな目)。」
勿論3人は、トリスの演技に懐疑的な目、いや、トートは絶望感丸出しで、『トリスさんが、こんな私のために気を使ってる…』と更に自分を責めているようだ。
「はぁ〜。まさか俺が、何の手立てもなしに、ただ逃げ帰って来ただけだとも?」
「「「…はい?」」」
飛行船内や、到着直後の様子とは違い、どこか余裕すら感じるトリスの言葉に、3人は揃って素っ頓狂な声を出してしまう。
「…あ、もしもし?手筈はどう?…りょーかい。いや〜、助かったよ。…え?報酬?フォルツ王国内での、優位なコネクションだけじゃだめ?…はぁ、分かったよ。今度友達連れくから、その時渡すわ。…うっせ!ぼっちちゃうわ!切るぞ!後は頼んだ!…ふぅ〜。…って、え?どうしました?」
「「「…。」」」
いきなりの板きれを取り出したかと思ったら、それを耳に当てて独り言を言い出したトリスに、一同は『状況が切迫し過ぎて、ついに気が狂ったか!?』と驚愕し、言葉を失っているようだった。
その様子に、トリスは自分の行動を思い起こし、気になっているだろう点に気付いて慌てて説明をする。
「あ?これ?これはですね、遠くの人と会話が出来る魔道具でして、名称を携帯会話機と言います。」
トリスは最初は電話機と名付けようと思ったが、『あれ?そもそも電話ってこの世界で通じるか?若しかして電話って電信辺りから引っ張ってきた言葉とか?』などと考え、最終的にこの名称になったのだ。
現状トリスが持っているものを含め、世界に5つしか無い貴重品である。
そのためそんな画期的なものの存在に、3人の口は塞がらくなっていた。
「えと、それはつまり、遠くに居る人と、瞬時に情報が供給出来ると?」
「お、おう。大体500キロ圏内ならどうにか。それ以上は設備とか整えないと、無理とかいう話だったような?」
ホルスの問に、トリスは自信なさそうに答える。『自分は制作に関わってませんよ』アピールなのだが、ホルスにはそんな事はどうでも良かったらしい。
「それは…。」
「そ、それは?」
「それは、ヤバすぎるでしょ!?何それ!?戦争に革命が起きるよ!?敵軍の情報を、瞬時に、時差なく、口頭で伝えられるんだよ!?魔法を使うこと無く!!誰でも!!」
この魔道具が世に出回ればホルスの叫びの通り、云わば情報革命が起きるのは必然である。
戦時中の情報収集は従来ならば、中級無属性魔法の対話(※初期の第28話参照)を行使できる者を潜り込ませたり、地道に馬や足で移動して伝えるという方法であったのだが、敵地で魔法を使えばバレたり、そもそも無属性魔法の使い手が少ないという欠点や、また移動の最中に敵に見つかったりなど、イマイチ確実性がかけていたのだ。
一方の携帯会話機では、魔道具であるため、無駄に外に漏れ出る分の魔力は作成者の腕でどうにでもなり、また潜り込むだけに集中出来るため、その汎用性は高いだろう。
「え!?そ、そんな事は分かってるって!だから俺はなるべく使わないようにしてたんだろ!?」
めちゃくちゃホルスに問い詰められたトリスは、何とか誤解(?)を解こうと、大声で対抗する。
「そ、それに、そんな事よりも、今は俺がさっき会話していた内容の方が、重要だとは思わないか!?」
「そ、それは…。」
『確かに気になる…』と言いたそうなホルスだが、携帯会話機もヤバい代物であるため、問い詰めたいという感情と、今はそれどころではないという感情が渦巻いているのだろう。
「確かに、今の会話は気になりますわね。フォルツ王国内での、優位なコネクション、でしたかしら?」
「えぇ、そうです。それは元々フォルツ王国暗部のダンクレスが持っていたものです。」
中々いいタイミングでのフロレンティーナの援護射撃に、これ幸いと乗っかるトリス。
「ダンクレス、ですか。聞いたことがありますわ。何処で誰が、というのは忘れましたが。」
「そうですか。あ、で、そのダンクレスなんですが。」
深刻そうな顔で言うトリス。
「ダンクレスがどうかしましたか?…まさか、我々を消すために、動き始めたのですか?」
「!その暗部が、もう動き始めたのか!」
「ヒィッ!わ、私のせいだ…。彼らに情報がいくような行動をとらなければ…。」
そんなトリスの様子に、ホルスとフロレンティーナは大慌てでダンクレスの動向について聞いてくる。
若干1名、先程から完全に病んでいる人物については、今後ゆっくり心の傷を癒してもらうことにしよう。
「えぇい!ちゃうわ!ちった〜、落ち着けや!ダンクレスは、とある冒険者がもう潰した後!」
「「「…。」」」
「んで、その冒険者の依頼を受けたとある商会が、私兵で占拠して、今は辛うじて末端まで掌握したところだとさ!」
「「「…え?」」」
衝撃的な結末に、ホルス、フロレンティーナ、トートは遂に思考が追い付かなくなるのだった。
フォルツ王国から逃げ出してから30分後、漸く学園都市エコールに帰りついたトリスは、精神をゴリゴリと削られた人のような声を出しながら、アルヴィトから這い下りる。
「あぁ…。どう誤魔化そうかな…。」
「…。」
「すみませんすみません…(ブツブツ)。」
彼らの姿は、死屍累々という言葉が、これ程似合う状態があるかというほど、消耗しきっている様子であった。
誰がどのセリフを言っているのかは、ここに記さなくても分かるであろう。
特にトートは、目が虚ろになっており、末期のうつ病患者を連想させる表情をしている。
「まぁこうなった以上、ドンと構えて行こうぜ!何とかなるって!」
しかしいきなりトリスが、空元気にしか見えない笑顔で、前向きすぎる事を言い出す。
「…どっからその自信が湧いてるんだろう?」
「能天気過ぎますわ…。」
「…(泣きそうな目)。」
勿論3人は、トリスの演技に懐疑的な目、いや、トートは絶望感丸出しで、『トリスさんが、こんな私のために気を使ってる…』と更に自分を責めているようだ。
「はぁ〜。まさか俺が、何の手立てもなしに、ただ逃げ帰って来ただけだとも?」
「「「…はい?」」」
飛行船内や、到着直後の様子とは違い、どこか余裕すら感じるトリスの言葉に、3人は揃って素っ頓狂な声を出してしまう。
「…あ、もしもし?手筈はどう?…りょーかい。いや〜、助かったよ。…え?報酬?フォルツ王国内での、優位なコネクションだけじゃだめ?…はぁ、分かったよ。今度友達連れくから、その時渡すわ。…うっせ!ぼっちちゃうわ!切るぞ!後は頼んだ!…ふぅ〜。…って、え?どうしました?」
「「「…。」」」
いきなりの板きれを取り出したかと思ったら、それを耳に当てて独り言を言い出したトリスに、一同は『状況が切迫し過ぎて、ついに気が狂ったか!?』と驚愕し、言葉を失っているようだった。
その様子に、トリスは自分の行動を思い起こし、気になっているだろう点に気付いて慌てて説明をする。
「あ?これ?これはですね、遠くの人と会話が出来る魔道具でして、名称を携帯会話機と言います。」
トリスは最初は電話機と名付けようと思ったが、『あれ?そもそも電話ってこの世界で通じるか?若しかして電話って電信辺りから引っ張ってきた言葉とか?』などと考え、最終的にこの名称になったのだ。
現状トリスが持っているものを含め、世界に5つしか無い貴重品である。
そのためそんな画期的なものの存在に、3人の口は塞がらくなっていた。
「えと、それはつまり、遠くに居る人と、瞬時に情報が供給出来ると?」
「お、おう。大体500キロ圏内ならどうにか。それ以上は設備とか整えないと、無理とかいう話だったような?」
ホルスの問に、トリスは自信なさそうに答える。『自分は制作に関わってませんよ』アピールなのだが、ホルスにはそんな事はどうでも良かったらしい。
「それは…。」
「そ、それは?」
「それは、ヤバすぎるでしょ!?何それ!?戦争に革命が起きるよ!?敵軍の情報を、瞬時に、時差なく、口頭で伝えられるんだよ!?魔法を使うこと無く!!誰でも!!」
この魔道具が世に出回ればホルスの叫びの通り、云わば情報革命が起きるのは必然である。
戦時中の情報収集は従来ならば、中級無属性魔法の対話(※初期の第28話参照)を行使できる者を潜り込ませたり、地道に馬や足で移動して伝えるという方法であったのだが、敵地で魔法を使えばバレたり、そもそも無属性魔法の使い手が少ないという欠点や、また移動の最中に敵に見つかったりなど、イマイチ確実性がかけていたのだ。
一方の携帯会話機では、魔道具であるため、無駄に外に漏れ出る分の魔力は作成者の腕でどうにでもなり、また潜り込むだけに集中出来るため、その汎用性は高いだろう。
「え!?そ、そんな事は分かってるって!だから俺はなるべく使わないようにしてたんだろ!?」
めちゃくちゃホルスに問い詰められたトリスは、何とか誤解(?)を解こうと、大声で対抗する。
「そ、それに、そんな事よりも、今は俺がさっき会話していた内容の方が、重要だとは思わないか!?」
「そ、それは…。」
『確かに気になる…』と言いたそうなホルスだが、携帯会話機もヤバい代物であるため、問い詰めたいという感情と、今はそれどころではないという感情が渦巻いているのだろう。
「確かに、今の会話は気になりますわね。フォルツ王国内での、優位なコネクション、でしたかしら?」
「えぇ、そうです。それは元々フォルツ王国暗部のダンクレスが持っていたものです。」
中々いいタイミングでのフロレンティーナの援護射撃に、これ幸いと乗っかるトリス。
「ダンクレス、ですか。聞いたことがありますわ。何処で誰が、というのは忘れましたが。」
「そうですか。あ、で、そのダンクレスなんですが。」
深刻そうな顔で言うトリス。
「ダンクレスがどうかしましたか?…まさか、我々を消すために、動き始めたのですか?」
「!その暗部が、もう動き始めたのか!」
「ヒィッ!わ、私のせいだ…。彼らに情報がいくような行動をとらなければ…。」
そんなトリスの様子に、ホルスとフロレンティーナは大慌てでダンクレスの動向について聞いてくる。
若干1名、先程から完全に病んでいる人物については、今後ゆっくり心の傷を癒してもらうことにしよう。
「えぇい!ちゃうわ!ちった〜、落ち着けや!ダンクレスは、とある冒険者がもう潰した後!」
「「「…。」」」
「んで、その冒険者の依頼を受けたとある商会が、私兵で占拠して、今は辛うじて末端まで掌握したところだとさ!」
「「「…え?」」」
衝撃的な結末に、ホルス、フロレンティーナ、トートは遂に思考が追い付かなくなるのだった。
コメント
血迷ったトモ
当作品は、シリアス展開など許しませんからね(笑)
夜兎
いい展開!