転生王子は何をする?

血迷ったトモ

第118話 スニーキングといえば、やはりあの伝説の傭兵が思い浮かびますね

「H〇、〇Q!応答せよ!ただ今何者かに襲撃を受けている!」

トートの居る部屋まで、最短距離で潜入中にトリスがいきなり叫び出す。

「え?急に何?」

「いや、言ってみただけ。さ、そんな事より先急ごうぜ。」

トリスとしては、前世でやっていた某伝説の傭兵が、単身AIやら数百人の敵兵をボコボコにしに行くゲームを思い出し、懐かしくなったのでつい口に出していたのだ。

「えぇ〜、そりゃないよ。」

曖昧な返事が返ってきたため、ホルスは『気になる〜』と先を急ぐトリスを追う。
仮にも敵陣の真っ只中とは思えないやり取りである。

「お、そろそろじゃね?」

トリスはそう言い、突き当りに見えるドアを指さして立ち止まる。
トリス達は城壁を乗り越え、窓から侵入して、情報にあったトートの部屋がある5階建ての城の4階の、奥まった位置まで来ていた。

「うん、そうだね。この紙には、近くの部屋は全て空き部屋と書かれてるね。ちょっと中の様子が分からないか、隣の部屋に入って様子を窺ってみようよ。」

「な!?真昼間から女性の部屋の覗き見ですって!?ホルス君!私は悲しいわ!お母さん、貴方をそんな子に育てた覚えはありません!」

「えぇ!?ティーナを攫ってる時点で、もうアウトだよね!?というか、情報が大事って言ってたのは、トリスだよね?」

唐突のトリスの裏切りに、ホルスは全力でツッコミを入れる。

「んん?ん〜、まぁそれもそうか〜。じゃ、16歳の女の子の私生活を覗き見るとしますか!」

「ちょ!言い方!」

巫山戯つつも、トリス達はトートの居るはずである部屋の隣の部屋に入って、壁に耳をあて中の様子を窺う。

「―あぁ、誰か私に力を。現状を変えるだけの力を与えて下さらないでしょうか。ふふっ。多くの人を操ってきた私には、到底叶わない願いでしょうけどね…。」

「「…。え?どゆこと?」」

中から聞こえてきた女性の声に、トリス達は唖然とする。そして壁から耳を離し、ヒソヒソと話し合いを始める。

「若しかして、更に黒幕が居るパターンじゃね?どうする?」

「何か魔法で行動を強制されてるなら、僕の光魔法で解除出来ると思うけど…。しかし、正しい情報が無いことにはどうしようも無いよな…。」

難しい顔をしてトリス達は考え込む。
やがて、トリスはやれやれと首を振りながら、アイテムボックスを装ったバッグを漁るフリをしつつ、収納インベントリーからとあるものを取り出す。

「はぁ、しゃあないな。ホルス、ちょっと壁に小さな穴を開けてくれないか?試したい事があるんだ。」

「う、うん。…よし。出来たよ。」

トリスが何やら漁っているのを横目に、ホルスは魔力制御の応用で、土属性の魔力を石壁に浸透させ、そのまま軽く覗き穴程度に小さく穴を開ける。
魔力制御とは、魔法をより効率的に使うため、魔法に使う魔力量の調節や、純粋に魔力のみを自由に動かす技術であるのだが、トリスやホルス並の上位者となると、魔力に属性を付与した状態で自由に操れるようになるのだ。水属性なら水を、風属性なら空気を一定程度操れるようになる。

「サンキュー。じゃ、やりますか。」

そう言い、トリスはバッグから眼鏡・・を取り出して装着する。

「え?メガネ?」

数年前から、トリスが市民の視力の底上げとして、カレンベルク商会(ry。
そのためホルスはその存在を知っていたのだが、何故この状況で取り出したのか察しがつかないため、首を傾げる。

「ん?あぁ、これは鑑定が付与されてるんだ。」

「え…。」

またまたぶっ飛んだ性能の魔道具マジックアイテムに、ホルスは開いた口が塞がらない状態になった。

「ま、本家の『鑑定眼』に比べれば、大した事は無い性能だけどな。具体的には、対象者の名前と性別、状態が分かる程度だ。」

だが、そんなホルスの様子に気付かないトリスは、壁に空いた穴から中の様子を覗き込む。

「お、居た居た。ベッドに座り込んで、廃人のような表情してるな〜。笑えば可愛いだろうに。さて、『鑑定』。」

部屋を暗くして、ベッドに座り込んでいる人物に視点を合わせてキーワードを口にした瞬間、トリスの脳裏にトートのステータスが浮かび上がってくる。


名前:トート・ローヴァイン
種族:人間
年齢:16
状態:強制ギアス・・・魔法行使者の意に反する行為をすると発動。効果は、ありとあらゆる苦痛を体験した後、腹部が裂けて死亡する。解除するには、光魔法レベル8以上の術者が、解呪ディスペルを行使する必要がある。


「…(チッ)。」

胸糞悪い結果に、トリスは思わず舌打ちを漏らしてしまう。

「トリス?」

そんなトリスの様子を見て、明らかに良い結果では無いことが分かったホルスは、眉をひそめながら声をかける。

「ん?あぁ、やはり誰かに強制ギアスをかけられてるみたいだな。しかし厄介だな。」

「え?何が?」

普通の強制ギアスならば、ホルスであれば余裕で解除出来るため、厄介という意味が分からないでいた。

「実はトートさんは、光属性魔法レベル8以上の術者が解呪ディスペルしないと解けない強制ギアスを受けてるんだ。」

深刻な表情で告げるトリス。光魔法レベル8というのは、聖人や聖女認定されるレベルの使い手であり、数百年に1人到達できるかどうかといった確率なのだ。
勿論トリスの元のステータスであれば、何ら問題なく解呪ディスペル出来るのだが、まさか今ホルスの目の前でそんな事が出来るわけもなく、頭を悩ませる。

「なんだ、その程度・・・・か〜。なら良かった。」

だが、トリスの重い声音に反して、ホルスは安心したような軽い口調で呟く。

「うん、そうなんだ。良かったよな〜、ほんとに…って今なんつった?その程度?まさか光属性魔法がレベル8以上なのか!?」

トリスは思わず素で驚愕してしまうのだった。

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コメント

  • 血迷ったトモ

    はい!ありがとうございます!今後暫くは安定して投稿出来そうです。御安心を(笑)!

    1
  • かオース⤴︎

    1コメゲット
    伝説の傭兵w
    今回も面白いです更新頑張って下さい

    2
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